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異世界技術派遣会社  作者: 神無
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スケルトン

ある意味、運命の出会い。


「スケルトンさーん。、、、あ、これだと『人間さん』みたいな意味になるのか。でも本人から名前聞いて無いしな、、、」


ついでに言うと性別も解らないのでお兄さん・お姉さんと言う魔法の言葉が使えないのだ。かと言って名乗られる前に名前を呼んだら鑑定スキル持ちだとバレる。


咄嗟にスキルを譲渡してしまったが、彼がこれからどうしたいのか何の目的で此処へ来たのかも知らないのだ。なるべく話をして人柄を見た方が良い。


そんな風に考えて結局スケルトンさんと呼んでいるとスケルトンは反応した。カタッと乾いた音がしてちょっとビクついた響はそろそろとスケルトンの目―――と言うか眼孔の辺りを見た。


すると赤い光が見えたのでどうやらそれが目なのだろう。


「、、、此処は、、、」


「城壁都市です」


「ヴィリー、、、?しかし、通行税が、、、はっ!貴女は一体!?」


「えっと、私はエコーと言います。私と貴方が最後尾だったんですけど、後少しの所で貴方が倒れたので抱えて一緒に入りました。通行の列に並んでたみたいですし、日も落ちそうだったので取り敢えず私が通行税を払って、この宿に」


「、、、女神か」


「はい?」


聞き返すとスケルトンは慌てた様子で骨をカタカタ鳴らした。


(うん、ぶっちゃけ怖いね!!でも愛嬌があるとも、、、言える、、、気がする、、、?)


響はホラー耐性皆無な上に異世界人だからスケルトンに対して恐怖心があるのだろう、と自分を納得させたが、この世界でも“異形種”は恐怖の対象である。子供や若い女性はまず近付かない。


と言っても、スケルトンに限って言えば其処にあるのは恐怖だけではないが。


「その、自分はロヴェルと言います。貴女の御蔭で助かりました。、、、お恥ずかしながら、通行税を払えそうに無かったので、、、ですが、この街にアテがあるので、キチンとお返しをします」


「そうなんですか?」


「えぇ。この街では奴隷商が秘密裏に行われているそうなので、その事を衛兵に伝えて報奨金を得れば、、、」


「、、、奴隷商、ですか、、、」


思わず眉を顰める。一応、秘密裏に行われている上に報告すれば報奨金が出ると言う事は公的な物ではない―――歓迎されている訳ではないのだと解るが、それでも生理的に受け付けられない。


苦い顔の響にロヴェルは苦笑しつつ言う。


「そうですよね、普通は信用出来ませんよね、、、ですが、この街の衛兵の中には仲間の友人が居るそうなので手紙を見せればきっと動いてくれます」


「あ、信用してないとかじゃないんです!ただ、、、」


「もしや、奴隷反対派ですか?」


「はい。勿論、他に方法が無くて本人が納得してるなら良いんです。奴隷は制約こそあれ日々の生活は保障される訳ですし」


「、、、はい?奴隷の生活が、保障、、、?」


「、、、もしかして、この世界、、、じゃない、此処だと違うんですか?」


「えーと、生活が保障される、と言うのは聞いた事が無いですね、、、」


驚きつつ響は元の世界の奴隷の扱いを話した。あくまでも異国の話としてだし、奴隷制度があったのは過去の事なので不確かな部分も多いが。


個人の財産は持てないし、結婚は出来ない。対外的には奴隷は主人の財産と言う形になり、主人は奴隷に衣食住を保証する。


つまり、状態の悪い奴隷はイコールで主人の価値を落とすのだ。


勿論、犯罪奴隷や捕虜は別枠で、其方は財産と言うよりも使い捨ての扱いになる。


そんな説明をした所、ロヴェルは暫く思案して唐突に言った。


「この国での奴隷の認識は貴方の言う犯罪奴隷や捕虜のような物ですね、、、人権を奪われただけの平民や親に売られた子が大多数ですが、、、」


「そうなんだ、、、つまり勝手に奴隷扱いしてる訳だね。そりゃあ褒賞も出るか」


犯罪奴隷も居るには居るらしいが、其方は国が管理するので商売道具にはならないのだと言う。しかし其処でふと疑問が口から零れた。


「でも、それなら逃げ出しちゃえば良くない?衛兵の所まで行けなくても、住民が見つけてくれれば、、、」


「奴隷商に捕まる者の多くはスキル無しです。それに我らスケルトンのようにステータスの低い種族が大多数ですから脱走は成功率が低過ぎますし、失敗すれば、、、」


皆まで言うな、である。響は暫く思案して口を開いた。


「それって、逆に言えば別に魔法で動きを縛ってるとかじゃないんだよね?誓約とかそう言うの」


「え?えぇ、誓約は神官でなければ使えませんし高額ですから」


「むむむ、、、そうなんだ、、、じゃあさ、もう一つ質問!解放された元奴隷はどうなるの?スキル無しなんだよね?」


「一時的に保護を受けられます。その後は街で仕事が見付かれば残れますが、見付からなかった場合も三ヶ月で保護期間は終了します」


「、、、根本的解決になってなくない?」


「、、、そうかも、しれませんね、、、」


ロヴェルは辛そうだ。スキル無しだから逃げられなくて、スキル無しだから解放されても路頭に迷う。


考えれば考える程におかしい、と響は眉間に皺を寄せる。


即戦力が欲しいのは解る。解るが、努力は認めないと言うのならそれは傲慢だ。


ヤル気もない輩を雇えとは言わないが、其処まで追い詰められている人ならばヤル気は普通にスキルを持っている人より高いだろうに雇ってすら貰えないらしい。

理不尽な世界です。

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