9ー②
─太平洋上空
エゲツニウムの暴走により、オジャパメンはその姿を変貌させた。いや、正確には暴走したエゲツニウムに取り込まれたのだ。
「デカい……」
英雄は、その大きさに息を呑む。先ほどまでキリンオーの3分の1程しかなかったオジャパメンが、その30倍ほどの質量に姿を変えたのだから。
『我が名は“エゲツナー”! 創造と破壊を司る存在……そして、全並行宇宙を統べる“神”なり!!』
地獄の底から響く様なエゲツナーの言葉は、地球じゅうに届いている事だろう。
「神だって?随分大きく出たねぇ」
インションの口調は普段通り飄々としていたが、声音には緊張が伺える。
『我は“星”そのものであり、様々な命を育んだ……しかし、その殖え過ぎた命を賄うに我の体は狭すぎた……故に、他の宇宙を我が命達の新たな星とする事を選んだのだ』
「随分勝手な理由だな!他の世界と命を何だと思っている!!」
ヒーロは声を荒げる。彼の世界アラパイムが滅ぼされた理由を知ったからだ。
『そして、全ての世界を統べし我こそが、“神” となる………その為に最大の障害となる「メサイア」は、ヘイトを我が手に取り込み、他の者達はヘイトらの手で亡き者にする筈であった……』
「……ヘイトは貴様に騙され、掌の上で踊らされていたというわけか!」
つい先ほどまで怨敵と思っていた並行世界の自分が、真の敵に操られていた事を知り、ギェロイの胸に怒りがこみ上げる。
『しかし、 我が計画に思わぬ邪魔が入った……それが黒鼈のメサイア・来満英雄、そしてその娘、来満芹佳!時を越えてまで我が計画を妨げる貴様ら親子は必ず我が手で葬らねばならん!!』
「……今、何つった?」
英雄はエゲツナーを睨む。
「芹佳に何かしようってんなら、俺は神だろうが何だろうが、ぶっ殺してやる!いいか?宇宙で一番強ぇのはなぁ、家族を愛する“父親”なんだ!解ったかこんダラズが!!」
英雄の怒りに呼応し、幻舞のエゲツニウム炉が再び輝き始める。そしてキリンオーとエゲツナーを包む様に次元穴が開くと、そのまま次元の彼方へと姿を消した……




