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ゆきのせい

作者: 夏目はるの
掲載日:2021/12/12

外は雪が降っていた。


そうか、もう冬なのか。なんて当たり前の事を再確認して、窓の外に目を向ける。


「寒いなあ。」


一人で雪が降り積もる様子を眺めていたら、不意に寂しくなって気付けばスマホを開いていた。

3コール目で、電話がつながる。


「もしもし。」

「・・・奈々さん?」

「そう。・・・寝てた?」

「ううん、起きてた。珍しいね、こんな時間に。」


ふふっ、と電話の奥で彼が笑う。

いつものように目を細めて優しく笑っているんだろうな、と容易に想像がついた。


「それならよかった。・・・いまね、雪が降ってきたの。」

「雪?まだこっちは全然そんな気配ないなあ。」

「そっか。」


その言葉に彼との物理的な距離の遠さを再確認して、胸が悲しみで埋まる。

そのまま黙り込んでしまえば、ねえ、と彼が心配そうに呼びかける。


「奈々さん、元気ない?」

「・・・そんなことない。」

「嘘だ。」

「嘘じゃないよ。」

「電話なんて滅多にしてこないくせに。」

「・・・それは。」


拗ねたようにそう言う彼に何も返せなくて口ごもる。


だって、だって、それは。



「・・・声を聴いたら、会いたくなっちゃう。」


電話越しに彼が息をのむのが分かった。

ああ、駄目だ。こんなこと言うつもりは無かったのに。頑張っている彼に弱音なんて吐きたくないのに。

こんな事を言っても彼を困らせてしまうだけだ、分かっているのに気持ちと体は連動しない。


・・・ねえ。


「寂しいよ。」


言葉にしたら涙がこぼれた。そのままとどまる事を知らずに、頬へと伝う。


「奈々さん。」

「っ・・・」

「ねえ奈々さん、泣かないで。」


電話越しに聞こえる彼の声は震えていた。

きっと、きっと、彼も泣きそうな顔をしているのだろう。


「奈々さん。」

「・・・なに?」

「もっと雪が降ったら、一緒に雪だるまを作ろう。」

「・・・うん。」

「あと、かまくらも作ろう。」

「うん。」

「中でお餅を焼いて、一緒に食べよう。」

「分かった。」


彼はそこでいったん息を吸う。



「だから、だからそれまで。・・・僕のこと、待ってて。」


語尾が震えて今にも消えてしまいそうな彼の言葉。

けど、今の私には十分で。


「・・・うん、うん。待ってる。」


そう返事をすればまた涙が溢れたけれど、辺り一面を真っ白に染めていた雪が、全てを許してくれるような気がした。

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