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8ー⑨

 青と赤と紫の光を噴きながら、空を駆けるキリンオー。その前方には次元穴から現れた無数のエゲツナーロボ達が青空を埋め尽くす様に待ち構えていた。


「奴ら、僕たちを潰す気満々だねぇ」


 インションの言葉には少し余裕が伺える。


「そりゃそうであろう。メサイアが4人揃ったのだ。単純計算でもヘイト一人の四倍は戦力差があるのだからな」


 ギェロイは武者震いしつつ言う。


「油断するなよ、みんな。……敵の数が多いな。 ヒーロ、頼む!」


 英雄は後ろに座るヒーロへ合図を送る。


「心得た!エレクトロポルスの雷よ、奔れ!!」


 ヒーロは娘のユリーナと同じく魔法を操る。操縦席に備えられた水晶に魔力を込めると、キリンオーは額からプラズマ砲を発射する。密集していたエゲツナーロボ達は次々と爆発してゆく。


「すまない、数機取り逃しました」


 爆散したエゲツナーロボの群れから3機ほど直撃を回避した機体が現れる。


「任せなよ」


 インションは手元のコンピュータとほぼ一体化した機械の両手で信号を送る。


「ライゲルキャノンッッ!!」


 合体前のライゲルが両肩に備えていた砲身は二対で一つの銃となり、キリンオーの右手に把持されている。そして、その砲身が火を噴いた。発射されたキャノン砲は2発ともエゲツナーロボを打ち抜く。 残された1体は躊躇なくキリンオーめがけ突っ込んで

きた。


「次はそれがしが!!」


 ギェロイが操縦桿を巧みに操作すると、背部の羽の内、中央の一枚─ケツァールの機首に付いていた刃「剣誇刃けんこば」が銃と合体して一振りの剣となる。


「チェストぉー!!」


 キリンオーはすれ違い様にエゲツナーロボを斬り裂いた。背後で起こる爆発を追い風に、キリンオーは更に飛ぶ。



「いつの間にか戦艦が2隻も出てやがる!さっきの奴らは時間稼ぎだったか!!」


 英雄は舌打ちする。2隻の飛行戦艦に守られる様に、ウンババ 大帝こと、ヘイト・ライマンの乗っているであろう『エキセントリ ックボウイ』はその巨体の一部を覗かせていた。


「更にエゲツナーロボが出てきますよ!!」


 ヒーロはモニターを指さす。そこには2隻の戦艦 から、先ほどの実に3倍はあろう数のエゲツナーロボ達が発進してゆく。


 その時だった。海上から発射された砲弾がエゲツナーロボの群れに打ち込まれ、その数を大幅に減らす。キリンオーの目が海上に視線を向けると、そこには一隻の巨大な空母……香山が海面を走っていた。砲撃の主はメタルディフェンサー丁型。全高の倍近い長さのライフルを構え、その甲板に立っている。


『助けに来たぜ……兄弟!!』


 砲撃の主から通信が入る。


「…お前……縁か!?」


 ふと、 キリンオーの周りに1機……いや、2機のMMSが飛行しながら近づいてくる。


「それが『キリンオー』か?まるでボルトロンみたいにイカしたロボットだな」


 戦闘機の形をしたMMSの上に立つ重装甲の機体、ジャスティス・レンジャーのパイロットが言う。


「空での戦闘なら、ワタシはその合体ロボより上手く戦える自信があるヨ!」


 戦闘機の姿から一瞬で人型に変型したワインレッドの機体─天鳳Ⅳ式は、両手に携えたガトリング砲を撃ちながら瞬く間にエゲツナーロボを殲滅してゆく。ホバリングしていたレンジャーは再び戦闘機に変型した天鳳の上に着地。


「クリス!タマ!」


 英雄はこの時空で既に死んでいるはずの友たちの名を呼ぶ。


『英雄、ザコは俺たちに任せてお前はとっとと親玉を叩いてこい!!』


「今のお前のチームメイトはおれ達じゃなくて、異世界のお前達だろ?おれ達とはまた未来で一緒にろうぜ!」


「絶対に生きて帰って来いヨ!ナナちゃんとセリカちゃんを悲しませるんじゃないゾ!?」


「ああ、わかったよみんな……ありがとよ!」


英雄は友の激励を原動力に、操縦桿を握る手に力を込める。


「いい友達を持ったね、英雄」


「おう、最高のダチだぜ!」


 キリンオーは敵戦艦の元へ加速した。


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