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8ー⑦

─富士秘密研究所


 大地を、そして空気すらも揺るがす振動が英雄達の肌をぴりぴりと刺激する。


「何だこの圧は……今までに無いほどデカい穴を開けようってのか!?」


「奴らも総攻撃を仕掛けてくるんだろうね」


 英雄とインションが空を見上げると、徐々に広がる次元穴が確認出来た。


「ヒデオ、 出撃しましょう!」


「この世界を我々の故郷の様にしてはならん!!」


「ああ!みんな、乗り込むぞ!!」


 メサイア達が各々の機体に乗り込もうとした時だった。


「ちょっと待ってよ、ボク達は……」


 シアが言い終わる前に、インションは彼女の口に人差し指を当てる。


「ここからは、父さん達の番だよ。君たちはよくやってくれた。だから父さん達が戻るのを待ってなさい」


 ユリーナ、えつ子も何かを言いたそうだが、 ヒーロとギェロイは無言で彼女らの抗議を却下する。


「パパ、ウチは行ってもええよね?幻舞は二人乗りやし、ウチがおらんとエゲツニウムは使えんでしょ?」


 芹佳が言うと、 英雄はネクタイからエゲツニウム結晶のタイピンを外し、握り込んだ。 そして、


「来い!幻舞!!」


 英雄の声に反応し、 幻舞は格納庫から独りでに起動し、吹き抜けの天井を跳躍で飛び越えた。 そしてドラガォン達の傍らに着地する。


「芹佳、パパはお前と一緒に幻舞に乗ったり、時空を超えたりするうちに体も魂もエゲツニウムの影響をもろに受けて、操れる様になったらしい。 だから、芹佳は乗らなくても大丈夫だ……」


「パパ……」


「芹佳、パパはあなたが大事だから、危険な目には遭わせたくないのよ。それはシアちゃん達のお父さんも一緒。親の心を分かってあげて」


 ナナに説得され、 芹佳は戦場へ出る事を諦めた。


「じゃ、じゃあさ……」


 シアは羽織っていた白衣を脱いだ。


「これ、父さんの白衣。今までは形見としてボクが持ってたけど、返すよ」


「ありがとう、シア」


 インションはシアから白衣を受け取ると、その場で袖を通す。


「お父様、わたくしはこれを……」


 ユリーナは左右の髪留めを外すと、魔力を込める。すると、二つの髪留めは1本の槍へと姿を変えた。


「それは私の愛槍「ギムナルクス」!私の亡き後も守ってくれていたのか、ユリーナ!」


 ヒーロがユリーナから槍を受け取ると、えつ子は鉢金を外し、印を組む。すると、鉢金はドロンと煙に包まれた後で鞘に納められた一振りの太刀へと変わる。


「父上!」


「おお、我が愛刀『朱雀丸』ではないか!ありがとう、えつ子よ」


 ギェロイはえつ子から受け取った刀を帯に差した。


「パパ!」

「英雄さん!」

「何d……」


 英雄の両頬に柔らかい感触。 ナナと芹佳の唇が左右から当てられていた。


「行ってらっしゃい、 あなた♪」

「パパ、「お仕事」 頑張ってね!」

「……おう!任せとけ!!」



 4人のメサイア達は、それぞれの機体に乗り込む。


「四獣合神!キリンオー!!!!」


 そして、息を合わせ同時に叫ぶ。 すると4機のメカはたちまち 鋼の巨神へと姿を変え、次元穴の開き始めた空へと飛び立った。

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