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8ー④

ーMMSドック


「へぇ、これが新しい幻舞か」


 英雄はハンガーに据えられた黒い鋼の巨人を眺める。メタルディフェンサー乙型にエゲツニウム炉を搭載するというコンセプトは同じだが、開発の主導者がナナであった先代の幻舞とは異なり、此度の主導はシアである。デザインがかなり違うものになってしまった。


「前の幻舞が「キボシイシガメ」なら、この幻舞は「ワニガメ」って感じだ」


「おじ様、わたくしはその生き物を知らないので例えが解りませ んわ」


「僕も亀はスッポンモドキとオブロンガくらいしか知らないから解りませんね」


 英雄の例えにツッコむユリーナとリック。


「おじさん、そんなくだらない話で待たせちゃダメだよ」


「彼女はその中に確実に「いる」 でござる。同じ魂を持つ拙者達には解るでござるよ !」


「そうだな。……出て来いよ、セリカ!!」


 英雄が呼ぶと、幻舞のコクピットが開く。そして、中から人影が飛び出した。


「パパ!!」


 英雄をそう呼び、彼に抱き付いたのは、3ヶ月前に英雄の目の前で消えたはずのセリカだった。


「おかえり……《《芹佳》》!」


 英雄は芹佳の頭を愛おしそうに撫でる。その両目には涙が浮かんでいた。


「セリカ!」

「セリカさん!」

「セリカどの!」


 セリカを囲む様に抱きつくシア、ユリーナ、えつ子。


「みんな……ただいま!」


 英雄が未来で芹佳の父として過ごした事、そしてナナが目覚め、英雄と未来を約束した事で芹佳の生まれる未来が確立された。それにより、彼女は再びこの時代に存在を繋ぎ留める事が出来たのだ。


「……その子が、私と英雄さんの娘…?」


 ふと、英雄は背後からした声に振り替える。


「ナナ!?」


 そこに立っていたのは入院着姿のままのナナだった。


「ナナさん!いつの間に目覚めたんですか?というか、どうしてここに?」


 リックが問うも、


「あらリチャードさん、お久しぶり。……何か、みんな私の部屋を出てったから付いて来ちゃった。それに……その子に呼ばれた気がしたの」


 と、ナナは答える。


「ママ!!」


 芹佳は英雄達の間をするりと抜け、母の元へ駆け寄った。


「はじめまして、芹佳……いや、初めてじゃないわね。前にあなたが私に、「ウチが絶対助けてあげるけぇ」って言ったのを覚えてるわ。ありがとうね」


 その言葉を聞くなり、 芹佳の両目からは涙が溢れ出した。


「ウチだけやない……パパ、ユリーナちゃん、シアちゃん、えつ子ちゃん、香山のみんなやリックさん……色んな人たちが頑張ってくれたけぇ、ウチはこうして戻ってこれたんよ」


 英雄とナナは芹佳を抱きしめた。


「まだ産んでもいない我が子に会うなんて、不思議な感じだけど……私たちの子どもが、こんなにいい子で良かったわ」


「そうだろう?芹佳は俺たちの、自慢の一人娘だ」


「やっぱり、親子ってのはいいなぁ」


「でも、わたくし達のお父様はもう……」


 シアとユリーナの言葉に反応した芹佳は、くるりと首を半回転し笑ってみせた。


「みんなに、ウチからのお礼があるけぇ、外に出てみんさい」


「どういう意味でござるか?」


 えつ子の問いをよそに、芹佳は皆を外へ出る様に促した。


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