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シャーリー  作者: カメレオン
サブエピソード
41/47

S12後編⑦

時間が足りません…誰か助けて…

「どうして…か」

 正直そんなものは分からない。てかこの馬鹿がそんなことで悩む理由も私には分からない。ただ、今私に理解できることはこの馬鹿が本当に死にたがっていることと、それを邪魔した私に対して怨嗟と救いが入り混じった目をしていることだ。

 私が憎くて、私を煽れば私に殺してもらえると思っている気に入らない。

 そんなふざけた要求は飲まない。飲みたくない。例えそれでこいつがどれほど苦しんでも私はそれを飲んでやらない。私が憧れたこいつ等はゲラゲラ笑って狂っていて、腕が飛ぼうが穴が開こうが酒と敵の血潮見れば戦い続けられる。そんな人間だ。それのなにがいけない。狂うことのなにがいけない。なぜ今まで生きてきた道徳に拘る。それがお前を苦しめるのならそれすらも捨てればいいのに、なのになぜそれに拘る。

 「私があんたに関わるのはあんた達に憧れたからだ。生き方も生きる意味もない私が生きようと思った場所がそこだった。私を家族として扱ってくれたあんた達が大好きだ。だから私は私の理想のためにあんたを生かす。あんたは気に食わないだろう。殺してくれと叫ぶだろう。でも殺してやらない。あんたの負の思いも殺意も苦しみも全て背負ってでもあんたを生かすよ」

 私はそう言い放って部屋を出た。正直目を見ることすらできない。今目を見たら、これ以上あの目を見たら私も狂ってしまいそうで。大好きだった隊長を殺しそうで。

 建物を漁りナイフを探す。いくつかの布をバッグに詰め込んで建物を出る。

 心は最悪。体は上々。今はただ暴れたかった。

 さぁ行こう。まだ戦ってる仲間はいる。



 敵がアンドロイドと編隊を組み戦っている。人間が後ろでアンドロイドが前。燃え盛る火はコンクリートに遮られ少し落ち着き気味。

 味方は頭がイッてるのが九人。まともだけどイキかけているのがウン十人。勢いはこっちの勝ち。兵の練度も上。でも武器と数は向こうが優勢。あの黒いデカブツは姿が見えない。多分まだ探してるんだろう。一生やってろ。

 「さて…暴れるか」

 私は走った。バッグの布を取り出して味方との間に置く。一瞬相手の動きが止まる。置いたらすぐ走る。乱戦が収まりつつある。今は場を乱すことが大事。

 敵の注意がこっちに向く。良いのかなぁ?そこにいるのは飢えた獣だよ?

 私の意図を理解した獣たちはすぐさま射撃を開始した。後のことなんて考えないフルオート。一瞬、包囲網に穴が開く。

 「もーらい!」

 私は残った布を頭上に掲げ素早く空いた穴に潜る。火の光が一瞬遮られ視界が途切れる。私以外は。そのままアサルトライフルを取り上げ発砲。

 「銃撃だ!撃て!撃ち返せ!」

 バーカ。こんなところで撃つなよ。死ぬぞ?

 なまじ綺麗に整ってると異物が入り込んだとき直ぐに崩れる。敵の銃弾は私を狙って味方を撃つ。これで歩兵も終わり。一つ道が出来た。

 その道に突っ込むイカレ野郎ども。包囲されることとか死ぬこととか考えない本能の喧嘩。生も死も倫理観もなく、ただ勝つためだけの殺し合いに対する嗅覚。本当はここに隊長もいた。

 一緒に笑って、一緒にイカレてた。それで良かった。家族の繋がりがあればそれで充分だった。でもあの人は過去に囚われてた。家族だと思ってたのは私だけだった。埼玉から帰ってきて話したいことが沢山あった。頭を撫でられて、みんなの背中を守って酒におぼれてる姿を見て笑いたかった。

 それが出来ない今がすごくもどかしい。それを悪いことにしたあいつが憎い。なによりあんな目で私に殺されることを願ったのが憎い!

 「家族にしていい目じゃねぇよ…」

 私のボヤキは誰かに届いたのか味方がピクリとしたけどなにも言わなかった。今はただ生きるだけだ。


 

 「で?なんでお前がここに居るんだ?」

 敵の包囲網を抜けたあと立て直しのために戦線を離脱。現在は建物内部で休憩していたところを部隊の人間が聞く。そういやまだ説明してなかったか。

 「埼玉でDV受けて負傷したから治療も兼ねて千葉に戻された」

 私の説明を受けてポカーンとするおじさん共。うん。私もあれはよくわからない。

 「いやでも…作戦のことは誰から聞いた」

 「キャンプに居た兵士から。そのあと指揮官のところ行って事情聞いたら訳の分からない説明するから殴っておいた」

 それを聞いて大笑いするおじさん共。やっぱりこいつらに倫理観なんてものはない。

 「ところであれはなに?」

 「あぁ隊長のことか。俺らより郷田さんの方がいいな。幼馴染だし」

 「あいつは生きてるのか?」

 郷田さんが聞いてくる。

 「生きてるけど…死んでる。死ぬことを求めている」

 「少し二人で話そうか」

 そう言って私と郷田さんは部隊を離れる。部隊の皆はちゃんと話せるように陽動に出るらしい。気軽に言ってるけど死ぬ可能性を考えないのだろうか。

 「ここいらで良いだろう。なにがあった?」

 私はさっきあったことを話す。死のうとしていた隊長をバイクで助けたこと。一瞬元気になったこと。でもやっぱり崩れたこと。あの人の過去を聞いたこと。

 「そうか…そこまで聞いたか…悪いな。辛かっただろう」

 そう言って郷田さんは私を抱きしめた。体には返り血が付いて正直あまり嬉しくなかったけどでも抵抗感は思ったよりなかった。

 なにより胸の奥にあった怒りとも殺意ともつかない憎悪が薄らぐのを感じた。

 「でもなぁ。あいつを恨まないでやって欲しいんだ。いい大人が自分を制御できないのは情けない話だがそういう大人は大勢いる。なにより…あいつは制御しようとしている。こんな腐った時代でマトモっていう夢を追いかけてる。俺たちが早めに切っていればあいつはここまで苦しまずにすんだ。だからあいつを憎まないでくれ」 

 私を抱きしめる力が強くなる。それでも…私はあの人が憎いよ郷田さん。自分の殻に閉じこもって助けを呼ばないあの人がどうしようもなく憎くて好きだよ。

 それからしばらく私はないはずの心音を重ねるように抱き合った。それは家族を知らない私にとって貴重な家族らしい行為だった。



 「さて…今はあの馬鹿よりその黒いデカブツのほうが問題だな」

 向き合って私たちはあれの対策を考える。ここの軍はハッキリ言って弱い。うちの軍の方がレベルは高い。

 だが武器は超一流だ。アサルトライフル一つとってみても威力も連射性能も格が違う。それでもあのデカブツには穴一つ開かないが。

 「爆発物のあまりは?」

 「見張り塔落とすのに使ったよ。まだ一本残ってるがそっちは大丈夫だ。射線に重ならないようにすれば怖くはない。なにより乱戦だしな」

 「例の狙撃兵ね。となると敵から盗むとか?」

 「流石になぁ。今まで散々盗んだ後だからあとどれだけ余りがあるか分らんのだよなぁ。それならまだマシンガン盗んで一ミリずつ削る方がまだ現実的というか希望があるというか」

 そのマシンガンがどこにあるか分からない現状でそんな意見を出されても。やっぱり駄目だこの人。良い人だけど根本的に馬鹿なんだ。

 「敵の操縦席どこかわかります?」

 「分かってたら落としに行く」

 「ですよねー」

 となるとあとは味方が死なないことを祈っての持久戦?駄目だ。どんなに皆が強くても最終的には物量で押し切られる。火もつけて兵も削って見張り塔を倒してもそれでも根本的な物資は向こうの方が上。いずれは押し切られるのが目に見えて…まてよ?

 「敵の補給経路ってわかります?」

 「そりゃわからんがあんだけバカスカ撃ってること考えると補給経路があるって考えるのが自然か」

 やることは決まった。



 「良いか?どのみち物資が手に入っても消耗戦はなしだ」

 「理由は?」

 「戦闘出来るのは敵の援軍が来るまで。それが来れば死ぬのは俺たちだ。時間に直してあと二時間程度ってところか」

 「二時間で兵士を皆殺しにしてあのデカブツを倒す。上等!」

 「しばらくは俺たちで時間を稼ぐ。見つけたら何でもいい。とりあえず分かる形で派手にやれ」

 アサルトライフルを肩にかけ軍服を脱ぎそこら辺の私服を盗む。

 「それとなぁ。あいつのことだが」

 私が着替える後ろで郷田さんが言う。

 「長い付き合いだから分かるが…お前を心配して前線から逃がしたのも本音だと思う。あいつがお前に何を言ったのかは知らない。聞いてもその場にいたお前ほどは感じられんからな。でも…話半分で聞いとけ。狂ったあいつもあいつで。優しいあいつもあいつなんだ。ちゃんとお前のことを愛してるからさ。あいつだけじゃなく俺も、皆もな」

 その言葉は優しいものだった。いつも酒飲んで隊長と喧嘩をする郷田さんじゃなく大人としての郷田さんだった。

 「ありがとう。行ってくる!」

 私の足は軽くなっていた。


そういえば今日急にPVが増えてすごくモチベーションが向上しました。まぁ問題はモチベーションとスケジュールが嚙み合わないことなんですが…すいません。早めにサブエピソードを終わらせて本編に戻りますので。…サブエピソードが終わったら色々読みやすい形に整理します

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