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シャーリー  作者: カメレオン
第一章
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シャーリーと写真と少年②

「護衛用アンドロイド?」

 それは今とは違う夏の日だった。前線に居たシャーリーは突如後方の基地に送られることになった。理由は不明だ。ただ突如目の前にいる不機嫌そうな人間を守れと言われた。恐らく軍事的な理由があるのだろう。

 「あぁ、最近スナイパーによる指揮官の死亡率が高いだろう?だから前線で指揮を執るもの、身分が相当に高い人間には護衛用のアンドロイドを付ける話になってね。」

 アンドロイドのスナイパーは優秀だ。最近はスナイプ専用の超長距離型狙撃兵器も出てきている。街や基地周辺には対アンドロイド用ドローンが飛び回っているがそれでも被害は相応に大きい。

 「じゃあ聞くが何故?前線からの払い下げ兵器を持ってきた?新たに護衛用アンドロイドを作れば済む話だろう」

 シャーリーは前線で戦っていた。時には白兵戦、時にはスナイプ、時にはアサルトライフルを持って切り込み隊長をした。その度に体を弄られ、直され、そしてまた前線に行った。殺し、壊した敵の数は膨大な物になっていた。

 「決まってる、君は少佐だ。確かに優秀だし地位も高いがアンドロイドを作り直すほどじゃない」

 「ストレートに言うなぁ!くそ爺!」

 そう言って少佐とくそ爺と呼ばれた将軍は殴り合いの喧嘩を始めた。将軍付のアンドロイドが止めないということはそういうことなんだろう。

 「あなたはこの任務をやり遂げることは出来ますか?」

 突如将軍付のアンドロイドがシャーリーに向かって話しかけてきた。

 「今まで前線にいたあなたがこの比較的平和な後方で任務を果たせますか?護衛は人形には務まりませんよ」

 いきなりおかしなことを言われたシャーリーは固まった。今まで目の前の物を壊し、殺すことが仕事だった彼女に何かを守るということは初めてだったからだ。

 勿論任務である以上仕事はきっちりこなすつもりだった。だけど彼女には人形以外の生き方が分からなかった。

 「やります。」

 でも逃げることは許されなかった。逃げることを彼女が今まで殺してきた者達が許さなかった。シャーリーは自分の感情を出さずにそう答えた。

 「お前の名前は?」

 少佐が聞いてくる。喧嘩は勝ったのか将軍は床に突っ伏している。

 「F―3020型アンドロイド、コードネームはS12です」

 「じゃあシャーリーな」

 「は?」

 こいつは何を言っているのだろうとシャーリーは思った。人の話を聞いているのだろうかとも。

 「S12なんて名前はここでは捨てな。ここは前線じゃない。今からお前の名前はシャーリーだ。」

 「ちなみに由来は?」

 「こないだ見た映画のキャラ」

 (最悪だ)

 シャーリーはこれから来る苦痛な護衛任務に明日を嘆いた。これがシャーリーと久留和美野里少佐との出会いである


 

 「お前前線に居たんだって?」

 護衛任務の引継ぎを受けた後シャーリーと少佐は個室で待機していた。待機と言っても少佐には仕事が山ほどある。備品の確認から決算まで最終チェックをしなければならない書類は腐るほどだ。

 シャーリーに話しかけたのはそんな苦痛から解放されたい思いもあったのだろう。

 「はい。千葉の方で防衛線の方を構築していました」

 「向こうはどうなってる」

 そう問われてシャーリーは思い出した。東京から始まったあの戦争。日本を含む各地で勃発している戦争は従来の戦争と違った様相を醸し出していた。

 「前線では東京から吐き出される新型の兵器と合理派の人間たちが毎日攻撃を仕掛けてきます。物資ではこちらの方に利がありますが正直有利とは感じられません」

 前線では合理派と呼ばれるアンドロイド達が同じ思想を持つ人間と共に攻撃を仕掛けてくる。向こうの指揮権を握っているのはアンドロイドでその指揮、隊の行動に無駄はない。一つの生き物のように集団が襲い掛かってくるため人間が指揮官のシャーリー達自由派はどうしても一手遅れる。

 加えて向こうには新兵器を開発できるだけの頭のいい頭脳がある。物資も少しずつ奪われているのが現状だった。

 「そう。どうだ北海道は?帝もいるし活気があるだろ?」

 日本では東京を中心に起きたこのクーデターは合理派という人間たちが起こした戦争だ。シャーリーが作られる前、AIがこのままでは人間は滅亡するとの試算を出した。主な理由は圧倒的な食糧不足だ。そこでAIは人間の頭数を管理することを主張した。犬や猫と同じように。

 それに賛同したのが合理派と呼ばれる人間達であり東京で爆破テロを仕掛けた人間達でもある。

 彼らに対抗するために時の政権は彼らに対し掃討戦を仕掛けることを決めた。帝はその時に前線から遠い北海道に移られることになる。

 「そうですね。正直よくわかりません。銃声も聞こえてきませんし。子供が街を歩いてるのを見ると不安になります」

 シャーリーは素直に答えた。シャーリーの答えは戦争が始まって一年間戦い続けた者のセリフだった。

 「っお前つまんねぇな!」

 いきなり少佐は舌打ちと共にそう吐き捨てた。

 「今時アンドロイドでも娯楽のひとつやふたつ知ってるだろ!?普通前線から離れたら飲みに行ったり!風俗行ったり!美味い物食べたりって考えないか!?」

 (何を言ってんだコイツ?)

 それがシャーリーの素直な感想だった。シャーリーはアンドロイドだ。男を抱くこともなければ、アルコールに溺れる必要性もない。愛玩用アンドロイドにはそういった機能もついてるが少なくともシャーリーにはない。

 「あなたが何を言いたいかさっぱり理解出来ませんが少なくとも今の自分には必要ありません。」

 シャーリーのその答えに少佐は心底絶望した顔だった。

 「はぁ~こんな堅物が今後護衛につくかと思うと肩がこるね」

 「少佐は少し平和ボケしてるかと」

 その返答に少佐はますます顔を歪ませた。二人の相性は最悪だった。



 それはシャーリーが基地に来てすぐのことだった。久留和少佐はシャーリーの護衛任務着任後将軍から資料を手渡された。

 (撃墜数人間234、人型アンドロイド300以上詳しい数字は不明、戦車20台か。化け物だな)

 それはシャーリーのスコアブックだった。シャーリーは戦争直後に作られた機体であり今後変化する戦場に備えてパーツ変換が容易に行える機体になっていた。

 加えて度重なる帰還によりシャーリーの学習機能は従来のアンドロイドとは違った進化を遂げていた。

 (度重なるパーツ換装、出撃により心理機能に大幅なダメージが見受けられるか。)

 AIと人間が起こした戦争の反省を踏まえ自由派の人間はあえてアンドロイド含むロボットに心理機能をつけた。普通の人間同様痛い、悲しい、辛いなどの負の感情を抱けるように。同情心を判断に組み込むことにより合理的すぎる判断をなくすために実施されたものだ。もっとも使いにくさの観点から実装されているのはごく少数だ。

 (このままだと壊れる可能性があるから私に預けたってとこか。私は託児所でも精神科医でもないんだがねぇ)

 久留和美野里32歳はこれからの苦労にため息をついた。


後二話ほど過去編が続く予定です…多分

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