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異世界技術派遣会社  作者: 神無
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親方

基本的に20時投稿です。


翌朝。女将に見送られて響はロヴェルと共に親方の居る工房に向かった。


勿論、昨晩は酒を製造しつつも幾つか策は考えていたのだが実際に大工ではない響にはそれが可能かどうか解らなかったので親方に意見を聞いて実現可能な物を選ばなければならない。因みにヘルプによればこの世界では酒を造るのは別に問題ではないらしいので安心して製造した。(調子に乗ったとも言う)


一つは響が手伝うと言う事。自重せずに極めればステータスも相まってどうにかなるだろう。但し諸々バレるので最終手段である事は言うまでも無い。


もう一つは他の街から大工の応援を呼ぶ事。但しこれは親方が認めた人でないと逆に効率が悪くなるかもしれないし、応援の大工には普通よりも多めの報酬が必要になるし、宛が無ければ水泡に帰す策だ。


他に有望なのは人海戦術だ。実はこれが一番現実的だと響は思って居る。


解放された人に手伝いを頼む。回復は響が出来るので怪我の心配はないし、人数がそれなりに居るそうなので交代で仕事をしてもらえば無理なく働けて給金も出せる。


ただ、人海戦術で可能なのはあくまでも単純な作業のみなので親方の許可が下りるか否か、またどの程度まで大工の負担を軽減させられるかが問題になる。


大工達だって他の仕事があるのだ。掛かりっきりに等なれない以上は其処が一番重大な問題だ。


そんな風に考えて居ると工房に着いたようだ。トンカントンカンと小気味の良い音が響いて居る其処は老舗と言った雰囲気の工房だ。作業場は出入り自由だとは聞いたが勝手に入るのは気が引けたので申し訳程度のノックをしてから入る。


「すみません、仕事の相談で来ました。親方さん居ますか?」


中に入ると響よりも幾分か背丈の低い人が木の表面を磨いていた。大分強面である。他の大工達は道具を整えたり木をノミで削ったり、設計図を引いたりしている。


「あぁん!?、、、なんだ、人族のガキか!構わんが、今は補修以外は請け負ってねぇぞ!!」


「そんな!?増築をお願いしたいんですけど!!」


「んな材料がある訳ねぇだろが!!今は何処も木材が足りねぇんだ!!」


「木材があればやってくれるんですか!?あの、『メリーの宿り木』の庭なんですけど!!」


親方が怒鳴るので響も釣られるように怒鳴る。しかし親方は更に声量を上げた。周囲で手を止める者が増え始める。


「あぁん!!?彼処の庭に増築、、、先代の言ってた話か!!!あれなら設計図は引いてあるが、庭一杯にしろとか言うから無駄にデカくなっちまってるぞ!?あんなに客が来るのか!!!」


「其処は問題ないです!!ただ、三ヶ月で出来るかが問題で!!」


「三ヶ月だとぉ!?馬鹿にしてんのか!!三ヶ月ぽっちじゃ木材があってもそれを整えて終わりだ!!」


「うぇ!?じゃ、じゃあ加工済みの木材があれば!?」


響の言葉に加工の手間を知る大工達は苦笑したが、親方は鼻で笑って言った。


「よーし、セル!!設計図持ってこい!!木材の方だ!!」


「親方、無茶言うのは、、、」


「良いから持って来い!!」


言われてセルと呼ばれた青年―――設計図を引いていた人だ―――は呆れたように奥に行って何枚かの大きな羊皮紙を取って来た。それを親方が作業台に広げて響を呼んだ。


「これだこれ!!ほれ、用意出来るか!?」


示されたのは文字がびっしり書き込まれた図面だ。キッチリ数値化されており、質の指定までしてある。今示されているのは恐らく梁の部分なのだろう、かなり大きな物だ。


「へぇ、、、綺麗」


「はん!世辞を言っても無駄だぞ!」


と言いつつも声量が落ちる親方。響はお世辞ではなく本気で綺麗だと思った。文化財の設計図もこんな感じなのかもしれないと思いつつ響はこれならいけるかもしれないと思った。


「親方!加工済みの木材があって、他に人手があれば三ヶ月で出来ますか!?」


「おん?、、、なんだ、訳アリか?」


「はい!ただ、人手はスキル無しの人が基本です。頭数はありますし、やる気もあるでしょうけど、大工ではありません。なので、どうしても無理なら期限は延ばせますが、、、」


神がくれた金貨を使えば暫くは他の宿屋を借りられるだろう。いざとなれば魔石創造もある。


だが、それは最終手段だ。


三ヶ月と言う期限を過ぎても残れる事で安心と慢心が生まれないとも限らない。そうなればヤル気は下がるだろうし、響もそうなってまで面倒を見ようとは思えない。


「、、、本当に、本当にこの図面通りの加工がしてある木が用意出来るんならそれで充分だ。今は他の仕事は補修だけだしな」


「つまり?」


「モノがあるならやってやらぁ!!」


「よし来た!!じゃあ、これ借りますよ!!」


親方の男気ある返事に即座に魔力創造で柱の情報を脳内に叩き込む。しかしふと書面があるのならマニュアル的な感じで無限収納に入れればタブ機能が付くのでは?と設計図を片手に取ると響は外に出た。


親方とロヴェルがその後に続くが、他は呆れた様子で作業に戻る。


数秒後、ズドン!!と地鳴りがして慌てて外へ出た大工達が見たのは―――親方の注文通りの品だった。

ただ稼ぐだけならチートだけで無双できそうな響さん。

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