プロローグ
初投稿になります。今後、のんびりまったり書いていくつもりなのでお暇な時にでもどうぞ。
少年は憂鬱な気持ちを押し隠しつつ通りの端にある店の扉を叩いた。すると中から「いらっしゃいませ」と声がしたので中に入ってみる。
中は落ち着いた内装だった。ソファーやラグがあるが、派手ではなかったので其処まで緊張せずに入れる。
受付のカウンターで出迎えたのは上等な服を着て、キャップを被った女だ。米神あたりから少しだけ垂らされている長い髪は金色、瞳は深い緑色をしており、色彩だけならばエルフかハーフエルフだろう。
しかし、女の耳はキャップと髪に隠されているので魔法の素養のない少年には判別は出来ない。
女は少年に気付くと少し目元を和らげて問う。
「何用でしょう?」
「、、、仕事を、紹介して欲しくて、、、」
言いながら友人に貰った紹介状を差し出す。しかし、少年はそれが使えないだろうなと言う事は解っていた。勿論、紹介状は紛れもなく本物だ。
だが、だからこそ。
何故ならこの紹介状を書いたのは自分と同じく“スキル無し”の平民、それも元奴隷だったのだから。
友人は元々平民だったが、スキル無し故に奴隷に落とされたのだと言って居た。同じ状況に陥らなかったのは偏に両親が自分を慈しんでくれていたからだ。
騎士や冒険者になれるのは“戦闘系スキル”を持つ者。文官や商人になれるのは“算術スキル”や“交渉スキル”を持つ者。
平民であってもスキルさえあれば大成も出来る。そう、“スキルさえあれば”。
逆に言えばスキル無しであれば真面な職には付けない。どうにか仕事を見付けても、給金はスキル持ちの半分以下だ。
絶望するな、と言う方が無茶である。
しかし、そんなある日。
奴隷に落ちた筈の友人と再会した。そして言われたのだ。
『この紹介状を持って行け。そうすれば真面な職に就ける』と。
希望は、持った。持ってしまった。けれど、実現はしないだろうなとも解ってしまった。
それでも友人は身なりも良くなっていたし、なにより現在は“鍛冶師”をしていると言うのだ!鍛冶師になるには“鍛冶”か“炎魔法”と言った特殊なスキルが必須だと言うのに!!
だからこそ、此処へ来た。
受付の女性は紹介状を受け取ると直ぐに「エコー様、、、!お客様ですよ!」と嬉しそうに言う。
その反応に驚いて居ると受付の向こう側から淡い笑顔の女性が現れた。彼女は受付の女性に二言三言声を掛けて直ぐに言う。
「じゃあ、面接からね」
「め、面接して貰えるんですか!?」
スキル無しだと紹介状には書いて無かったのか?と慌てる少年に女性―――エコーはにこりと微笑みを浮かべた。
「スキル云々の前に、話してみなきゃ解らないでしょう?」
少年は目を白黒させながら奥の部屋に案内される。其処には何故か執事服を着たスケルトンが居た。
(スケルトン、、、?最弱の種族で、スキル持ちの割合も一番少ないのに、、、)
そんなスケルトンが執事なのか?と首を傾げつつも案内された部屋で勧められるままにソファーに座る。対面に座ったエコーは短く切り出した。
「さて、先ずはステータス、、、うん、まぁ一般的だよね。で、次、、、取り敢えず質問しても良い?」
「は、はい、、、!」
「なにかやりたい仕事とかある?」
「、、、え?」
スキル無しに何を、と少年は思う。エコーは「あ」と声を上げて言葉を続けた。
「好きな事でも良いんだけど」
「、、、それは、希望って事ですか?」
頷いて返すエコーに悪意や揶揄い、見下しは無い。それを感じ取って少年はゴクリと喉を鳴らして告げた―――
山あり谷ありの世界ですが、主人公は戦わない(予定)です。