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異世界技術派遣会社  作者: 神無
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仮雇用へ

響視点に戻ります。

ドリス親方の下で酒を飲んだのがバレて女将さんに回収され、お説教と共に契約の内容を詰める事になり。


元々先代の宿屋店主が話を持ち込んで居たから早く終わりそうだと伝えると女将さんは大喜びだった。


予算表があるかもしれないと言って居たけれどそれは恐らく木材が問題なく流れて居た頃の物なので改めて予算を組んでもらう事にして女将さん達は建設中の間や出来上がった後の仕入れや営業の詳細を詰めると言うので先に休ませて貰う。


翌朝、食堂で遅めの昼食を頂きつつロヴェルに雇用や予算の計算用の書類を見せたり、必要な物のリストの予備を渡しておいたり。


従業員はあくまでも保護であり仮雇用だ。なので期間限定の雇用にした。三ヶ月が取り敢えずの契約だが、帰る場所が遠い場合には延期も出来る。その場合は従業員用の寮に移動して貰うが、雇用者からの申請が必須と言う事にした。


ただでさえ勝手に奴隷扱いされた人達なので配慮は必要である。


正式な雇用については三か月後に希望者を募る事にした。それまでの仕事ぶりを見れば面接の代わりになるだろう。


三か月間の寮生活では現金こそ貰えないが食事や被服等の生活必需品は現物支給が受けられるらしいので響の出す給料を無駄遣いしなければ普通に帰宅出来る程度の金額にしようと言うとロヴェルが試算を出してくれたので問題はない。


強いて言えば恐ろしく出費が出まくって居るので商業ギルドの査定とかがあった場合は完全にマイナスになるだろうと言うぐらいか。


と言っても絶対的なプラス(響の個人資産)から出て居るので全体で見れば全くマイナスではないのだが、会社としてはマイナスだ。


従業員用の寮、仮雇用の従業員達への給料、ロヴェルへの給料。


出費は多いが収入は無い。


此処から利益を出すには―――と考えた所で宿屋に見覚えのある男性が現れた。


「あ、門番さん!こんにちは」


「ん?お、おぉ!!あの時のお嬢ちゃんか!連れのスケルトンはどうだ?」


「え?ロヴェルですか?ロヴェル、元気?」


「はい、エコー様」


「、、、、、、、おぉ、神よ、、、」


急に天を仰いだ門番に響は首を傾げたが、ロヴェルはカタカタっと骨を鳴らすだけだ。因みに今は響が渡した洗い替えの執事服を着て居り、ポケットには懐中時計を、懐には空間魔法付与の小袋を入れ、小袋の中には鑑定付与のモノクルも入っている。


まず間違いなくこの世界で最も装備過多なスケルトン、それがロヴェルである。


「どうしました、ギリーさん」


引き続き天を仰ぐ男にロヴェルが声を掛けると彼はハッとしたように視線を戻した。


「あ、あぁ、、、実は昨日の内に作戦が決行されてな。皆、無事に保護されたんだ。それで、取り敢えず休息を取って貰ったのでロヴェル殿さえ良ければ今後の話をと」


「なんですと!!行くよ、ロヴェル!!女将さーん!ちょっと出て来ます!!親方かセルさんが来たらこれ渡しといて下さい!!」


言いながら響は食べ終わった朝食の皿を調理場まで運び、女将にドリスへの手紙と契約書の下書きを託して門番―――ギリーの下へ向かう。


「では行きましょう」


ちょこんと自分の隣に立った響を見てギリーは確認するような視線をロヴェルに向ける。ロヴェルはロヴェルで自分が食べた分を片付けると生活魔法を使ってテーブルと椅子を綺麗にしてから響の後ろに立つ。


「では、参りましょうか。、、、エコー様、ギリーさんに御挨拶はしましたか?」


「え?、、、あ、エコーです。ロヴェルとはあの後なんやかんやあって主従です」


「、、、因みに主は」


「私ですが」


ギリーは頭痛を堪える様な顔をした後、どうにか自分を納得させながら二人を衛兵の詰め所まで案内するのだった。


詰め所まで着くとギリーが何やら広い部屋に案内してくれた。其処には様々な人種の人々が居たが、皆身を寄せ合って居る。人数は三十名程だろうか。しかし改めて集めたと言うよりはこの部屋で休んでもらって居たような感じだ。


「、、、解放後にいきなり個室を用意すると自傷行為に走ってしまったりする者も居るんだ」


小声で教えてくれたギリーにそりゃそうだ、と響は頷いた。仲間が居れば多少は安心感もあるし、何かあれば騒ぎになるので直ぐに気付けるのだろう。納得していると一人のスケルトンが響を見てその後ろに居たロヴェルを見て声を上げた。


「ロヴェル!?ロヴェルなのか!?」


「嗚呼、私だ。、、、良かった、皆揃って居るんだな」


ロヴェルが響に許可を得る様に視線を向けたので響は大きく頷いた。するとロヴェルがスケルトン達の居た場所まで向かう。其処には数名のコボルトも居た。


どうやら同郷のようで、ロヴェルが執事スキル習得の為に努力していた事を知っているらしい。流石俺達の希望だ!なんて言葉も聞こえて来て響は自然と笑みが浮かんでいた。


ロヴェルは周囲にも聞かせる為か少し大きな声で事情―――響と出会った経緯や、今後の事を話した。スキル譲渡の事などは暈して話したが、大体の流れは一緒である。


「あの方が私を助けてくれたエコー様。この場に居る面々が三か月後、無事に故郷へ帰れるように雇ってくれるそうだ」


一応、此処にいる人々は事情を聞いていたらしく響へと頭を下げたり少し驚いていたりしている。響は笑顔を浮かべて言う。


「雇用主と言っても仮契約ですから気兼ねしないで下さいね」


「仮契約、ですか?」


そう言ったのは耳の長い金髪の女性―――ヘルプによるとエルフらしい。美人なのに絶望の真っ只中、と言う雰囲気があまりにも重くて少しだけ気後れしつつ事情を説明した。


期間限定の契約だが、延長は個人の自由。本契約―――本来の業務である人材派遣の方に雇われたいと言う場合は響による査定がある事を伝える。


ロヴェルが明確な業務内容や給金の話をすると殆どの人が安堵していた。


前もってドリスに手伝える範囲を聞いて居たので説明もスムーズだ。荷運びや掃除、また建材を混ぜたり単純作業なので求められるのはステータスでもスキルでも無く丁寧さだと伝えたのも大きいだろう。


響も安堵していたのだが、先程声を上げたエルフの女性が未だ沈んだ様子なのだけが気になっていた。


装備過多でスキル過多なのがロヴェルさんです。

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