最初の商談その2
更新忘れてた。。。
きっちりと夕食の片付けまで済んだ所で女将は「アンタらも客なんだからね」と取って置いたらしい夕食を食堂に並べてくれた。因みに手伝おうとしたロヴェルがしっかり笑顔で黙らされたのを見て居た響は従業員のお兄さんがくれた果実水を飲みつつ大人しく待っていた。
二人は客用の食事を、従業員達は女将の用意した賄に響が報酬代わりにおまけしたつまみ(響が食材を用意したので差し入れ扱い)でそれぞれ夕食を取りつつ女将が口火を切った。
「さて、それでどんな話だい?」
商談だからか女将は敬語ではなく素の口調で話して居るらしい。響としてもその方が話しやすいのでそれに乗った。
「増築費用を此方が持つ代わりに従業員用の部屋を間借りさせて欲しいんです」
「従業員?何か店でもやってるのかい?」
響はロヴェルをチラリと見た。場合によっては適当に誤魔化して話しても良いが、響はこの宿の人には事実を話しても良いと思って居た。ロヴェルも頷いて返す。
なので此処だけの話だと前置きして奴隷商の話をした。既に衛兵に話が行って居る事、響が一時的に雇用主になって帰る為の費用を稼げるように仕事を回そうと考えて居る事。
すると女将達は号泣しながら話を聞いていた。話し終わると沈痛な面持ちで女将が言う。
「、、、でも、今からじゃあ間に合わないんじゃないかい?それに、草原を抜けなきゃいけないから材木も馬鹿にならないよ?」
「衛兵の話では三か月間は衛兵の寮を間借り出来るそうですから人材が集まれば問題はないのでは?」
「そうも行かないさね。運搬費用が高いのもあるが、大工の手が足りない。彼処の親方は腕はいいんだけど口がね、、、スキル無しでも雇って貰える貴重な所だけど、止めちまう奴も多いのさ」
年嵩の従業員がそう言うと女将も調理担当のお兄さんも頷いた。しかし響はスキル無しでも雇って貰えると言う言葉が気になった。もしやと口を開く。
「、、、あの、新人は漏れなく材木運びと片付けとか決まりがあったりとか?」
「そうそう、折角の設計スキル持ちが余所に出ちまったって噂聞いたな」
いやそれ研修期間って奴じゃないんですかね、、、と言えないまま響は微妙な顔になる。しかしふと気付いた。
自分の考える人材派遣業務において、理想的な職場ではなかろうか。
材木運びだって重大な仕事だし、筋力や体幹が育つから零の状態で教わるよりも金槌を振るったりするのも安定して上達する。
親方はそれを理解しているからそう言う方法を取っているのではないだろうか。
「俺が修行してた店の料理長も最初は皮むきしかさせなくってさ。この街の奴は頭が固い輩が多いって新人が入らなくなっちまったのだけは残念だが、まぁヤル気のない奴は現場じゃ使えないからな、、、」
お兄さんがため息交じりに言う。
(いやいや、それ大事じゃないの?包丁の扱いや現場の雰囲気をしっかり把握して貰わないと立ち行かなくなるじゃん!)
この世界のスキルの扱いって元の世界の学歴的な物なのかな、と思いつつ響は似たような店があれば後で教えて欲しいと伝えてから話を戻す。
「材木については私に宛があるので問題ないですが、、、大工ですか。うん、その親方と話して来ます。もしも三ヶ月で可能であれば女将さんは許可をくれますか?」
「うーん、、、そうだね、新しく従業員が必要になるけどアンタの所から何人か採用しても良いかもしれないね。勿論、最初は此方の仕事はさせないよ。そっちの従業員の部屋を掃除したりして練習してもらうし、その間は給料はあまり出せない」
「充分です。あ、そうだ。細かい金額は後で書面にしますけど、あくまでも間借りしているだけで客ではないので食費と消耗品とかは別ですから予め納めておく形にして余った分は翌月に繰り越す形式にしたいと思ってます」
「いんや、書面に残すなら後払いの方が良いよ。何も増築分全部を従業員の部屋にする訳じゃないんだ、もっとドーンと「儲けさせてやる!」位は言いな!」
女将が快活に笑いつつ響の背中をドーンと叩いた。良い人だなぁと思いつつ響は幾つかの約束事だけは決めておこうと話を続ける。
「私とロヴェルの部屋だけは確定ですけど、他は変動します。だから従業員の数が少ない時は宿の部屋に使えるようにして欲しいんです。逆に此方は一定以上の部屋は使わないように取り決めないと」
「そうだね、其処は賛成だよ」
「よっし、じゃあ明日早速親方を口説いて来ます!!」
グッと拳を握って力説した響にその場に居た面々が笑った。其処からは何故か酒盛りになり、響は成人済みだと何度主張しても酒を飲ませて貰えず部屋に戻ってからひっそりと魔力創造スキルであらゆる酒を作る事になるのだった。
取り敢えず四十話分位まで書けたので推古してます。