ゆきのせい
外は雪が降っていた。
そうか、もう冬なのか。なんて当たり前の事を再確認して、窓の外に目を向ける。
「寒いなあ。」
一人で雪が降り積もる様子を眺めていたら、不意に寂しくなって気付けばスマホを開いていた。
3コール目で、電話がつながる。
「もしもし。」
「・・・奈々さん?」
「そう。・・・寝てた?」
「ううん、起きてた。珍しいね、こんな時間に。」
ふふっ、と電話の奥で彼が笑う。
いつものように目を細めて優しく笑っているんだろうな、と容易に想像がついた。
「それならよかった。・・・いまね、雪が降ってきたの。」
「雪?まだこっちは全然そんな気配ないなあ。」
「そっか。」
その言葉に彼との物理的な距離の遠さを再確認して、胸が悲しみで埋まる。
そのまま黙り込んでしまえば、ねえ、と彼が心配そうに呼びかける。
「奈々さん、元気ない?」
「・・・そんなことない。」
「嘘だ。」
「嘘じゃないよ。」
「電話なんて滅多にしてこないくせに。」
「・・・それは。」
拗ねたようにそう言う彼に何も返せなくて口ごもる。
だって、だって、それは。
「・・・声を聴いたら、会いたくなっちゃう。」
電話越しに彼が息をのむのが分かった。
ああ、駄目だ。こんなこと言うつもりは無かったのに。頑張っている彼に弱音なんて吐きたくないのに。
こんな事を言っても彼を困らせてしまうだけだ、分かっているのに気持ちと体は連動しない。
・・・ねえ。
「寂しいよ。」
言葉にしたら涙がこぼれた。そのままとどまる事を知らずに、頬へと伝う。
「奈々さん。」
「っ・・・」
「ねえ奈々さん、泣かないで。」
電話越しに聞こえる彼の声は震えていた。
きっと、きっと、彼も泣きそうな顔をしているのだろう。
「奈々さん。」
「・・・なに?」
「もっと雪が降ったら、一緒に雪だるまを作ろう。」
「・・・うん。」
「あと、かまくらも作ろう。」
「うん。」
「中でお餅を焼いて、一緒に食べよう。」
「分かった。」
彼はそこでいったん息を吸う。
「だから、だからそれまで。・・・僕のこと、待ってて。」
語尾が震えて今にも消えてしまいそうな彼の言葉。
けど、今の私には十分で。
「・・・うん、うん。待ってる。」
そう返事をすればまた涙が溢れたけれど、辺り一面を真っ白に染めていた雪が、全てを許してくれるような気がした。




