6ー⑥
『虫けら数匹を潰した事など、余はいちいち覚えてはおらぬ……この世界のメサイア、ヒデオ・クルミ!消えるがいい!!』
オジャパメンは両手の甲からジャマダハルの様な刃物を伸長させ、キリンオーめがけ急接近する。
「あの剣はヤマカガシと同じくエゲツニウムを纏っている!避けるぞ!!」
接近しながら両腕を交差させ、Xの字に斬撃を放つ敵機を、キリンオーは急上昇し、避けた。そして、額から魔法によるプラズマ 砲『エレクトロポルス』をオジャパメンめがけて発射する。
『遅いわ!!』
難無くプラズマ砲を避けたオジャパメンは、キリンオーめがけて腹部からエゲツニウムのビームを発射した。
「うわっ!!」
全高30メートルのキリンオーに対し、オジャパメンはその半分ほどしかない。だが、エゲツニウムのエネルギーを以てすればキリンオーに致命傷を与える事など容易い。
『むぅっ!?』
ビームはキリンオーに当たらなかった。直撃の寸前、キリンオーは次元穴を展開させ、そこへ飛び込んだのだ。
『逃げた……わけではないな。貴様がそのような男ではない事は知っているぞ。ヒデオよ』
ウンババ大帝がそう言うと、再び次元穴が開いた。
「お前が俺の何を知ってるってんだ……そういや3年前も似たような事をぬかしやがったな!!」
次元穴からまず現れたのは幻舞だった。その後からケツァール、ドラガォンを背負うように合体した飛行形態のライゲルが現れると、穴は閉じた。
「的が小さくて当たらねえわ、すばしっこくてうざってえわ、【リアル系】と【スーパー系】の相性ってのはホントにあるんだな」
「ゲームと現実を一緒にしちゃダメだよ」
幻舞から聞こえてきた来満親子の会話内容は、地球人でない者には意味不明だったが、英雄が冗談を口にするほど落ち着いている事は明らかだった。
「ユリーナ、シア、えつ子!こいつの相手は幻舞一機でやる!お前たちはあの戦艦が邪魔して来ないようにしてくれ!!」
英雄は幻舞にヤマカガシを抜かせ、その切っ先で戦艦を指した。
『フム……ならばホアホーマ、ベーター、そなたらも一切手を出すな』
ウンババ大帝は再びオジャパメンの手から突出した二対のブレードを構える。
『おじ様、大丈夫ですの!?みんなで協力した方がよろしいのでは!?』
『大丈夫でござるよ。 親父殿もセリカ殿も幻舞も、めちゃくちゃ強い事は拙者たちが一番知っているでござる!』
『そうだ。信じよう……親子の力を!』
『陛下!そのような者、私めにお任せを・・・』
『黙れベーター!漢の戦いは貴公が立ち入れるものではない!!……陛下、吾輩は今ほど貴方を、ヒデオ・クルミと真剣勝負できる貴方を羨んだ事はありませぬぞ!!」
セリカを除くムスメサイア達と、エゲツナー帝国大幹部が立会人となる中、 2機の一騎打ちが始まろうとしていた。
「すまねえな、セリカ。俺の私情にお前も巻き込んじまって」
「ううん。あいつは私のパパの仇だし、縁おじさんの仇も討って、艦長に報告してあげよ?」
「そうだな!」
敵は英雄が3年前に取り逃がした相手だ。だが、今回の乗機は性能の劣るメタルディフェンサー乙型ではない。オジャパメンと同じくエゲツニウム炉を搭載した幻舞である。そして、何よりセリカがいる。 初めて幻舞に乗ったその時から、本当の親子のように息の合った……ふと、英雄は“本当の親子”という言葉を自分で選んでおいて引っかかった。
「……セリカ、今お前は緑の事を“縁おじさん” って」
「言ってない!気のせい!ほら前見て!敵が来るよ!!」
「お、おう!」
目前の敵・ウンババ大帝―これを討てばエゲツナー帝国と英雄の永き因縁は終わる。 英雄は最後の戦いに全てを込める!




