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シャーリー  作者: カメレオン
サブエピソード
42/47

S12後編⑧

すいません。また時間が…本当にあと少しなので…(土下座)

「さてと、ちまちま探している時間もないし急ぐとしますか」

現在部隊が戦っている位置は片方の出入り口側、あとはあちこち移動してる愛すべきイカれ野郎ども。

 それを追いかけるように敵部隊が交戦中。逃げようとしている兵士はもう片方の出入り口にってことか。それでもあまり数が減ってないことを考えるに逃げた兵士は少ないみたい。思ったより忠誠心があるのかな。

 出入り口を固めてる部隊もそこまで練度が高くないから今は敵はそっちに集中してるってことか。探るならそっちだな。

 建物を出て周囲を探索する。幸いにもデカブツはいない。何体かアンドロイドがいるから首をねじ切って捨てておく。ちょっと方向があるように捨てておけばデカブツの誘導も出来ると思う。

 出入り口に向かうと味方部隊の方に敵が集中している。奮戦してるけど大分敵が集まってる。これを崩すのは厳しいものがあるな。

 味方には悪いけど援軍は少し待ってもらおう。敵はさっきと同じように人間が後方でアンドロイドが前を守るポジションだ。今私が後ろから襲ったとしても倒せるのは良いとこ五人。グレイブの皆ならその瞬間になだれ込んできて泥沼に出来るけどこの面子では恐らく無理だろう。

 攻撃に加わってない部隊がいる。恐らく負傷者の救助係だろう。あいつらにするか。

 近くの石を掴み相手の頭部めがけて投げる。これで一人。

 「敵襲だ!」

 部隊中から数人移動してくる。アンドロイドは動かさない。やっぱり素人だ。こんな時は固まって攻撃方向を確認するのが先でしょうに。

 「ごめんね」

 敵部隊から抜けてきた数人を殴り飛ばす。一人を除いて全員ナイフで喉を裂く。これでOK。一人を肩に担ぐ。意識は失ってるから問題なく担げる。

 私は速やかにその場を離れた。なにやら味方部隊の方で「敵の隊列が乱れたぞ!」って声が上がったけど正直申し訳ない。後で助けに行くことを誓いその場を離れた。



 「おい起きろ!」

 捕まえた捕虜を殴る。水でもぶっかけるのがいいのだろうがそんなものは今はない。口に布を突っ込んで喋れないようにしてから殴る。直に口の水分が乾いて目を覚ます。

 「むがっ!むがっ!」

 「少し黙ろうか?」

 追加で二発ほど殴る。こういう時は主導権を与えないことが大事。

 「ボッ、ガッ」

 「早く黙らないとその口に入ってる布が水分を含んで呼吸するのも辛くなる。黙ってくれるならとりあえず殴るのはやめてあげるけど?」

 相手の目に恐怖が浮かび始める。これでいい。次第にゆっくりと頭を縦に振る捕虜。目には恐怖と相手の話を聞く余裕が読み取れた。

 「単刀直入に聞くね?君たちの武器庫ってどこにあるの?」

 私の言葉に捕虜は目を見開く。こりゃ駄目だ。喋る気がない。だから追加で三発ほど殴る。

 「君ねぇ立場分かってる?捕虜だよ捕虜?本当なら君のお仲間みたいに喉真っ二つに裂かれて死んでるの?私の温情で生かされていることに感謝とかしない?」

 まあこの状況で感謝しても気持ち悪いけどこれぐらい言っても良いだろう。瞳に映る恐怖が大きくなった。仲間が死んだと聞いて現実が分かり始めたかな?

 「ムガっ!ムガッ!」

 「だから勝手に喋るなって言ってるよね?頭使えよ?」

 そろそろ殴ることにも飽きたからいい加減喋って欲しい。でないとこっちの手が疲れる。

 「大切な友人だったの?そう、でもね君が喋らないともっと沢山のお友達が死ぬよ?だから喋ろうか?もし喋ってくれないならもう一人連れてくるよ。そこで君のお友達がどんな風に死んだのか見してあげる。それがお望み?」

 私の言葉を聞き悪魔を見るような顔で私を見る捕虜。これだけ脅せば十分だろう。

 「さぁ教えて武器庫はどこ?」



 あのあと真摯な協力によって得られた情報によれば武器庫は大きな物が二つ。あと各隊舎に基本装備が置かれているらしい。私が見たときはなかったけど多分持ち出し済みだったのだろう。

 一つは生きている見張り塔の傍に。一つは車庫を兼ねているらしい。おおよその場所も把握出来た。まずは爆発物からいただく。

 だが当然事態というのはそう上手には進まない。車庫側には屈強なアンドロイドが二体。護衛として立っていた。間違いなく数が少ない逸品もの。あれを相手にするのにアサルトライフルとナイフだけでは不安だな。

 「どうする?自殺覚悟で特攻?それもなぁ」

 侵入経路を考えている最中それは来た。突如前に影が落ちた。私は前に転げるように飛んだ。

 「ちっ!気づいたか!」

 「テメェかデカブツ!」

 後ろに現れたのはさっきのデカブツだった。体に傷が増えている。恐らくうちの部隊が追い回したんだろう。こいつに顔なんてものはないがどこか疲弊しているような顔に見える。

 「あとで相手をしてくれると聞いたからなぁ?」

 「お生憎様!こっちも予定が詰まっててね」

 「まぁそう言うな。こっちはさっきまでむさ苦しい頭のおかしな男どもに追いかけまわされたのだ」

 あぁ。やっぱりご愁傷様です。

 「それで今度は私ってわけ?」

 「まぁな。それにお前らがここを狙うのは目に見えていたしな」

 後ろにはアンドロイド二体、目の前には黒いデカブツが一体。やりあえなくはないが火力が足りない。アサルトライフルしか手元にないのでは話にならない。向こうのアンドロイドはご丁寧に腕と銃が一体化してるし。ナイフじゃ折れるだろうしやっぱりこれでやりあうしかないかぁ。

 「それで?どうする?ダンスでも踊る?」

 私はアサルトライフルとナイフを構えながらゆっくりと移動する。当然向こうも気づいているからそれに合わせて動きを取ってくる。

 「それは魅力的な提案だ。じゃあ早速踊ってもらおうか?」

 敵の照準が私に合わさる。瞬間白い模様が広がった。

 「タップダンスは趣味じゃないんでね!」

 安全領域に飛び込み発砲する。第二ラウンドが始まった。



 しかし安全領域が狭い。白い模様もいつもより数段小さく映る。かといってそれ以外のb所は銃弾の雨嵐。点ではない面攻撃。全くもっていやらしい。

 「チロチロ走り回るだけかっ!」

 「そんな玩具に乗ってる奴が人を馬鹿にするんじゃねぇよ!」

 敵の一斉放射を避けるが息をつく暇すらない。アンドロイドじゃなければ三回は死んでる。

 パッと見る限りアンドロイド連中の武装は胸部装甲に入ってる使い捨てのランチャーとアサルトライフル。てか火薬置いてあるところに爆発系の武器を置くのはいかがなものか。

 でも単純な強さで言えばデカブツより強い。アサルトライフルだけで十分に私を追い込んでる。正直こいつらがデカブツを操縦する方がよっぽどましだ。

 「くそ!何故当たらん!」

 「下手くそだからだろう」

 いくらバカみたいな武装積んででも操縦士がお粗末なら宝の持ち腐れ。現に撃ってすぐ足を止めるから当てやすい。倒せないけど。

 「ちっ!お前らランチャーを使え!」

 「…はぁ?」

 「却下します」

 「何故だ!」

 いやそりゃそうだろ。なんでこんなところで危険物ぶっ放すんだよ。薬でもかましてんのかこいつ。しかし却下できるってことは相当高度なAIかそれとも心理機能を積んでるのかね。そりゃ強いはずだ。

 「個人的には撃ってくれた方が嬉しいんだけど?」

 「あなたの願いを叶えるほど優しくはないので」

 「そりゃ失礼しました!」

 敵の攻撃をかいくぐりアサルトライフルを撃つ。当たる。でも削り切れない。そりゃランチャー積んでるんだ。重量なかったらやってられないよね。

 武器庫まであと40メートルもない。だけどその距離がもどかしい。あと少しなのに。

 こういうときあの人ならどうするだろう。S2姉さん。理不尽で滅多に帰ってこなくてそれで乱暴者のあの姉ならどうやって倒す?

 あの人は強かった。まず素体の出力が私より数段高い。だからどんな無茶な動きでも出来る。そこは仕方がない。ないものねだりだ。でもそれ以上に止まらない。敵が銃弾を放つ前に動く。敵より早く撃つ。そんな当たり前のことをこなしてるだけで私よりも強かった。

 (結局ね戦争って事前の準備なのよ)

 S4姉さんも強かった。一度手合わせして貰ったけどこっちが撃つ前に撃たれた。撃とうとも思えなかった。

 (意識にムラがあるよ。まずは集中、次に観察、そして実行。戦争に限らず全ての戦闘行為はこれだよ。よく考えて、よく見て、そして見えたものを殴る。中には手順省略してる化物もいるけど。)

 S4姉さんは戦闘中に観察は難しいから本当は戦闘前の情報収集が大事って言ってた。確かにこれは難しいや。

 (いい妹?私たちは元々考えることに特化してる。だから人より先に最適解が分かるし、なにより感じる。でもね感じるじゃ駄目なんだ。ちゃんと相手の動きを見て操る。目的のために結果を操作する。それが人間より高度に出来るから私たちはSシリーズなんだよ)

 今私が求めている結果は何だっけ。こいつらを倒すこと?違う。武器庫に侵入すること。相手は三体。出来ないわけがない。

 「私だけ失敗作で終わるわけにはいかないよね!」

 覚悟は決まった。あとはやるだけだ。



 まずは敵の位置だ。一旦白い模様を頭から外す。これの後を追いかけることだけを考えてたらいつまでたっても勝てない。

 「敵の形はトライアングル。私を囲むようにして動いてる。恐らくはデカブツにアンドロイドが合わせてる」

 私は小さく声に出しながら動く。こっちの方が頭が回る。

 「デカブツを乱したところでアンドロイド二体が囲んでくる」

 デカブツに発砲した隙を狙ってアンドロイドが襲ってくる。もっと早く。あの人みたいに早く。

 「なら乱すべきはアンドロイド。でも高度な連携で乱すのは難しい」

 敵の身体能力は高い。ランチャーを撃てるだけの強靭な素体。それに合わせた陸上での戦闘能力。そして多分相手は繋がってる。二体の間にネットワークがあるのだろう。それが身体能力の効果を何倍にもしている。

 「なら一体倒せば穴が開く!」

 やることは決まった。あとはルート算出。距離感は抜群。このまま走ってもつかず離れずで潰される。なら潰しやすいほうから潰す。

 「なにをごちゃごちゃと!」

 デカブツのショットガン。威力は大きく地面が抉れる。

 「失礼!そろそろ魔法が解けそうでね!」

 あいつは馬鹿だ。馬鹿で弱い。だから一々止まる。止まったところに銃を撃つ。するとまた動きが止まる。本隊が撃たれているように感じるのだろう。

 「あげるよ。ガラスの靴だ」

 だからこそつけ入る隙がある。

 脚部に張り付き車輪に対してナイフを刺す。人間の力なら刺さらなくてもアンドロイドの力なら十分に刺さる。でも足りない。だからナイフを抜いて出来た穴に銃弾を放つ。

 「これで脚一本!」

 「なめるな!車輪がやられても走れるわ!」

 確かに脚は無事だし恐らく車輪は補助装置かなにかだろう。恐らく車輪がなくても走れるような作りになってるはずだ。でもその動きはガタガタだ。

 アンドロイド達もデカブツの動きが不規則になったことで連携が取りずらくなったのだろう。動きが乱れた。

 一瞬乱れれば十分だ。アサルトライフルをフルオートに切り替えアンドロイド一体に集中砲火。勿論動きは止めない。

 「悪いね一人貰うよ」

アンドロイドの片方の頭部を掴みねじ切る。頭部は基本的に動作の制御とカメラの役割を担っていることが多い。これで十分だ。

 予想通りアンドロイドは無茶苦茶に弾をばらまき始めた。

 「落ち着け!今私のカメラを繋ぐ!」

 ネットワークを通じて無理やり視覚情報を送信しようとしてるのだろう。でももう遅い。胸の射出口が開いた。あれ六発入ってたんだ。

 そして今その六発が一斉に発射された。

 「あっやばい!」

 ランチャーの一発が武器庫の車にぶつかった。現代ではガソリン車も電気自動車も両方活躍してる。特にこういう軍事施設ではガソリン車が愛用されている。発展途上国などではまだまだガソリン車が主流だからだ。

 そして今ぶつかったのはガソリン車。なにが起きるのかは大体予想がついた。

 すぐさま体を低くするが生き延びれるかは運次第だった。

 直ぐに音と爆風が私の体を覆った。



 「郷田さん…あれ」

 「言うな。大体想像つくだろ。派手にやれとは言ったがあそこまでとは言ってねえよ」

 そのとき千葉前線キャンプで全ての戦闘行動が止まった。その爆発音は大気を震わし全ての人間の鼓膜にダメージを与えた。

 そして爆発起きた地点では巨大な火柱が上がっていた。

 「とりあえず…被害状況は?」

 「耳抑えている奴もいますが外傷はありません!」

 「よし!今から爆発地点に移動する。恐らくうちのやつもいるはずだ!すぐに戦闘が出来るように死体から武器を盗むことを忘れるな!」

 命令を受けて壊滅させた敵部隊から武器を盗むグレイブの隊員。こういう時の行動は早かった。

 「そろそろケリがつくころかね?」

 郷田たちは武器を整え火柱の方向に向かって行軍した。



 「うわっカメラ割れてる。情報が半分も入ってこない」

 どうにか爆発からは生き延びたものの顔についてるカメラが半分割れた。人間に直すと片目が潰れたようなものだ。服も爆発の破片でボロボロになってる。

 耳は大丈夫。問題なく聞こえる。手足も動く。少し操作性が落ちた気もするがこれくらいなら問題なかった。

 白い模様が見えなくなってるのが怖いけど大丈夫。まだ戦える。

 とりあえず状況を確認する。黒いデカブツは何故か反応がない。恐らくまだ動けるはずだがパイロットに問題があったのだろうか。

 アンドロイド達は飛ばされていた。腕があらぬ方向に曲がり体はおかしな方向を向いている。あれでは戦えないだろう。

 そして目の前。炎は轟轟とうねり小さな爆発がまだ起きている。うん。正直ここまでする気はなかった。

 どちらにしろまずは武器だ。武器がないと話にならない。手元に置いてたアサルトライフルは遥か彼方に飛んだのか見当たらない。ナイフは車輪に刺したとき捨てたからあるはずがなかった。

 「とりあえず逃げるか」

 デカブツの反応はないがこのままだと他の兵士が集まってくることは間違いなかった。耳を澄ませると交戦音が減少していた。恐らくこの爆発で一時的な休戦をしたのかそれともうちの部隊が優勢なのかどちらかだ。

 少し重くなった体を動かす。恐らく無茶な動きをすれば確実に脚部が取れるだろうが通常通りの走りであれば問題ない。

 私は他の兵士に見つからないようにその場を後にした。



 見張り塔傍武器庫地下室にて一人の男が暴れていた。

 「あの女!よりにもよって武器庫を爆発させるとは!」

 武器庫には爆発物は勿論のことマシンガン、スナイパーライフルなどの専門兵の武器も多数収納してあった。車に乗せやすいとの理由で一緒に置いた結果がこれである。正直S12は関係なかった。

 「ガーデックは起動できるがこのままやりあってもなにをされるかわからん!」

 そう言うなり男は操縦席を降りて一つの機械に近づく。

 「そちらを起動させるのですか?」

 護衛の部下が尋ねる。

 「あぁ。インカムの報告が減ってきている。恐らく兵の大部分がやられた。武器庫も潰された。このままやりあっても負けるからな」

 「撤退という選択肢は?」

 「馬鹿かお前?街に火を点けるわ、車に捕虜くくりつけるわ、武器庫に爆発物送り込むわ、そんな連中が逃がしてくれるわけないだろう。ここまで来たら単純だ。殺すか、殺されるかどちらかだけだ」

 男はそう言うなり機械を触り始める。機械は大きく単純な大きさだけならガーデックにも負けてはいない。

 全体の色はシルバーだ。長方形の形をしており真ん中には線が入っている。恐らくそこが開くようになっているのだろう。

 「残りの全部隊に告げる。只今からホーネットを起動する。繰り返すホーネットを起動する。ここが最終局線だ。全部隊第四見張り塔に集結せよ」

 残りの部隊から返事が返ってくる。恐らく生き残った兵は残り150程度だろうか。敵の兵力も凡そ掴めてはいたがこのままでは負ける。この男はそう感じ取っていた。

 「見てろよゴミ共。皆殺しにしてやる」

 銀色の機械箱に電源が入りゆっくりとその口を開けた。


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