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シャーリー  作者: カメレオン
第一章
23/47

シャーリーと写真と少年18

お久しぶりです。本当に忙しくて中々書けませんでした。今日からまたぼちぼちと書いていきます。

スタングレネード。暴徒鎮圧などに利用されるそれは強い光と音で人間の五感に大きなダメージを与える。最大限の効力を求めるなら屋内で使用するのが望ましいが至近距離で浴びれば場所の違いは大して意味がない。

 日常で耳にすることがないその音は浅羽の聴力にダメージを与え、一瞬差し込んだ強い光は聴力へのダメージも相まって平衡感覚にダメージを与えた。

 当然のことだが浅羽から比較的離れた距離にいても碌な装備をしてない少佐達にもスタングレネードはダメージを与える。それは浅羽ほどではないにしてもその場に居た全員の動きが止まる程度には効果があった。ただ一人を除いては。

 (人をからかってスタングレネードを確実に浴びせるとか…やり方が軍人っていうよりチンピラのそれだな。)

 シャーリーだ。シャーリーは少佐がスタングレネードを投げた瞬間両手と無事な方の片足で全力で跳んだ。

 シャーリーが跳んだ先は浅羽の足元。地面に着地する瞬間足元にあった手榴弾を掴む。

 「でも悪くない!」

 シャーリーは浅羽の傍でもう一度跳びながらピンを抜き取り浅羽に投げつけた。

 (急げ!急げ!急げ!)

 シャーリーが片足を引きずりながら戦場を離脱する。数秒後大きな爆発音がキャンプ場を支配した。

 


 「おっ帰ってきたか」

 少佐の目に空気を震わす爆発音と視界を阻害する土煙に紛れてシャーリーは帰ってきた。爆風を浴びたのかその姿は先ほどよりもボロボロだ。匍匐前進のような動きでナメクジのように移動するさまがおかしくて少佐の口元がにやけた。

 「あんたこうなること分かって手榴弾あそこに投げ込んだな?」

 そしてそれを見逃すほどシャーリーは気の長い性格をしていない。

 「言ったろ?ムカついたって。丁度いいそのまま頭下げてろ」

 少佐が手を上にあげる。

 「第一陣…撃て!」

 一拍程度の溜めを含んで銃弾が放たれる。現在アサルトライフルを保有しているのはシャーリーだけだ。後続の捜索隊はハンドガンしか持ってきていなかった。

 シャーリーは銃弾の真下を潜り抜けながら少佐に近づく。

 「アサルトライフルでも効かない相手がハンドガンの掃射程度で死ぬとは思えませんが」

 シャーリーは車を背にして土煙を見る。

 「うーん?そっかお前まだ気づいてないのか」

 少佐は土煙から目を離さずシャーリー答える。だけどその声がシャーリーを小ばかにしたものであることはシャーリーにも分かった。思わずムッとした顔で少佐を睨む。

 「最初は私もあんな化物出てきて焦ったよ。でもな?」

 徐世に土煙が晴れてくる。それと同時に浅羽の姿が露になる。

 「銃弾が効かない人間なんていないんだよ。見ろよほら」

 そう言って少佐が指を指した先には皮膚がはがれ筋肉が直に見えるまで肉を削り取られた浅羽がいた。

 浅羽に銃弾が吸い込まれる。皮膚を失った筋肉に銃弾が吸いこまれ鮮血がこぼれる。だけど浅羽は倒れない。銃弾が吸いこまれるたび削られた筋肉が再生し皮膚を構築しようとする。

 「くっそぉ!痛い!痛い!痛い!」

 「お前との戦闘見ていて気付いたんだよ。お前の蹴りが入ったら倒れる程度の体重でなんで銃弾を受けても立っていられるのか」

 「交代!第二陣撃て!」

 「その答えがあれだよ」

 ハンドガンから飛び出る銃弾が浅羽の肉を削る。再生しようとする皮膚を次々と削り取っていく。

 「人間を超えた再生能力。変貌した見た目に騙されたけど結局のところそれがあいつのトリックだよ。銃弾が体を貫くより早く体を治す。プラスチックより少年誌重ねた方が防弾には効果的だろ?そう言うことだよ」

 「その理屈ならなんで今は攻撃が通用してるんですか?一気に治してしまえば…」

 「普通の人間だって大怪我したら一気に全ての箇所が治るわけじゃない。治りが早い部分、遅い部分が出てくる。銃弾程度の穴ならすぐに治せるだろうがあそこまで剝がされたら一気に治療するのは難しいんだろうな。でもまぁ…そろそろか」

 少佐が呟いた瞬間浅羽が突如として走り出した。

 「ぐわぁあああ!」

 「いくら治るとは言ってもただ攻撃を受けてるだけじゃいずれ死ぬ。ならその馬鹿げた治癒能力に任せて特攻か」

 浅羽の動きは早かった。全身から鮮血をまき散らしながらもその動きは姿を変えたときと同等に近い速度が出ている。浅羽の瞳に映るのは久留和美野里ただ一人。その目には憎悪が浮かび上がっている。

 監禁したときは心を暴かれプライドを折られ、そして今は皮膚を剥がれる苦しみを背負わされる。浅羽の目には少佐がこれまで自分が壊してきた女ではなく明確な憎むべき敵として映っていた。そしてそんな少佐と浅羽の目が合った。

 「読んでるよ」

 衝撃音。ガラスが砕けて鉄がひしゃげる音が響く。

 (なんだ…なにがっ)

 浅羽の目に移ったのは車だ。カーキー色に塗られた車。恐らくは捜索隊が乗ってきた車だろう。それが突如として突っ込んできたのだ。

 「さっきの手榴弾と同じだよ。人間は一つのことに集中すると周りが見えなくなるし聞こえなくなる。だから私が投げたことにすら気づかなかった。銃声に紛れてエンジン音が聞こえにくいとなおさらだろう。」

 浅羽は吹き飛ばされながらも車を掴む。反射的な行動だった。何かしらの抵抗を考えた結果つい車を掴んでいたのだ。それが地獄を呼ぶとも知らずに。

掴んだ部分を起点にしてどうにか地面に足を付けようとするが地面に血をまき散らすだけで効果は薄い。

浅羽が掴んだ車のフロント部分が浅羽の握力によって歪んでいく。だけど運転手が速度を落とすことはない。

「やめろ!やめろ!良いのかお前!このままだと一緒に死ぬぞ!」

浅羽が車の運転手に話しかける。だけどその運転手は答えない。それどころか強い殺意を持って浅羽を睨みつける。

「そいつなさっきお前に殺された奴の幼馴染なんだよ。この作戦を話したら喜んでやるって言ってくれたよ」

浅羽が手を車から離そうとするも思うように動かない。力が入りすぎて筋肉が硬直しているのだ。

「お前もシャーリーも人間を舐めすぎだよ。今からお前は人間に殺されるんだ」

「くそっがぁあ!」

浅羽は慟哭と共に海に沈んでいった。


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