システム進化(強制)
更新再開します。
昼過ぎになってロヴェルが戻って来ると従業員の殆どが作業に参加する事となった。ポーションは無事に効き、精神的に傷を負って居た人に関しても響が本気だと言う事が伝わったのだとロヴェルが言って居た。
そんなこんなで初日は説明や確認作業が多かったが、明日からは本格的に着工するとの事である。
そんな訳で午後の仕事が終わってロヴェルが従業員達の就労状況について帳簿を付けてくれている間に響は木材を用意する事にした。木材置き場だけは初日に整えてくれていたのだ。薄暗い中での作業を覚悟していた響だったが、庭に出ようとした響に女将が声を掛けた。
「エコーちゃん?庭に出るの?」
「うん、木材置いとこうと思って」
女将にはある程度の事情は伝えてあるがスキル云々は伝えて居ない。なので“響の空間収納に木材が入っている”と言う感じの認識になっている。
空間収納を使えるスキルはレアらしく、高給取りでもあるので響が大金を持っている理由としても納得されている。
だからだろうか、女将は呆れた様子で「こんな薄暗くなってからやらなくても良いのにねぇ」と言いつつ暫し待つように言う。素直に待っていると何やら小型のランタンを差し出された。
「はい、これ」
「何ですか、これ」
「魔導具だよ。小型だし、下級も下級の魔力回路しか入ってないからそう長くは持たないけどね」
魔力回路?と響は首を傾げたが、即座に鑑定して理解した。
【魔導具・ランタン(劣化)】
極々弱い光魔法が付与されたランタン。回路の劣化が進んでいる。
「短いから宿で使えない感じですか?」
「そうねぇ、雨の日に馬の様子を見に行く程度しか持たないから仕方ないわ」
女将は言いながら魔導具を操作して「此処に魔石を乗せるんだよ」と小さな引き出しを開けて見せてくれた。大分小さいので恐らく小銅貨用なのだろう。
恐らく小石媒体の魔石創造なら長持ちさせられるだろうが、そもそも長持ちする回路を入れた方が良い。
響は“夜でも明るい部屋”を実現可能かもしれないと言う可能性に胸が膨らむ。
「女将さん、ありがとう!!」
そんなに喜ばれるとは、と不思議そうな女将に礼を言って響は魔石を一つ入れると改めて庭に出た。
設計図は既に無限収納の中なので個数をイメージするだけで良い。細かい部分まで中訳を入れてくれた親方に感謝である。
ドスンッ!!と重たい音が繰り返し響く。大分近所迷惑だし、ちょいちょい部屋に居た宿泊客が窓を開けてキョロキョロするので声を張って断りを入れる。三回目辺りで響はふと思った。
「、、、これって魔力で作った物が此処に出てる訳だよね?じゃあ、別に無限収納の中でも良くない?」
設計図の中の木材はかなりの数がある。総べて出して居たら幾ら夕食前の時間だろうが騒音で苦情が来るだろう。
逡巡して取り敢えず試してみるか、と無限収納の中に木材を―――と考えたのと同時にステータス表示のパネルに『所持品一覧』が増えて居る事に気付いた。
またこのパターンか、と乾いた笑いを零しつつも所持品一覧の項目を見てみる。所持品は項目ごとにカテゴライズされており、設計図の一覧に移動すると『魔力創造』『模写』『転写』と言う項目があった。
(、、、神様、何を思ってこのシステムにしたんだい、、、?)
模写に至ってはスキル持ってないけどと響は首を傾げたが、そう言えば商業ギルドで登録する際に書類が映し出された事があったのでその機能なのだろう。マニュアルが作用したのかもしれない。
だが『転写』、テメーは駄目だ。
試してみたい気もするが、試すなら人目が無い場所でなければ不味いだろう。恐らく模写はヘルプ内に書き写す事―――つまりスキャン機能だろうが、転写はコピーだ。何処にコピーするのかと言う問題があるので後回しにしてしまおう。
その後は初めて作る物だけ外に出して大きさを確認し、他は纏めて無限収納内で作成した。ステータスの『魔力創造』項目を選択すると個数指定出来るので作業時間は短縮されたが、響はあまりにもイージーモードな作業に自分の一件が案外、神様のトラウマと化したのかもしれないとぼんやり思うのだった。
夜でも明るい部屋って実は近代的な物なんですよね。。。