シャーリーと写真と少年17
少佐が取った行動はその場に居た多くの人を放心させた。浅羽は現状の装備ではシャーリー以外太刀打ち出来る存在はない。本来ならシャーリーが引き付けている内に逃走するのが正しい選択肢であるにも関わらずあろうことか少佐はピンチになったシャーリーを助けるために発砲を行った。
少佐に特別優れた戦闘技術はない。この場にピンチを覆すことができる実力はこの女にはないのだ。そんなことは本人含むこの場の多くの人間が把握していることだ。だからこそ今少佐が行った行動は多くの人の心を捉えた。それは撃たれた張本人である浅羽までもが放心するほどの出来事だった。そしてこの場に居た人間は皆等しく同じ感想を抱いた。何やってんだと。
「君…馬鹿なの?」
「馬鹿とは酷いな。教養もまともになさそうな犯罪者に言われる言葉じゃないな」
浅羽の言葉に喧嘩腰で少佐は返す。だがその声色はイラついている様子は見られない。それどころか楽しげな感情まで伝わりそうな明るい声色だった。
「いや…襲った張本人が言うのもあれだけど普通こういう状況ってこのアンドロイド見捨てるのが普通だよね。僕がおかしいみたいに会話を進めないで欲しいなぁ」
「まぁねぇ。ましてや色々とリスク持ってる爆弾みたいなアンドロイドを庇うなんて自分でも馬鹿なことをしたと思うよ…でもな?」
少佐はシャーリーと浅羽をじっと見て言った。
「ムカつくんだよお前ら」
「「はぁ?」」
思わず聞き返す浅羽とシャーリー。そして周りの捜索隊のメンバー。
「人のことを訳の分からない理由で拉致してやっとの思いで救出されたかと思えば新しい問題が山のように降ってくる。挙句の果てには常識外の意味の分からないことが盛りだくさん。ほんっとふざけんなって感じだよ」
少佐は周囲の人間の目を見ながら言う。それは会話ではなく演説だった。話すのではなく語る。不思議と浅羽もシャーリーも他の誰もが少佐を見ていた。
「ここで全部逃げ出して帰るのは簡単だよ。お前のことも訳の分からないアンドロイドも全部忘れてのんびり暮らす方がいい。精々失うのはアンドロイドと人間数人だ。大した被害じゃない。でもな私の性根はそれを許さないんだ」
「今更正義漢を演じるつもりかい?」
「そうじゃないさ。ただ私のあずかり知らぬところで勝手に話が進んで勝手に問題が消えるのが納得いかないのさ。ましてや仮にも軍人がアンドロイド一体の戦力のみに期待するなんてこと許せるかよ。だから援軍の力なんて借りない。お前は今ここで殺すよ」
浅羽の足元に硬い音が伝わる。
(手榴弾!?いつ投げた?まだアンドロイドがここにいるんだぞ!?)
浅羽は体を小さく固める。身を守るための反射的な行動だった。だけどいくら待っても予想していた衝撃はこない。浅羽は恐る恐る目を開ける。
「よく見ろよ?まだピンが付いてるだろ?」
少佐のからかうような声が浅羽の耳をくすぐった。その言葉に浅羽は顔が赤くなるのを感じた。
「こんっのクソアマぁ」
「焦るなよ。本命はこっちだ」
そう言って少佐は浅羽に向かって何かを投げる。
「もう引っかかるかよ!」
浅羽は先ほどと違って防御の体勢すら構えることなく少佐に向かおうとする。その瞬間少佐の口元に笑みが咲いた。
強い音と光が空間を埋めつくした。




