魔法少女エイプリル【開幕】
ハッと気がつくと、知らない異世界だった―――ってよくあるよね?
「……あるんですか?」
「ないよ!?」
「ないです」
三者三様の答えが返ってくる。
はいはーい、皆さん仲がよろしいようで何よりだ!
「ええと……」
つぶやきながら落ち着いた様子で周りを見渡すのは春川美嘉ちゃん。特技バレエ。
「いや待って、仲がいいも何も私たち初対面だよ!?」
そう言って元気にお返事したのは笠江智華ちゃん。特技はアクセサリー作り。
「そもそもここどこなんですか」
不安そうにしながらもこっちを見てくるのが鈴宮涼夏ちゃん。特技は首なし。
「……え?」
「首なし!?」
「へっ!? 違います!!」
いやいや、違わなくなーい? 三人の自己紹介するとこんな感じではー?
「自己紹介、ですか」
「確かに特技だけど……」
「特技じゃないですよ!?」
涼夏ちゃんがあわあわ慌てて否定するけど、ま、この世界では特技ってことで!
納得いかないらしい涼夏ちゃんはなんか言いたげだけど、いいのかなー?
三人共、元の世界に帰りたくないのかなー?
「っ、ロイクさん」
「いや、帰るし!!」
「私も……!」
三者三様の反応をありがとー。
とはいえ。
「あの、ここ、どこなんですか……?」
美嘉ちゃん、よく聞いてくれました!
ここはエイプリルフールの日にだけ開かれるドリーム空間!
通称・神のまにまに! 今命名! 多分去年までは違ったかもしんない!
「よく分かんないんだけどさ、そもそも誰」
智華ちゃん、君のいいたいこともごもっとも。
私は神様から使わされた、超キュートなマスコットだったり神使だったり使い魔だったりなアレだよ!
「それで、私たちは何のためにここに来たんですか?」
涼夏ちゃん、冷静〜。さすが死線をくぐった猛者は違うね!
何をすればいいかは超明確! 超簡単! 超眼福!
さぁ、異世界転移系ヒロイン諸君!
魔法少女になって、愛する人を救うんだ!
「え?」
「は?」
「魔法少女……?」
これが魔法少女の変身アイテムだよ!
「指輪……?」
「これ私の魔宝石じゃん!?」
「えぇと……?」
ちっ、ちっ、ちっ。
智華ちゃん、これは君の世界で君が作るアクセサリーに似てるけど、これはれっきとした変身アイテムだ!
美嘉ちゃんが指輪。
智華ちゃんがペンダント。
涼夏ちゃんがプレスレット。
さぁこれを使って変身するのです!