S12後編②
すいません。時間がとれず…途中ですが一度投稿します。申し訳ねぇ。
「くそっどうなってやがる」
投入した部隊のほとんどと連絡が取れなくなる事態に悪態をついたのは消火活動の指揮官こと酒瀬川中尉だ。中尉と言っても現状合理派にそこまで厳格な階級制度はない。
酒瀬川は東京テロ以前も軍属でありそれなりに高い地位にいた。当時の上司が合理派に寝返るので自分もそれについたら元々のスキルが評価され中尉という地位に就いたそれだけの話である。
現状合理派には全体指揮者である将軍と大隊指揮者である大佐、中佐クラスとその他指揮官である大尉、中尉職といった感じで振り分けられている。敵は分裂したとはいえ当時の国家。部隊の立て直しをしているだけの余裕はなく日々効果的に敵にダメージを与えることで精一杯である。
尤も合理派の政治部門のトップが配置したアンドロイドのおかげで最近はかなり余裕が出てきているがそれでも油断はできない。それほどまでに元国家というのは強かった。首都壊滅、それにも関わらず速やかに政治の中心たる帝を救出。その後国民の多数を東北地方に移動させた。この時合理派の面々は驚いた。政治、軍部、経済ありとあらゆる面で内部崩壊をさせたというのにこの国にはまだこれだけの力があるのかと。
その後戦争状態になり現状合理派に風は吹いているが有利は感じられなかった。その理由がこれだ。奴らは突拍子にもないことをする。街に火を点ける。そんなことをするとは誰も思っていなかった。
こっちは武装、技術の点で勝っているが相手は数、そして何より荒事にこちらより数段長けていた。高速道路沿いの山壁を下って侵攻したりアンドロイド一体で基地を落としたりとこちらの想像を超える動きをした。
それでも街に火を点けるといった悪行に手を出すことはなかった。なぜなら現状敵は与党、国としての体裁があるはずだからだ。実際今までもそうだった。だが今はどうだ。
街は狂ったように火が猛り、破裂音と共に爆発が起こり200はいたはずの味方と装甲車、そしてアンドロイドがことごとくなぎ倒される。味方と連絡は取れない。状況は最悪だった。これが敵の罠だという証拠はない。だが確信があった。そうでなければただの火災でここまで味方が死ぬはずがないのだ。
「隊長!第三班連絡が取れません!」
「他の部隊は!」
「突如火が大きくなったらしく帰投ルートを現在捜索しているとのことです!」
「わかった。只今をもって消火活動を終了する!現在から作戦を敵部隊との交戦及び撤退に切り替える。味方を拾ったらすぐに帰投する。各部隊との連絡を密にしろ!」
酒瀬川は命令を出したもののこの命令が正解だとは思っていなかった。敵の戦力も分からず目の前は大火。本来ならいくつかの部隊を捨て直ちに撤退をするのが基本だ。だが今回率いているのは中隊。規模が大きい、大量の歩兵もいる。そんな彼らの前で部隊を切り捨てることが酒瀬川には出来なかった。人殺しと言われることが怖かった。
酒瀬川は本来小心者だ。そんな小心者は敵の怒声や銃弾より明日からの味方の言葉が怖かった。かつて裏切った自分だからこそ裏切りが誰よりも怖かったのだ。
その恐怖心が間違った決断をさせた。セオリーを守らせなかった。そして敵はそんな彼を見て大きく笑った。それは悪意に満ちた笑みだった。
「総員敵は戦うことを選んだようだ。現状は俺たちが書いたシナリオ通りに進んでいる。このまま一気にラストまで持っていくぞ。迫撃砲用意」
その声でそれは姿を見せた。それはかつて使われていた迫撃砲とは異なるものだった。まず違うのは大きさだ。本来迫撃砲は大型の物でも車でけん引出来る程度のものだった。本来は歩兵の数少ない遠距離攻撃手段として重宝されていた物のため運搬のしやすさは迫撃砲という武器においてかなり重要なものだ。
だがその迫撃砲は従来の大型のものよりさらに大きかった。車輪がついているがアンドロイド三機で一台を運ぶのが精一杯そんなありさまだった。
「開発部からパクってきた新型だ。実地試験も兼ねている。外すなよ」
「隊長迫撃砲五台、準備完了しました。」
「よし、敵部隊に打ち込んだあと残りの爆弾を全て爆破させろ。迫撃砲の発射と共に俺たちは突撃する。突撃部隊は旧グレイブの面子だ。他の者は配置につき打ち漏らしを防げ」
そう言い沖田はバイクに乗る。バイクの前面には銃が取り付けられている。そこだけ世紀末のようだ。
「秒読み用意!」
バイクにエンジンがかかり周囲を焦げ臭い匂いが覆う。沖田の後ろには9台のバイクが同じように待機している。
「3!」
アクセルを吹かせる。それは鬨の声のように部隊を鼓舞する。
「2!」
ハンドルを握る手が固くなる。今からやることが博打のせいだろうか。心音が高ぶる。
「1!」
だけど恐れる者はだれ一人としていなかった。
発射音と共に10台のバイクが走り出した。
バイクは隊列を組みながら走る。その速度は100キロは超えているだろう。時間にしておよそ15分で馬鹿どもを死地に案内する。
迫撃砲と爆薬は街と敵部隊を吹き飛ばす。猛り狂う炎は爆風を浴びることより一層大きな炎になる。そしてそこから発せられる煙がバイクを包み隠す。
「スモークグレネード!」
その言葉で周囲の煙がより一層強くなる。もはや敵と味方の区別もつかない。周囲の温度は火事により高くなりアンドロイドに搭載されているサーモグラフィも意味をなさなかった。
誰もが動けずにいるなか奴らだけは違った。バイクに備え付けられた銃を操る。その度に敵のうめき声、装甲車が銃弾をはじく音がする。
「ちくしょう!どこだ!どこにいやがる!」
迫撃砲の一撃で冷静さを失った彼らにそれは十分な攻撃だった。バイクに備え付けられた銃は攻撃力は低く本来殲滅戦には向かない。だが煙が炎が低い攻撃力を後押しした。
銃声に怯える敵は闇雲に発砲する。その銃弾は敵を捕らえることなく味方を撃つ。だが味方を撃ったことすらわからない。
次第に銃声は数を増やしていった。
「手榴弾を落とせ」
装甲車の足元が爆発するその音を聞き装甲車は走り出す。だが前も見えない状態で走り出した車は猛る炎にその身を突っ込むことになる。
急激に酸素を送られて膨らんだ炎は装甲車を包み込む。それは確実に中の者を死に追いやる地獄を体現していた。
「隊列を崩すな。味方を疑った瞬間俺たちは死ぬ。良いか前が見えなくても訓練通りに動け」
本来なら無茶としか言いようがない沖田の指示。だが共に戦場を生き抜いたグレイブの仲間たちは一切動きを乱すことはない。煙で前が見えなくても敵の凶弾を恐れることなく列を乱さずに進んでいく。
グレイブの面々が無茶な特攻を生き残ってきた理由がこれだ。恐怖心を無視した完璧な作戦遂行。人でもアンドロイドでも不可能な作戦をやり遂げる。死を恐れないその姿を恐れてある男が言った。まるでゾンビのようだと。そんな他愛のない噂話から気づけば彼らには畏怖と侮蔑の意を込めてこう呼ばれるようになった。
くたばりぞこないのグレイブと。
因みに迫撃砲は実弾と煙幕弾の二種類を打ち分けています。軍事描写というより戦闘描写全般ですが難しさというものを最近常々感じています。
あと兵器は簡素には調べていますが基本ロマン武器です。こんなのあったらなぁって感じで書いてます。あまりにあれな物は突っ込みください。




