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4ー⑤

「なっ……」


 敵機の刃はクリス機のシールドごと左腕を、そしてコクピットを溶かしながら貫いた。レンジャーの背中から突き出た刃をよく見ると、その刃体は紫色に輝くエネルギー体に覆われていた。エゲツニウムのエネルギーを刃に宿しているのだ。敵機が刃を引き抜くと、ジャスティス・レンジャーは後方へと倒れ、そのまま動かなかった。


「クリーーーースッッッ!!!」


 英雄は槌を手に敵機へと接近する。


「落ち着くヨ!ヒデオ!!」


 タマが天鳳の肩に内蔵した機銃を敵機めがけ発射すると、敵機は後退し、 英雄と距離を取る。


「そいつの手から伸びてる刃は危険ネ!迂闊に飛び込むんじゃないヨ!!」


「すまん、 タマ……だが、あいつは緑とクリスを!!」


 天を仰ぐレンジャーのコクピットはエゲツニウムを纏った刃により大穴を穿たれている。 上半身を吹っ飛ばされた緑の乙型に比べれば原型を保っているものの、中のクリスが縁と同じく跡形も無くこの世から消え去ったのは明らかだった。


「ヒデオ、タマ、もうすぐミサイルが来ます!」


 東の空には既に接近するミサイルの影が、形がはっきりと解る様に見える。

 すると、謎のロボもミサイルの方を一瞥すると、その方向へと跳躍し、背部のエゲツニウム炉からエネルギーを噴射して、そのまま飛翔する。


「あいつ…ミサイルを撃ち落とす気か!?」


 そうなれば作戦は失敗である。 あと一歩のところで、このどこから現れたかも解らない謎のロボットの手により地球の未来が潰されてしまう。


「そうはさせないヨ!」


 タマの天鳳は戦闘機モードへと変形すると、敵機の後を追って飛行、瞬く間に敵機を追い抜かした。


「くらえッッ」


 宙返りをしながら機銃を放つ。空中戦において、タマと天鳳に敵うものは少なくとも地球にはいない。弾丸を浴びた敵機は地上へと叩きつけられた。


「でかしたぞ、タマ!」


 英雄とリックは落下した敵機の元へ疾駆。しかし敵機は立ち上がり、両手から先ほどの刃を伸ばして英雄とリックの2機を同時に相手取る。触れればひとたまりもない刃を前に、2対1ながら苦戦する英雄とリック。


「……ヒデオ、リック、そいつを足止めしておいてくれヨ!」


 そう言うと、タマは天鳳を人型に変形させ、ミサイルに接近し、それを抱き抱えるようにして次元穴めがけスラスターを全開にし、飛んでゆく。


「タマ、 何を……うわぁ!」


 リックの機体が左脚を股の辺りで切り落とされた。だが、リックは倒れながらも残った両腕で敵機の両足にしがみつく。動きを封じられた敵機の後ろから英雄は圧し掛かり、倒す。


「次元穴と、向こうの帝国本体はワタシが何とかするネ!……だから、オマエ達はソイツを頼んだヨ!!」


 タマの機体はミサイルを抱えたまま次元穴に突入した。


「サヨナラ!」


 別れの言葉を日本語で言い残し、 タマとミサイルは次元穴の向こうで爆発した。穴は黒煙を吐き出しながら縮まってゆき、やがて完全に閉じた。


「タマああああああッッッ!!!」


 英雄とリックは消失した次元穴に向かって叫ぶ。


『……許さン」


 これまで沈黙を保っていた敵機パイロットが突如として喋った。そして、激しく全身で抵抗し英雄とリックによる拘束を強引にはねのけた。


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