魔法少女エイプリル【終幕】
そう、このドリーム空間のラスボスはこの私!
マスコットであり、神使であり、使い魔な私!
私を倒したら、元の世界に戻れるよ!
「倒すって……、そんな、どうやって」
「なんかぷちって踏み潰せばいけない?」
「魔法で氷漬けにしましょう」
美嘉ちゃんの困ったような動揺が可愛く感じられるくらい、智華ちゃんと涼夏ちゃんの解決策が物騒なんだなー!!
というかお三方、お忘れですか!?
ここはエイプリルフールにのみつながるドリーム空間!
つまりは何でもあり時空なんですよ!
「ええと……?」
「つまり?」
「何が言いたいんですか?」
私、ラスボスらしく魔法少女の魔法で華麗に盛大にトレビア~ンな感じでやられたいんですッ!!
「……」
「ドMかな!?」
「……」
智華ちゃんだけが元気よく突っ込みしてくれたけど、美嘉ちゃんは曖昧に笑うし、涼夏ちゃんにいたってはすごいドン引きな感じの顔で、私もつらいよ!
でもそういうわけなんで!
さぁ、魔法少女たちよ、その愛と魔法の力でビビビっと私をやっつけて!
「そんなこと言われても……」
「どうすればいいのさ。ラチイさんにやったみたいにやればいいの?」
「……そういえば」
おやー? 涼夏ちゃんが何かに思い至ったようだ!
涼夏ちゃんが美嘉ちゃんと智華ちゃんを集めて、三人でこそこそと話し合いを始める。美嘉ちゃんはいまいち理解してなさそうな雰囲気だけど、智華ちゃんは「なるほど!」ってうなずいてる。
まだかなー、まだかなー。
ワクワクドキドキしながら、魔法少女たちの作戦会議を待っていると、ようやく美嘉ちゃんも分かったのか、三人が一斉にこちらを見た。
「それでは、見せてあげます」
「私たちが元の世界に戻るために!」
「あなたに最後の魔法を……!」
三人がおもむろに陣形を組む。
ローズピンクの魔法少女、フェアリー・チュチュを中心に。
その右側をサファイアブルーの魔法少女、ミラクル・ジュエリーが立ち。
その左側をアイスブルーの魔法少女、フローズン・デュラハンが立つ。
そして。
「花開け」
「きらめけ」
「響け」
「「「私たちの力!!!」」」
素晴らしい力の奔流が、三人の魔法少女たちを中心に沸き起こる。
これ……! これだよ、これ!! これを待っていた!!
フェアリー・チュチュのリボンが妖精の羽のように、しなやかに伸びていく。
ミラクル・ジュエリーが生み出した宝石が、妖精の羽の中心にセットされる。
フローズン・デュラハンの指先からあふれた金色の粒子が、妖精の羽の鱗粉になる。
「「「異世界へ渡れ、愛すべき人の元へ!!!」」」
へっ!?
力の奔流が大きくなる。
そんな、まさか……!?
ぐんぐん広がる魔法少女の力。
金色の粒子が、津波のように彼女たちを天へと押し上げていく。
彼女たちの背中には妖精の羽が生え。
青い宝石が光を放つその中へと、彼女たちは跳んでいく。
「出会えてよかった。楽しかったです」
「私も! また会えるといいね」
「その時はゆっくりお話をしてみたいですね」
三人の長閑な声が消えていく。
え……、うそ、でしょう……?
力の奔流は、三人の姿が見えなくなると同時、ぴたりとおさまった。
ドリーム空間に虚しく響くのは、私の声だけ。
三人は、私を倒すことなく、元の世界へと帰ってしまった。
……帰っちゃった。
嘘でしょーーーー!?
うわぁん、せっかくのエイプリルフールだったのにぃーーー!!
もっと遊びたかったのに、今日はここまでですっ!
むーーー! 来年こそは、来年こそはもっと派手に遊んでやるんだから!
というわけで今年は解散!
2022年魔法少女エイプリル企画でした!