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シャーリー  作者: カメレオン
第一章
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シャーリーと写真と少年③

「視察ですか?」 

 シャーリーが久留和美野里少佐の護衛についてはや二日。久留和少佐の元に新兵器開発工場の視察依頼が来た。

 「あぁ私も行きたいのだが生憎予定が詰まっていてね。二日後には行くから先に現地入りして見ておいて欲しいんだ。」

 「それ…私も二日後に行けば良いだけの話じゃないです?そっちの方が先方に迷惑かかりませんし」

 前線から遠く離れた北海道でも時折暗殺の話は届く。そのため将校含む士官は極力一か所に集まるか複数グループになって移動するのが望ましいとされている。

 とはいえ実際は忙しい軍人にとっては重要だが守られない話になっている。

 「まぁそう言わずに頼むよ。既に向こうには話をつけてある。色々不愉快だとは思うが頑張り給え。」

 少佐の返事を聞くことなくオンライン会議は打ち切られた。

 (わかってるなら一々言うんじゃねぇよハゲ!)

 「少佐、何か?」

 シャーリーは冷たさを感じさせる声で聞く。この二人の相性は悪いままだ。



 「タイラントですか?」

 「あぁ。今現在戦場はアンドロイドと人間の混成部隊を中心とした機動力を中心とした局地戦がほとんどだ。千葉含む前線はそれなりにドンパチやってるが向こうさんは大型兵器をあまり多用しない。だからこそ今のうちに一撃で潰せる玩具が欲しいんだとさ」

 (随分機嫌が悪そうだな)

 シャーリーは思った。話を聞いてからの少佐はどこか機嫌が悪い。シャーリーが来た当初も機嫌が悪かったがここまでの機嫌の悪さは初めてだった。

 「何かご心配なことでも?」

 相手の機嫌を訪ねる意味で聞いた言葉だった。

 「別に何でもない」

 ぶっきらぼうに返された。どうやら未だにシャーリーは信頼されてないらしい。シャーリーはその事実に無いはずの頭痛の種を感じた。


 

場所は流れ帝がいる御所近くの基地から30キロは離れた平野。そこでは自由派にとって主力となっているアンドロイドが小隊を組んで訓練をしていた。よく見ると後方で指揮官らしき人間達がコンピューターを弄っている。

「少佐、あれは?」

「あぁ。新しい部隊の運用方法だとさ。どういう訳か物資で勝るこっちが押されている状況を踏まえて向こうさんと同じスピードで動ける部隊が欲しいんだとさ」

現在前線は合理派の方が優勢となっている。物資含む数では自由派の方が圧倒的に有利だ。だが何故か人間も混じっている歩兵部隊がアンドロイドと同様の動きをする。しかも乱れずに。

この相手の能力の厄介さを踏まえて対抗できる部隊が求められたらしい。

「タイラントが完成すれば必要ないのでは?」

「完成しても使えるかどうかは別問題だろ。堅実な保険が欲しいのさ。あとは玩具自体がパフォーマンスのための武器ってことだろ」

(嫌な話)

こないだまで人間達と一緒に戦ってきたシャーリーにとっては少佐含む腹芸をする人間がこの二日間でどうにも好きになれなかった。自分たちが政治に利用されるのが今はたまらなくムカついた。

シャーリーは無意識に拳を握りしめていた。

「はぁ」

少佐はそれを見てため息をついた。



「これはこれは!ようこそおいでくださいました!」

目の前で久留和少佐を歓迎するのは新兵器開発部門の責任者だ。腹と顔にたっぷりと脂をのせている。

 「御託はいい。早く新兵器開発の方を見せてもらおうか」

 だが少佐はそんなおべっかには耳を貸さず先を促す。その様子を見てシャーリーは少しほっとした気持ちになった。

 「それではお見せしましょう!ささこちらに」

 そう言って案内されたのは大きな格納庫だった。飛行機すら入りそうだ。

 「こちらが新兵器のタイラントこと六門主砲戦車タイラントでございます!」

 それは戦車ではなく陸上母艦とでも言うべき見た目だった。

 「前方に主砲二門に加えアンドロイドを一掃するためのマシンガンを下部に四丁つけてあります。当然装甲も分厚いため並大抵の戦車、アンドロイドでは傷一つつけることは難しいでしょう!そして左右にはそれぞれ各一門ずつ主砲を付けております。そして後方には前門と同様の装備が」

 「説明中悪いが誰がこれを動かすんだ?」

少佐の疑問は尤もだった。これだけの武器になると当然ながら動かすのに大量の人出がいる。加えて重量もそれなりだ。燃料はおろか走らせる道路も不安になる。

 「ご心配なく!というよりもここからが私共のセールスポイントになります!なんとタイラントは全て自動操縦になっています!玉詰め、照準、移動全てにおいて他と並ぶところのない精度でこなします!ただまぁ燃料と馬力の問題がありますがね」

 (ほら見たことか。こんな兵器使えるわけがない)

 シャーリーは言葉には出さなかったが内心そう思っていた。現在の戦場はスピード勝負だ。機動力がものを言う。ただでさえ兵の練度が劣る現在、この大型戦車はあまりにも鈍重すぎる。敵と味方が入り混じる戦場では使えない。

 「そうか。欠点を直して一日も早く戦場に出してほしい。これはその手助けに使ってくれ」

 (えっ)

 シャーリーは信じられないものを見た。それは賄賂だった。


 

 「少佐どういうことですか?」

 シャーリーは帰りの車のなか少佐を問い詰めた。シャーリーの主義信条が賄賂を許せなかったのも理由の一つだがそれ以上にこういったことに手を染めている人間だとは思わなかったのだ。

 「なに、心付けってやつだよ」

 悪びれることなく言った。

 「あれが使い物になると思ってるんですか?」

 「無理だろうなぁ直ぐ履帯が爆破されて終わるだろう」

 「わかっておいて」

 「わかっておいて何故ってか」

 少佐が先回りしてシャーリーに対して答える。

 「それが私達の戦場なんだよ」

 (聞きたくない)

 「お前たち前線部隊には前線部隊の、私達後方部隊には後方部隊のそれぞれの戦場がある」

 (なにが戦場だ。命を懸けてもないのに)

 「お前たちが一発ぶっぱなす弾を調達するには市場価格じゃたりないのさ」

 (なんでこんなもののために)

 「お前もそういう汚い金で作られてるんだよ。シャーリー」

 (私たちは使われなきゃいけないんだ。)

 シャーリーの言葉は口に出ない。目は射殺さんばかりに少佐を捉えて離さない。だけどその言葉はシャーリーの頭の中に貯まるだけだった。

 どこか心の中で気付いているのだろう。それが必要なことだと。でもシャーリーにとっては気持ちの悪い事だった。

 「私はあなた達が嫌いです」

 やっとのことで出た言葉は本来の思いを十分の一も表現できない言葉だった。

 「知ってるよそんなこと」

ぽつりと出た少佐の言葉はシャーリーに届かなかった。


前回あと二話ほどで過去編が終わると言いましたがあれは嘘です。今回から数えてあと二話です。ごめんなさい。


 ちなみにどうでもいい話ですが少佐に玩具と揶揄されたタイラント完全自動がウリですが実はアンドロイドが搭乗員をしています。タイラントで突っ込んでアンドロイドがわらわらと蟻のように攻めるのがコンセプトの兵器でした。

 …え?書いてて無茶があると思わないかって?そこはほらファンタジー系としてひとつ許してくれると嬉しいなって思います。てか許してください。

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