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シャーリー  作者: カメレオン
第一章
20/47

シャーリーと写真と少年⑮

 皆さまお久しぶりです。カメレオンです。あれだけ偉そうなことをほざいたのに話が進んでおりません。申し訳ないです。明日は久しぶりの休日なので書く時間が取れると思います。てか思いたいです。いつも応援頂いてるのに亀のような更新速度で本当に心が痛みます。

 仕事が落ち着くまではまだ時間がかかりますがもうしばらくお待ちください。

 浅羽が起こした惨劇は後方勤務のエリート達を動揺させるには十分すぎる物だった。

 銃弾を通さない体。人間の首すらも落とすことが可能な鋭利な爪。何より凶悪なのはその速度だ。

 人間の目では肩が上下しているのを辛うじて捉えられるのが精一杯な速度。細部である手の動きなどはもはや知覚のしようがないほどだった。この場にいる一人を除いては。

 「少佐呆けているところ悪いですが失礼しますよ」

 そう言うとシャーリーは少佐の首根っこを掴み自分が乗ってきた軍用車の荷台に投げ込んだ。本来怪我人にすべき行為ではないがシャーリーにも余裕はなかった。少佐を投げながらもその目は浅羽を捉えていた。

 一瞬でも目を離せば自分が殺される。そのことが分かっていたからだ。

 「痛っあ!」

 「そこでしばらく大人しくしててください。正直運転して逃がしてやれるほど余裕はないです」

 少佐の返事を待たずシャーリーは走った。現在の武装はアサルトライフルと手榴弾とスモークグレネード。あとはハンドガンが一丁。そして役に立たないであろうナイフも一本。人間なら十分すぎる兵器の数々だがシャーリーはこれでも物足りなさを感じていた。

 (外した関節が治っていることを考えると二度目は通じないか。多分アサルトライフルじゃ体に傷をつけるのも無理だな。対物ライフルでも持ってくるべきだったか。失敗したな)

 シャーリーは戦闘プランを練りながら現在も戦闘が行われている場所に突っ込んでいく。

 「危ない!」

 浅羽の爪が振るわれそうになっている兵士を蹴り飛ばしながらアサルトライフルを盾にする。金属同士がぶつかったような鋭い音が浅羽の肉体がもはや人間の範疇から外れていることを証明していた。

 (さっきより重い!分かってはいたけど辛い!)

 シャーリーはアサルトライフルを通じて感じた浅羽の膂力を膝を柔らかく曲げて地面に流すことで後ろに下がった。力でやり合うことも出来るがその分他の攻撃に対応できなくなると考えたからだ。

 「今すぐ全部隊を撤退させて」

 シャーリーは短くそう言った。本当はシャーリーは援軍要請など様々なことを発現したい。だけど怪物と成り果てた浅羽がシャーリーに次の言葉を出させない。

 浅羽の攻撃はシャーリーの反応を待ってはくれなかった。

 「急げ!早く!」

 未だ茫然としている兵士の一人をシャーリーは吠えることで追いやろうとした。シャーリーの怒声が効いたのかシャーリーに助けられた兵士はすぐに戦場から離脱する。

 だが浅羽はそれを黙って見ているほどいい性格をしていない。浅羽のはシャーリーを無視して兵士を殺すために動く。

 「させるか!」

 シャーリーも浅羽同様相手の言うことを全て叶えてやるほど良い性格をしてはいない。浅羽の足元にアサルトライフルを撃ち込みながら再度浅羽との距離を詰める。

 「…邪魔くさい」

 浅羽がポツリと言葉を漏らした。

 「そんな姿になっても喋る口は残ってるのか」

 シャーリーは浅羽が喋るだけの理性を残していたことに驚いた。見た目の変容という特大のインパクトが不思議と今の浅羽が喋れない化物であるという認識に思考を落とし込んでいたのだ。

 「喋ろうが殺そうが僕の勝手だろ、お前にガタガタ言われる筋合いはないよ」

 浅羽は苛立ちを隠そうともしないでシャーリーに向き合う。

 「お前うっとおしいよ」

 浅羽がシャーリーに向かってその爪を振りかぶる。その速度は先ほどまで兵士を殺していたそれの比ではない。

 シャーリーが風切り音を感じたその瞬間にはその顔に爪が振り下ろされようとしていた。

 シャーリーはそれを左足を軸に体を逸らすことで対処する。さらにそこから浅羽の顎をアサルトライフルで殴る。だけども浅羽はシャーリーの攻撃をものともしない。

 「やっぱり効かないか」

 「分かっているのにやるって無駄じゃない?」

 「わざと受ける奴に言われたくねぇよ」

 シャーリーは浅羽がわざとシャーリーの攻撃を受けたことを分かっていた。今の浅羽の身体能力ならシャーリーの得意とする超接近戦に付き合う必要性はない。自分のペースを保ったまま戦うことが出来るはずだった。

 「折角だから知りたかったんだよ」

 浅羽はシャーリーのアサルトライフルを横に逸らしながら蹴りを放つ。

 「何をだよ!」

 シャーリーはそれを捌きながら浅羽に問う。勿論弾丸を浅羽に打ち込むことは忘れない。

 「さっき人を散々ボコボコにしてくれたアンドロイドに勝てるのかをね」

 浅羽はシャーリーの攻撃を避けることもなく真っ直ぐに受け止める。その姿はプロレスラーを彷彿させる。いやこの場合は熊とでも呼ぶのが正解なのかもしれない。どちらにしろ人間業ではない。

 「それでご感想は?」

 「人形を壊すのには勿体ないくらいだ」

 浅羽は独特ないやらしい笑みを浮かべた。そこには確かな強者の余裕がある。シャーリーに対して煽っているのだ。

 「ほざいてろ変態野郎」

 シャーリーはそんな浅羽に対し銃弾で答えた。

 そんなアンドロイドと化物のやり取りを生き延びた兵士達と久留和がじっと見ていた。その目は呆けているわけでも諦めているわけでもない。ただ食い入るようにシャーリー達を見ていた。



  「隊長これからどうしますか?」

 シャーリーと浅羽が死闘を繰り広げている頃そこからほんの少し離れた場所で会議は行われていた。

 「どうするもなにもお前あの戦闘に割って入れるのか?」

 隊長と呼ばれた男は部下の質問に対して質問に返す。そこにはやれるものならやってみろという意味が込められていた。

 浅羽がその手を一振りするだけで鳥肌が立つほどの鋭利な風切り音。そしてそれを受け流すシャーリーが奏でる金属音は人間の戦闘行為ではまず聞くことの出来ない音だった。

 彼らが奏でる戦闘音は人間の常識からかけ離れた物だがその光景はもっと常識外れだ。互いに少し近づけばキスが出来そうな距離。その距離でプロボクシングのタイトルマッチでもまず見ることの出来ない速度域の攻防が繰り広げている。人間の動体視力で彼らの世界を知ることは困難だろう。仮に目が追い付いても体は間違いなく置いて行かれる。

 そんな人の領域を超えた彼らの戦闘は膠着状態にあった。浅羽の速度と重さ、そして人間離れした爪から放たれる一撃は確かに早い。普通の人間なら間違いなくあの世行きだ。

 だけどシャーリーはそんな浅羽の攻撃を最小限度の動きで避ける。そして避けた先を起点として銃撃、打撃などを織り交ぜた連撃を繰り出すのだ。だけどもそんなシャーリーの美しさすら感じさせる攻撃も浅羽の肉体には通用しない。

 先ほどまでの戦闘なら再生はすれども傷をつけることは可能だった。だが今の浅羽の体には傷すらつかない。

 シャーリーが持つ銃は特別性だ。何度も戦闘行為を重ねることにより完成されていくシャーリーの戦闘プログラムが最も欲しい形をイメージしそれを技術者達が形にしたものだ。

 それはシャーリー達アンドロイドの怪力を活かすために普通のアサルトライフルよりも威力が高い。その分反動も強いがそれを問題なく扱えるだけのポテンシャルが彼女にはあった。

 だけどそんなシャーリーの銃弾も打撃も浅羽の体に触れることはあってもその肉を弾けとばすことも脳を揺らすことすら出来ない。

 攻撃が当たらない浅羽、攻撃しても効かないシャーリー。互いに人の領域を外れた彼らの戦闘はどこか嚙み合っていなかった。

 「…いや援護射撃とか他に出来ることはないんですか!?こっちは仲間が一人殺されてるんですよ!」

 「無茶を言うな!あいつらを見て見ろ!あれだけぴったりと重なった状態でやり合ってるのにどうやって当てるんだよ!あのアンドロイドごと撃てとでも言う気か!?あぁ!?そんなことしても防波堤が無くなるだけだろうが!文句言うなら改善案出してからにしろボンクラ!」

 久留和の捜索に来た部隊は後方勤務と言えども優秀な軍人だ。帝を守る専門の部隊ほどではないが現在首都の所在地である北海道を守るに相応しい実力を兼ね備えている。だがそんな彼らも浅羽のような化物を見たことはなかった。合理派の連中は銃弾が効きにくいという話も聞いたことがあったがそんなものは噂話としてまともにとりあってこなかった。

 だが現実はどうだ。聞きにくいどころか全く効かない化物は確かに存在して、満足な武装を用意していなかったとはいえ軍の隊員が無抵抗で殺される。そんな悪夢みたいな状況が確かに目の前に広がっていた。

 何より彼らが許せなかったのはその状況から自分達を守っているのが鍛え上げた自分たちの能力ではなくほんの少し前に来た戦場上がりのアンドロイドなのだ。

 女の姿をしたアンドロイドが自分達よりも高い次元にいる。人間に使われるはずのアンドロイドが戦場を支配している。それが彼らには許せなかった。

 「なぁちょっといいか?」

 そんな彼らの言い合いに割って入った人間がいた。久留和だ。未だに体が痛むのか未だに荷台の上であばらを抑えていた。

 「はっ!久留和少佐!ご無事でしょうか!」

 隊長と呼ばれた男の敬礼と共にその場に居た男たちも一斉に久留和の方を向いた。

 「これが無事に見えるなら眼科に行け。援軍要請は出したか?」

 「はっ現在他の捜索隊がこちらに集結しています。途中補給班と合流して武装を整えた後制圧作戦に移りますので20分もかからないと思われます」

 「そうか。…なぁこの中で前線から上がってきたやつはいるか?」

 久留和の質問に捜索隊のメンバーは一斉に首を横に振る。この捜索隊のメンバーは東京テロ時に久留和と一緒に上がってきたメンバーらしい。誰も現在の前線を資料以上に詳しく知っている人間はいなかった。

 「なにか気になることでも?」

 久留和の態度がおかしいと思った隊長が声を掛ける。

 「…私さ良く軍事関係の開発を行っている企業の研究所に仕事で行くんだよ」

 「は…はぁ」

 「そこで色んな兵器を見てきた。対戦車用のライフル銃とか陸上母艦とかまともな兵器から馬鹿げた兵器まで色々と見てきた。でもな大体の兵器には共通のルールがあるんだよ。何かわかるか?」

 「…標的に対する有効性でしょうか」

 少し考え込んだ後に隊長は答えた。

 「惜しい。かなり良い線行ってる。結論から言うと仮想敵だ。どんな相手と戦うのかとかどんな状況で戦闘するのかだとかそんなことを基準に考えるんだよ」

 「はぁ…」

 久留和の言っていることを理解しているのかしていないのか隊長はどこか反応に困ったような返事をした。

 そんな隊長を久留和は横目に見て久留和は話を打ち切った。これ以上話しても無駄だと考えたからだ。

 (アンドロイドの多くは汎用性を基準に開発されている。それは兵器としての側面よりも兵力としての側面を求められたからだ。だけどなシャーリー?普通のアンドロイドはそんな化物とやり合うことなんて想定されてないんだよ)

 久留和は未だ浅羽と互角の戦闘を繰り広げるシャーリーを見てそんなことを思った。シャーリーは浅羽の攻撃を相も変わらず的確に捌いている。そお制度と美しさは一回の攻防毎にさらに高度に変化している。

 (お前を作った奴には何が見えている?いやそれ以上に私たちは一体何と殺し合いをさせられている?)

 だけどそんな久留和の問いに答えられる者はこの場にはいない。そんな久留和の疑問に答えるような金属音がまた一つ響いた。






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