魔石創造と魔力創造
響さん、チートの鬼になる。
門番のオススメしてくれた宿は色んな人種が居たが、あまり高い宿ではないらしく一部はスケルトン程ではない物のあまり質が良いとは言えない物を着ていた。
けれど気のいい人が多かったので響も安心して宿を取る事にする。
因みに門番はスキル無しであろうスケルトンとその連れでも問題なく泊まれる代金でありつつもサービスが良い宿をオススメしていた。響の格好が一見して高級そうには見えないシンプルなワンピースだったのも影響したようである。
一応言うと、神特製の服であり響の望んだ形態に変化してくれる上に汚れる事も解れる事も無く、防護性も高いと言うチート仕様なのだが、そんな物は一介の門番に見抜けるはずもない。
宿の部屋に入ると響は先ず真っ先にスケルトンをベッドに寝かせた。ステータスは相変わらず衰弱表示である。じりじりとHPが減っていく状態のようだ。
食事は別料金になるらしいが直ぐに用意してくれると言ってくれたので取り敢えずスケルトンをベッドに寝かせて、彼が目覚めるまでは検証の時間だ。
先程譲渡したスキルの中から幾つか作り直しておく。一度作ったからか二度目は其処まで集中せずとも作れた。
ついでに何か必要そうな物は無いだろうかと暫し考えたが、特に必要そうなスキルは思い浮かばなかったので今あるスキルの検証をしようと響は無限収納から道中拾ってきた小石を幾つか取り出した。
「よし、銅貨分になれ、、、“魔石創造”!」
良くある灰色だった小石は濁った黄色に変わった。純度の悪いパワーストーンのようである。
「さて、測定器が無いけど、、、“鑑定”」
【魔石(人工)】
銅貨分程度の魔力の籠った魔石。
「これもう仕事しなくても良さそう、、、」
とは言え理由もなくゴロゴロするだけの日々なんて早々に色んな物を失いそうなので却下。
困った時に魔石を使えるようにしておくのは悪くないだろうが。取り敢えず納得しつつ検証を続ける。
次は小石を魔石に換えるのではなく魔石そのものを作り出すつもりで魔石創造スキルを使ってみる。
一応形にはなったが、同じ銅貨分の魔力を込めた筈なのに何故か魔石は小さくなってしまった。
「なんでだろ?魔力の量の問題?」
もう一度作成してみる。今度は銀貨分をイメージしてみた。すると今度は大きくなったので予想は当たっているらしい。
しかし同じ銀貨分の魔力で小石を魔石に換えても大きさは変わらなかった。
鑑定すると小石を媒体にしていない方は人工の文字が消えて居たので自然に創られる物の場合は大きさ=魔力量なのだろう。魔石の使い道をヘルプで確認すると魔導具なる物に使われると記されていた。
この宿の部屋は蝋燭で灯りを取っているので無いようだが、灯りになる魔導具なる物もあるらしい。但し、魔石の大きさ=魔導具の大きさでもあるらしく小型で長持ちの物は出来ないし、大きな魔導具では魔石の魔力が足りずに稼働しない。
(、、、あ、じゃあこの小石製法だったら小型で長持ちも可能?便利だなぁ)
とは言えこの世界では一般的ではないようだし、魔石の値崩れとかが起きても責任が取れないので大っぴらにしないように気を付けようと響は人工魔石をそっと無限収納に仕舞った。
小石を魔石にした方が消費魔力は少ないのだが、正直全体量からみれば誤差程度なので気にしない事にする。
次に試したいのは“魔力創造”である。元々は万物創造、つまりイメージを具現化出来る様な物を作ろうとしたのだが、魔力に依存するらしく魔力創造と言うスキル名になった。
(まぁ何でもかんでも出せても怖いか、、、)
取り敢えずは旅の必需品を用意したい。特に候補がない今はこの城壁都市に定住するつもりで予定を組んでいるが、比較対象が無いので暫定的にそうなっているだけなのだ。自分で見てみて変更する可能性はある。
「テント、テント、、、“魔力創造”!」
イメージしたのはアウトドアの必需品、テントだ。両親と叔母夫婦が健在だった頃に従妹や弟とキャンプに行った事があったのだが、その時の物をイメージしている。
テントは一家族が余裕で入れる大きさで組み上がった状態で創造された為、部屋の半分以上が埋まった。と言うか響が座っていた位置が悪かったので頭の上にテントが乗ってしまっている。地味に重い。
スケルトンが寝て居るので静かに、しかし早急にテントの下から出る。
確認してみるが狭いので最低限だ。直ぐに無限収納に仕舞う。
本来なら組み立てる前の物を出した方が良かったのだろうが、響は母と叔母と夕食の準備をしていたので出来上がった状態の方をイメージしてしまった。
出発前に見た組み立て前のテントを思い出しつつもう一度作ってみる。弟曰く『ワンタッチで出来上がるお手軽仕様』のテントなので大きさはそれなりだが一人旅で一から組み立ては辛い上に無限収納のおかげで荷物にならないので問題ないだろう。
「えーと、、、確か此処を押すと畳めるようになって、、、何処押したら 組み上がるのかな?」
畳み方は覚えて居たのだが、組み上げる方法が解らない。暫くテントを眺めつつ彼方此方押してみて、どうにか組み上げ方が解った。同時に狭い室内でテントが広がってしまって慌てて無限収納に仕舞いこむ事になったが、まぁ仕方ないだろう。
消費魔力は他のスキルよりも高めだ。魔石創造よりも高いので今後は出来るだけ現地調達にした方が良いかもしれない。
とは言え魔力に余裕はあるので、その他に必要そうな物を用意していると食品や調味料等も問題なく創り出せる事を発見した。但し、調味料は一律してガラス瓶に入って出て来たので別途ラベルを用意する事になった。
(塩、砂糖、醤油、味噌、味醂、酢、胡椒、、、これだけあれば大丈夫かな?)
一応味見したがちゃんと記憶通りの物だった。、、、味醂と酢は単体で味見するのが難しいと判断して実際に使ってみてからの判断になるが。
因みに生き物は作れなかった。響はさらりと試したが、もしもこの場に彼女の家族が居たら盛大に叱られただろう。
ただ、自我の無い使い魔っぽい物は作れたので世界的な制限があるのか、それとも別スキルなのか。、、、そもそも生肉が出て来る時点でそれっぽい物である可能性が多分にあるので深く考えたら負けだと響は作った品々を無限収納に押し込む。
検証も兼ねて居たので色々と作ってみたが、正直二、三日の旅なら果物などで問題ないだろう。
地図はマニュアルの御蔭でマップがあるし、と半透明のマップを指先で操作していると宿の女将が響用の食事とスケルトン用の麦粥を届けてくれた。礼を言ってスケルトンの寝ているベッドの横に椅子を置いて声を掛けた。
スケルトンさんは仲間にな、、、?