表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐は正攻法で  作者: コーヒー牛乳


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/27

2


 タイムリミットを教えてあげたが、清水さんはまだ終わらせる気が無かったようでボソリと呟いた。


「男だけじゃなくて仕事も横取りとかサイッテー……!」


 延長戦のゴングに顔を上げて清水さんの顔をまじまじと見返せば、勝ち誇ったように口元を歪ませた嫌な笑顔があった。


 なるほど。


 その意地の悪い顔を見たら妙に怒りも沸かなかった。


 ゆっくりと立ち上がり、清水さんを正面から見据える。

 殴りかかられると思ったのか、清水さんは少し下がってしまった。殴るなんてとんでもない。


 私は至って穏やかな表情で、またもや5メートル先にいる人に話しかける声量で清水さんに質問を投げた。

 

「よく聞こえなかったのですが、清水さん、”男だけじゃなくて仕事も横取りとか最低”とはどういう意味ですか?」

「えっ、ちょっと」


 清水さんは焦ったように周囲に目を向け、キョロキョロとしている。どうやら聞こえなかったようなので、ハッキリと聞こえるように質問を繰り返した。


「どういう意味ですか?教えてください。清水さんがおっしゃっていた”男だけじゃなくて仕事も横取りとか最───」

「わ、私そんなこと言ってないから!」


 とぼけるつもりのようだが、そうはいかない。延長戦を始めたのは清水さんの方じゃないか。


「え?言いましたよね。おかしいなぁ。まあ清水さんは私にチャンスをくださったんですもんね」

「……はぁ?」


「だから清水さんは私に仕事を譲ってくださったんですよね。ありがとうございます」

「譲ってない!!」

「まさか、忘れちゃったんですか? 全部譲ってくださったじゃないですか。清水さんの担当営業さんの取引先のB社、C社、D社、E社とそれから」

「ちょっと!もうやめてよ!」


 今まで清水さんが私に無茶ぶりしてきた案件をここぞとばかりに言ってやろうとしたが、遮られてしまった。後ろ暗いことが無ければ堂々としていればいいじゃないか。


「こんなに貰っちゃって……清水さんの仕事、残ってますか?」


 決して煽っているように聞こえないように、とぼけた顔をして清水さんの顔を覗き込んでおいた。上目遣いでもしようかと思ったが、変な興奮状態により少し口角が上がってしまったかもしれない。


「~~~~もういい!」


 清水さんはことごとく私の言葉を遮ってプンプンと怒りながら、自分の席ではなく彩さんの方に向かって行く。こちらの方まで「最低!」だとか聞こえるが、ここは職場だということを忘れてしまったんだろうか。


 清水さんと表立って揉めることは避けたかった。

 いつか噂が風化し、状況も落ち着いてきたら元の状態に戻るために衝突は避けたかった。だから今まで嫌味や嫌がらせに気付いても流していたのだ。


 だけれど、我慢して流して耐えたって一向に状況は良くならなかった。

 それは一重に、私がナメられているからにすぎない。


 こいつはこういう扱いをしても良いのだ、と思わせてしまったから。坂道を転がり落ちるように状況は悪化していった。


 存在感を消すようにそっと着席すれば、荒ぶる清水さんの話に耳を傾ける彩さんの強い視線に気付く。

 彩さんが私の方を見るのは、あの非常階段ぶりのことである。あれ以来、廊下ですれ違おうが更衣室で鉢合わせしようが、いないものとして扱われてきた。


 こちらからも話しかけようとしなかったので成立してたんだが。


 苛立たし気に強く睨む彩さんと視線が合い、今度はニッコリと笑い返してあげた。


 きっと花田さんならこうするだろう。

 文句があるなら言ってみろ、とでもいうように笑ってやった。


 二宮部長との件で私は反省したのだ。

 黙って時間が経つまで待っても、かぶった汚れは取れないのだ。


 本当のことは自分や大切な人がわかってくれさえいればいい、堂々としていればいい。誠実に清く正しく生きていれば〜なんて道徳の教科書通りにいきはしない。


 今回の件でよーくわかった。


 私の今の目標は「強くなること」と、あとは花田さんへの恩返しだ。

 目標に向かって一歩づつ。今回は清水さんからの”借り”を1.5倍で返してみたのだ。これで少しは近づいただろうか。……強く、というか狂犬のようだと思われていないか心配なところだが、前進してると信じたい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ