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4ー⑥

『帝国の敗北を阻止すル事は叶わナカった・・・・・・だが、クルミヒデオ!貴様だけハ殺す!!“メサイア”を生かしテおくこトダけはまかりナラん!!』


 スピーカー越しのノイズにまみれた声は若い男のものと思われる。


「許さねえのはコッチの方だ!緑を、クリスを、タマを、仲間を殺られてんだぞ!!!」


 英雄は、丁度近くに落ちていたジャスティス・レンジャーの斧を乙型の左手に握らせる。右手には乙型が元から持っていた槌。二刀流の剣士が如く武器を構えた乙型は、向かってくる敵機を迎え撃つ。敵機の手の甲から伸びる刃にはエゲツニウムが宿ってはいなかった。エネルギー切れと思われるが、そうなればもはやただの剣である。


「あいつ、“帝国の敗北を阻止する” なんて、まるで自分たちが負けると知っていたかの様な言い回しじゃないか……それに…」


 “メサイア”とは何だ? と、片脚を失い倒れたMMS の中でリックは考えながら英雄の戦いを見守る。一進一退の攻防を繰り広げる2機のロボット。ともに相手の手の内を見透かした様な勝負である。攻撃を当て、受け、時にはかわし、互いの装甲は時間ととも にひしゃげてゆく。そんな中、英雄の持つ斧と敵機の右手から伸びる刃がぶつかり合い、互いに砕ける。英雄は柄だけになった斧を捨てると、左手を握りこませ、ハンマーパンチを放つ。敵機はその動きを読んでいたかの様に、振り下ろされた乙型のパンチの手首を掴んで顔前で受け止めた。


「かかったな!!」


 乙型の左手が親指以外の4本を開くと、そこにはMMS用手榴弾が握りこまれていた。乙型の左前腕ごと爆発した手榴弾は、敵機の顔をも吹き飛ばす。片腕を失い吹っ飛んだ乙型だが、カメラの役割を果たすであろう頭部を失った敵機に比べれば英雄の方が有利だ。


『……貴様ノ命を取り損なウとは・・・・まアいい、 貴様はモハや二度と戦ウ事は出来んダロう······貴様の心の弱さハぼくもよく知ってイル……」


 そう言い残すと、頭部を失った敵機は両腕を天に向けると、直径10メートルほどの次元穴を穿ち、その中へ飛び込む。


「待ちやがれ!逃げるな!!」


  英雄の呼びかけも虚しく、次元穴は口を閉じた。


「……リック、 生きてるか?」


「……生きてますよ…僕達だけ……」


 片腕を失った乙型と、左脚を失ったネオケラトダス。 しかし、そんな損傷よりも彼らが失ったものは大きかった。上半身を消し飛ばされた縁の乙型、胸に大穴を開けられたジャスティス・レンジャー、 核爆弾とともに異世界へと消え爆発した天鳳Ⅲ式…そして欠片も残さずこの世を去ったパイロット達。


「俺たちは勝ったはずなのに……」


「生きてるはずなのに……」


 こうして、地球人とエゲツナー帝国による5ヶ月間に渡る戦争は、地球人の勝利で一幕を閉じた。


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