S12中編
すいません。本当は今日中に終わる予定だったのですが…時間が取れず…明日には終わります。
…あっ途中で視点変更があります。
「俺らが戦う理由?」
キャンプに帰った私はグレイブの人たちにそれぞれが戦う理由を聞いた。あんなにも危険なところで戦う理由は何なのか。
「俺はさぁ東京に家があるんだよ」
一人は語った。東京に家があって最初逃げるときに自由派についたものだから戦わないと帰れないと。
「儂か?儂はなぁ生きる理由がもうないからなぁ。せめて最後は人らしく死にたいんじゃ」
一人は語った。人生で一度も生きている実感がなかったから志願したと。
「俺もそんなもんだなぁ。北海道に移住することも考えたんだがもう一回女房と新生活っていうのもなにか違うなぁって思ったんだよ。だから嫁さんと娘だけ先行かせてここにいるなぁ」
結局のところ皆そこまで深い理由はないらしい。じゃあなんで命が掛けられるの?
「そりゃあお前さん…戦わなきゃ結局死ぬからだよ」
「そうだなぁ。平和な所で生きてても色々と戦う物はあるし、こんな所でも戦わなきゃ生きていけない。なら平和に死ぬより派手に死ぬ方がまだ人間らしいわな」
「まぁこんなこと言ってるとろくでもない戦場に飛ばされて大変なことになるんだがな!」
男たちはそう言って大きく笑った。彼らの頭はどこかおかしいことが分かった。
「まっ安心しろ。こんなこと言ってるが俺らについてくりゃちゃんと生きれるから」
「そうだな。確かに危ない橋は渡るが命は粗末にしないから安心しろ」
彼らの言ってることは無茶苦茶で乱暴だけどわしゃわしゃと私を撫でる手は優しかった。
そんなこんなでブッチギリのイカレチームであるグレイブに所属した私だったがそれからの日々は大変だった。
一応正規軍なのに相手の物資を奪うなんて山賊行為は当たり前。しかもその度に相手の戦車やら護送車なんかの巨大兵器も相手にするから命がいくらあっても足りない。
なんでそんなことをするか聞いてみた。
「そりゃお前…あれは元々儂等の物じゃからな。借りたものは返してもらわんとな」
そう言ってたった十人ちょっとの人数で喧嘩をしかけるものだから何度命が無くなるかわかったものじゃない。
でも不思議なことに死人は出なかった。腕が吹き飛んだ人はいたが。
「痛くないの?」
私がそう聞くと「痛いけどまだ片手があるから戦える」とのことだった。彼らはやっぱりクレイジーだ。
「嬢ちゃんそういやお前年いくつだ」
四回目の出撃が終わってキャンプで飲んでる頃不意にそんなことを言われた。周りはすっかり出来上がっていて飲食の類が出来ない私には少しうらやましい。
「まだ産まれて一年経ってません」
私がそう言うと彼らは飲んでた酒を噴出した。汚い。
「えっでも…え?」
「私アンドロイドですよ?アンドロイド。戦闘型アンドロイドSシリーズの12番目です」
私が説明しても彼らは驚いたままだ。酒のせいか理解能力が地に落ちているらしい。
「はぁーそっか…アンドロイドかぁ。しかしお前さん産まれてすぐに戦場に出されたのか?」
「えぇまぁ訓練は受けましたが」
そう言うと男たちは頭を抱えて考え込んでしまった。一体どうしたのだろうか。
結局その日はそのままお開きとなった。私が理由で解散したみたいで少し心苦しい。
「嬢ちゃん、お前さんは前に出るな」
ある日の朝いつものように出撃しようとすると突然そんなことを言われた。
「いや出るなと言われても…遊撃部隊が前に出ないでどうやって戦えって言うんですか」
「良いから出るな」
そう言って私は部隊の後ろに配属された。まだ戦闘は苦手だったし助かると言えば助かるのだが正直困惑した。
結局私はその後しばらく部隊後方で狙撃をメインにするようになる。アンドロイドならアサルトライフルでもそれなりの戦果が出せるのが私の唯一の強みだった。
出撃を終えていつものようにキャンプで飲んでいる。だが不思議とみんないつもより酒の量が少ない。
「あぁ聞いてくれ。」
グレイブのリーダー沖田三蔵が話し出す。
「次の任務から俺たちは遊撃隊からここキャンプ地で警戒任務に就くことが決定した明日以降事務方から正式な指令書が来る。話は以上だ」
今まで嬉々として特攻まがいの遊撃をしていたグレイブの面々がそのことになんの異議を言わない。流石におかしかった。
「あの…」
「なんだ」
「どうして急に警戒任務になったのでしょうか…それよりも私たちが任務を外れて大丈夫なんですか?」
「軍部の指令に深い意味を持つな、探るな以上だ」
みんな酒を切り上げて部屋に帰っていく。やっぱりなにかおかしかった。
「おい墓石の連中だぜ?」
「あいつらがここにいるなんて何してんだかって話だよな」
「まったくだ」
警戒任務に就いているとそんな話ばかり聞こえてくる。あまり気分は良くない。
「俺たちはただでさえ年齢のせいで厄介者扱いだったからな。特攻することが唯一の取り柄だった分やっかみは仕方がない。気にせず仕事だ」
そう言ってリーダーは私に仕事を促す。いつもなら適当なやじの一つは飛ばす面子がここ数日えらく大人しい。正直ここまでくると違和感を通り越して気味の悪さすら感じてくる。
ただ言っても仕方がないので結局は任務に就くしかないのだ。
ある日の朝、キャンプ地の司令官が来た。
「S12お前に研究所に帰投命令を出す。定期検査だ」
「はぁ」
そう言われて私は生まれた研究所に帰ることになった。車で約一日の旅である。何故かリーダーもセットだった。
「お前の戦闘データの確認だとさ。一番知ってるのは俺たちってことでな」
頭の中のデータを覗く話なので正直いるとは思えないのだがここはとりあえず納得しておくフリをした。
そうして約一日、敵に襲われることもなく無事に帰宅した私を待っていたのはいつぞやの将軍だった。
「沖田ぁ?」
「坂本ぉ?」
どうやらこの二人は知り合いだったそうな。再開の挨拶をしてる二人を無視して私は提起検査に向かった。邪魔するのも悪い。
まずはメンタルチェックからだった。久しぶりに見る桜は元気そうで肌艶もよかった。私達が奪った物資はちゃんと届いてるのだろう。
「あらおかえりなさい」
そう言ってほほ笑む桜に少しの安心感を感じたのは内緒だ。
「どうだった戦場は」
正直怖かった。今ならはっきりそう思える。でも二回目からは慣れてきて、自分が強いチームにいることもわかった。頭がおかしいとは思うけど彼らがいないと何度も死んでたと思う。酒臭いし、最近は気持ち悪いけどそれでもいい人達なのは間違いなかった。そのことを桜に言うと桜はまたお決まりのクスクスとした笑い声を出して笑った。
「だから言ったでしょ?怖いって」
仕方がない。あの怖さは戦場に出てないと分からない怖さだ。いくら口頭で言っても分からない。私がそう言うと桜はまた笑いながら私のあたまを撫でた。
「あなた変わったわね。ちゃんと自分の感情を言葉に出来るようになった」
そうなのだろうか…正直産まれたての頃は状況になじむのが精一杯という感じだった。戦場に出て変わるというのもおかしな話だが、まぁ桜が見てそう思うならそうだろう。
久しぶりの桜との会話は少し気持ちがよかった。
「お前…あの子をすぐに戦場に出したんだって」
沖田が坂本に言う。
「何を考えていやがる」
その言葉には怒気が籠っていた。それは過去の友人に向ける言葉ではなく一人の敵を見る言葉だった。
「仕方がない。俺だって出したくはねぇさ。でもなぁ今そんなこと言えないのは分かってるだろ。」
実際その通りだった。局所戦では確かに自由派が勝っていた。だが全体的な戦闘で言えば合理派が勝っている。誰もが一騎当千の武者ではないのだ。
「お前こそなにを考えてる。あれはアンドロイドだ。余計なことを考えるような相手じゃない」
二人の会話は平行線だった。
坂本の言葉に沖田が吠えた。
「アンドロイドも人間も関係ねぇ!あの子にはちゃんと考える頭があって人と関わろうとする意志がある。それがある以上は人なんだよ!まだ産まれてまもないガキなんだよ!ガキを戦争に巻き込んだらあいつ等と同じじゃねぇか!」
「そんなことは分かってる。だがなそうしないともう…持たないんだよ」
沖田の言葉に坂本は力なく答える。その言葉には罪悪感と後悔が混在していた。
「今戦争は俺たちが負けてる。力が…いるんだ。力が必要なんだよ」
その言葉はポツリと飛び出した。沖田に聞かせる言葉ではなく自分自身に聞かせる言葉だった。自分が外道に片足を踏み込んでいるのは理解していた。だけどそうしないと国が消え多くの人が殺される。頭の中では分かっても自分の中の良心は納得していなかった。
「そんな言葉で言っても説得力ねぇよ」
そう言い沖田は酒を煽る。
「約束してくれ…出来る限りあの子は戦場に出さないと…少しの期間で良いんだ。何も知らないまま戦争に行くなんて許されねぇよ」
「分かった…だがまったくというのは無理だ。どうあがいても避けられないものはある」
沖田が舌打ちをする。だがそれしかないことも理解していた。心の底からムカつくがそこしか妥協点がないことも事実だった。
「分かったよ。すまなかった。怒鳴ったりして」
二人の間に気まずい空気が流れた。
「それとなひとつお願いがある」
そんな空気を押しのけるように沖田が口を開く。
「なんだ」
「俺たちが死んだときあの子のことを頼む」
それは坂本にとって信じられない言葉だった。前線のグレイブの噂は坂本もよく聞いていた。乱暴者で粗野な男の集まりだがその実力は本物だと。そんな連中の頭から出る言葉ではなかったのだ。
「…そんなに悪いのか」
「いや前線自体は落ち着いてる。だが…あの子が来てからちと無茶をしすぎた。そろそろ嫌なことが起きる気がするんだ」
「人事のことなら俺がどうにかするが」
「やめてくれ。そんなことをしたら士気が下がる。良いんだ。今まで好き勝手やってきたツケだよ。大丈夫だ、まだしばらくは持つ。だがいざってときは頼む」
「分かった…約束する」
その後二人の間にはかつての友人同士だからこそ伝わる無言のやりとりが交わされた。




