エルフとは
響の辞書に自重と言う二文字は多分ない。。。
説明の後、仮契約とは言えど雇用主としての名前が必要なので書類を人数分書く事になったが、執事スキルと響の執事の称号を持つロヴェルの代筆もあり日が暮れる前には終わった。
宿に戻ると調理担当のお兄さんがドヤ顔で言う。
「今日の賄は俺ですよ!!さぁ、エコーちゃん、、、感想を頂きましょうか!!」
言いながら出されたのは窯焼きのピザである。響は早速フォークとナイフで切り分けて頂く。
「、、、くっ、、、美味しい!!トマト最高!!焼き具合も最高!!でも、もうちょいチーズが欲しい!!」
「んー、、、チーズは高くてこれ以上は無理だな、、、少し前に家畜が魔物の被害に遭ったから割高なんだわ」
「魔物よ滅びよ!!、、、嗚呼、チーズ、、、」
「冒険者が増えて居ますし、家畜被害は直ぐに解決するかと」
「そうなんだ!じゃあ待つか。そう言えば、木材も足りないって言ってたよね」
「あ、親方から手紙来てるよ」
言われて思い出した、と言う感じでお兄さんが受付に手紙を取りに行った。響としては普通の建材はこれまでの所から買って貰って余所で手に入らない物を売れれば良いので其方も品薄が解消されれば良いなとぼんやり考える。
「はい、エコーちゃん。セルさんが置いてったけど親方からの手紙だからね。間違えないでね」
どういうこっちゃと思いつつ手紙を受け取って理解した。すんげぇ綺麗。いや、何がって文字が。
あの武骨な!the・親方!!で筋肉質な感じのドリス親方が!!
と、一頻り納得してから手紙を開けてみる。中の文字も綺麗である。あの設計図は絶対に親方の書いた物だな、と響は思った。
手紙の内容は先に送った物―――着工の日時を早めて欲しい旨と木材の相場を知らないのでその事に対する相談に真面目に対応してくれた物だ。
着工については実は今日の内に下見に来てくれていたそうで明日にでも取り掛かると言ってくれた。土台作りが得意な大工が居ると自慢気に書かれている。
契約書の下書きを見て彼方で足りない部分を追加して本契約の書類を持って行くと書かれている。
木材の価格を抜いた上での試算も出してくれていたのだが、想像以上に安かった。これは後で確認してから契約書にサインしないとな、と響は眉間に皺を寄せつつ手紙を読み進める。
木材の相場については現在各地で値崩れが起こっているのと、響の出した物の質が良いので相場を知っても参考にはならないだろうがと前置きした上で以前の業者との取引の際の大体の値段を教えてくれた。
「ふむふむ、、、木の種類は全然知らないけど、ちょっと調べとこうかな」
「木の種類、ですか?、、、嗚呼、それなら先程のエルフの方に聞かれては?」
「エルフってそう言うの詳しいの?」
「お?エコーちゃんは他種族には詳しくない感じ?」
「知識はあるけど具体的には知らないかな。私の住んでた所だと人族だけだったし」
二人はへぇ、と頷きながらエルフについて教えてくれた。ヘルプ機能でも解るけれども教えてくれるのなら教わった方が知識として身に付く気がするので聞いておく。
エルフとは森の民とも呼ばれ、森に住む種族だ。美しい容姿と魔法に秀でる事が有名だが、同時に閉鎖的で排他的でもあるらしい。人里で暮らすエルフはまず間違いなくエルフの里を追われたか出て来たかの二択で変わり者なんだとか。
一応、魔法や学問で認められればエルフにも認められるらしい。
もしやエルフとは極めし者が多い種族なのだろうか。
「因みにエルフは長寿であり故にスキルも人よりも伸ばし易いと聞きました」
「生まれ持ったスキルが多いと極めるのに時間が掛かるって言うけど、エルフなら別に時間が掛かっても構わないもんなぁ」
「ふぅん、、、でもそれなら教えてくれないんじゃないの?」
プライドが高いだろう、と言う響の疑問に答えたのはロヴェルだ。
「高潔ですが、恩義を感じた場合は別です。数代前の王に仕えて以来ずっと国を守っているエルフとて居ますので」
「嗚呼、それでさっきの、、、まぁでも駄目なら別料金って事で頼んでみようか」
別にそんなに沢山の知識が欲しい訳じゃないのだ。建材に向く木の種類とかその種類の基本的な大きさとかが知りたいだけである。
今はドリス親方にしか卸して居ないし、卸すつもりもないので構わないが、警戒はしておいて損は無いだろう。
そんな話をしていたら不意に宿の常連―――食事のみで利用している近所の小父さんが話を聞いていたのか酒を片手に言う。
「エルフには呪いが得意な種族って噂もあるから気を付けろよ?」
その言葉にロヴェル達はそう言えばそんな噂があったな、と言う程度の認識で苦笑を浮かべた。口にした常連客も真剣味はあまりない。しかし、その場に居たのはホラー耐性が無い自覚がバッチリある響である。
「、、、よし、今日はもう寝るわ!!おやすみなさい!!」
即座に部屋に撤収した響のあまりの素早さにその場に居た面々はただ茫然と見送るしかなかった。
その後、部屋に戻った響が呪い関連のスキルを作成し出したのは言うまでも無い。
解決策用意しとけば安心できちゃうタイプの怖がり響。