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シャーリー  作者: カメレオン
第一章
14/47

シャーリーと写真と少年⑨

今日の更新はここまでです!


「っう…ここは?」

 鈍い痛みと共に少佐の目が覚める。気づけば知らない場所。木の床に聞こえるのは波の音。遊園地じゃないことは確定している。

 (あばらが痛い…折れてるなこれ)

 ひどく痛む体を気遣いながら体を動かす。だが思うようにいかない。手が拘束されている。靴も履いておらず素足に剝かれてる。足にはワイヤーのような物がつけられている。逃走防止には縄より心理的効果が高いと考えたのだろう。

 (なるほどね…最初から目的は私ってことか。咲の姿が見えないってことは恐らく無事なんだろう)

 それはごく自然な思考の帰結だった。無意識にシャーリーが咲の救助に成功していると考えた。

 (しかしどこに拉致られた?波の音が聞こえるってことは海沿いなのは間違いないが…こう暗いと時間もわからないな)

 せめて外の光、時間さえわかればあれからどの程度時間が経ったのか判断できる。だがここは木の床があることしか分からない。狭さを感じないことからそれなりのスペースがある室内に置かれていることは判断ができた。

 (さて…どうするのが正解かね。叫んで助けを求めるのは無駄。そこまで馬鹿じゃないだろう。ワイヤーは切れそうにないし。動いたら逆に怪我する。ここは意識を失ったフリをするのが無難か?でもなぁ)

 暗い室内で状況が分からないからこそ考えが堂々巡りする。今少佐は冷静に考えているようで実はそこまで冷静でもなかった。ただ思考が回っているだけである。

 (しかし拉致したのは誰だ?合理派の連中だけならもっと大掛かりにやるはずだ。素人にしちゃ手が込みすぎている。)

 そんな取り留めのないことを考えていると不意に光が差し込む。思わず少佐は目を閉じた。

 「あっ起きたぁ?」

 光に慣れ始めた目が見たものは軽薄そうな男の顔だった。



 「ごめんねぇ。こんな埃まみれの所にお置いて」

 そう言って男が降りてくる。どうやらここは地下だったらしい。上を見上げれば今時珍しいバンガロータイプの壁が見えた。道理で外の音が聞こえるはずである。

 「そう思うなら水をお願いしたいね。喉が渇いて裂けそうなんだ」

 これは本音だった。事実さっきから喉がひどく乾いてた。現に少し声が枯れている。

 「そう言うと思ってほら…これ」

 男はそういってペットボトルの水を転がす。だが当然拘束されている状態で飲めるはずもない。

 「悪いが腕のこれを外してくれないか?飲みたくても飲めないんだ」

 「あぁそうか。でもねぇ逃げられたくないからそれは外さないよ」

 男はそう言うなりペットボトルを掴み蓋を開ける。

 「だから飲ませてあげるねぇ」

 男は開けたペットボトルを少佐の口のなかに突っ込んだ。それは水を飲ませるという行為ではなかった。

 「あっぐ!おぼぉ!」

 男は少佐の喉の奥にペットボトルを突き込む。

 「美味しい?ねぇ美味しい?よく飲んでよねぇ?」

 返事をする余裕なんてものはなかった。息が出来ず水も飲めない。それどころか体が死なないために水を押し返す。生き地獄だ。

 「だめだなぁ。こぼしちゃって。ほらお水あるよ?」

 床にまけた水は埃をまとい黒く変色している。到底飲めたものではなかった。

 「っはぁ、はぁっ。っすーーーう。」

 少佐は息を整える。当然だ。下手をすれば死んでいる危険性すらある。

 「ご馳走様でした!」

 だがその気概は死んでいなかった。それどころか目の奥はより強く輝き相手を見据えている。そこには決して負けるものかという強い意志が存在していた。

 「…お粗末様でした」

 相手はその様子に少し思うとこがあったのか思わず顔をしかめるもごく普通に返事をした。

 (絶対にコイツから情報を盗んでやる。)

 少佐の長く辛い戦いが始まった。



 「ところでさ?今は何時ごろ」

 「教えない」

 「そう。じゃあここはどこ?」

 「教えない」

 「じゃあ何が目的?」

 「……」

 (今度は無視か…)

 男は何も話さない。よほどさっきの少佐の態度がムカついたのだろう。現にさっきから地上から持ってきた椅子の重心を偏らせてフラフラと落ち着きのない態度をとっている。

(相当短気な性格か…いやというよりは精神的に未熟なだけか、どちらにしろまだ情報が足りない)

「ねぇ私お腹空いたんだけど」

「知らない」

「そんなこと言わずにさ?パン一切れでいいから欲しいな?ね?」

「うるさいなぁ」

男が少佐を睨む。その目には確かな殺意が籠っていた。

「そんな目をしても女の子は言うこと聞かないよ?」

だが少佐には関係なかった。むしろ積極的に煽る。

「ちっ!いい加減にしろよお前!状況分かってんのか?拉致られてんだよ?命が危ないんだよ?なのにどうして人をおちょくる。頭沸いてんのか!」

男が激高した。だけどそれは少佐に対し意味をなさない。

東京テロを生き延び、軍部で血と謀略を見てきた少佐にとって恫喝や脅迫の類はなんの意味ももたらさない。むしろその逆だ。

「だってあなた私を殺せないでしょ?」

 少佐は声のトーンを落とした。

 「だって私を殺すなら非殺傷弾なんて使わないもの。ご丁寧にあばらの上から撃つなんてこともしない。武器がそれだけしかなくても頭を撃てば死ぬ。でもそうしなかった」

 少佐はゆっくりと言葉を紡ぐ。

 「さっきのことにしてもそう。あなたは偉そうに主導権を握りたがる。握れないとイライラする。きっとそういう性格なんでしょうね」

 それは相手にまきつく。

 「でも犯行の手口があまりに手慣れている。あなた…犯罪者でしょ?それも常習の」

 言葉は見えない蛇になり男の体にまきつく。

 「きっと他の人間に依頼されたのよね?軍の人間を狙うってことはそれなりに上の身分か…それとも合理派の連中かな?」

 蛇は男の耳に入りそのおぞましい音を際立たせる。

 「筋書きはこんなところかな…あなたは何か犯罪で生計を立てていた。多分強盗かな。でもそれだけじゃ満足できなかった」

 「うるさい!」

 男が少佐を蹴る。その蹴りは顔を捉える。だけど言葉は止まらない。

 「きっと強姦にも手を出したんでしょう。さっきの態度を見ればわかるもの。征服欲が強いのね。でもへまをした」

 「黙れ!」

 男の暴力が加速する。だがそれと同時に少佐の言葉もより早く相手の心を捉える。

 「きっとこんなことを言われたんじゃない!?この女を拉致すれば君の罪をどうにかしてあげるって。あなたはそれに乗った!」

 「うるさい!黙れ!その口を閉じろ!」

 顔が血にまみれ、鼻は折れているのか腫れあがっている。だけど少佐が言葉を止めることはない。

 「いいや!黙らないね!きっと武器も融通して貰ったんでしょう!どう?人の力で手に入れた武器は?気持ちよかった?」

 とうとう我慢が出来なくなった男は少佐の首に手をかける。

 「うるさい。こうなりゃ依頼もやめだ!お前みたいな生意気な女は死にゃあ良いんだ。死ね!死ね!死ね!」

 男は片手で少佐の首を掴み片手で顔を殴打する。

 「…いいよ?殺す?…でもねあなたに私は殺せない」

 少佐は所々詰まりながらも声を出す。その声は殴られているのにも関わらず死を感じさせない堂々としたものだった。

 「だって私のヒーローがすぐそこにいるもの」

 次の瞬間銃声が鳴った。

 それは大きな銃声だった。音は他の銃と比べようもないほど大きい。

 同時に部屋に煙が入る。スモークだ。

 「なんだ!」

 「空砲だよ馬鹿!」

 現れたそれは男の顔を掴んで壁に叩きつける。

 煙の隙間から差し込んだ光が見せたのはこの1週間よく見た顔だった。

 「遅いぞ!シャーリー」

 「それは失礼しました。ところで随分と不細工になりましたね?」

 少佐を助けたのは赤いダウンを身にまとった金髪のアンドロイドだった。


待ってください。細かい説明は次の更新でするので。

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