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シャーリー  作者: カメレオン
第一章
11/47

シャーリーと写真と少年⑥

お待たせしました…ね…眠い

「久留和少佐、報告を」

 ここは基地にある大会議室。現在少佐の目の前には基地の司令官含む軍部の重鎮が集まっている。

 「はい。それではコードネームS12の報告を始めます」

 そう今回の会議はシャーリーの味方殺しを検証するための会議である。

 「現状、S12は特段異状なく、護衛任務を遂行しています。何か精神疾患のようなものを患っている様子もありません。また一番の懸念事項とされていた裏切りですが監視カメラ含む監視体制にもそれらしい様子はないと報告がありました」

 「現状接触する必要がないだけではないのか?」

 「だとしても一週間何もそれらしい行動がないのは不自然です。向こう側が何かをするつもりならとっくに準備に入っているでしょう。それに暴走用の制御装置があることからやはり裏切りの線は薄いかと」

 制御装置とは戦闘用アンドロイドが故意に自軍に対して攻撃を加えた場合など明らかに自軍に対して不利になる行為をした場合に使われる装置である。通常人型の場合、首輪の形をしておりそこからアンドロイドの頭部に対して直接電流を送り込み回路をショートさせる仕組みになっている。

 機密情報漏洩防止策としても評価が高い装置である。

 「じゃあ本当に誤射の原因は不明だと?」

 「はい」

 この一週間、少佐はシャーリーと絶えず傍にいた。元前線勤務ということもあってか陰謀と賄賂渦巻く後方に対し嫌悪の表情を見せることはあったが逆を言えばその程度だった。

 「どうかね?もう前線に戻しても構わないのじゃないかね?」

 会議の出席者の一人が口を開く。この男は比較的前線に近いところで勤務しており今もモニター越しに発言している。

 (まぁ前線に近いところからすれば戦力は欲しいよなぁ。ましてやそれがシャーリーともなれば)

 現状、前線は自由派の方が不利だ。敵の乱れぬ攻撃と次々に襲い来る新兵器により兵の士気は下がる一方だと聞く。シャーリーという御輿が欲しいのが現状なのだ。

 「ところがだね。前線の戦術部は原因が判明するまでS12を送ってくるなと言うんだよ。危険な兵器を俺たちに使わせる気かってね。」

 確かに前線からすればいつ撃たれるか分からない味方など悪夢以外の何物でもない。正直な話スクラップにして欲しいのが本当だろう。

 「それも原因が分からないのがいけないのだろう?じゃああれだ。S12の頭をバラして記憶媒体から当時の記憶を探れば良いんじゃないのかね?」

 (確かに正論だけど出来たらやってるよ)

 現在心理機能を持つアンドロイドの記憶媒体を勝手に盗み見ることは法律で禁止されている。これは心理機能を持つアンドロイドが人間と変わらない特徴を有することからプライバシー保護、また人間との平等格差を減らすことを目的に作られた法律だ。

 なによりシャーリーの頭を探ることの出来ない理由は他にもある。

 「君は報告書を読んでないのか?あの子は特別だ。記憶してきたモノが違う。それを全て探ることは時間も足りない、なにより記憶を探っても見れるのは映像だけだ。だから心理機能は厄介なのだろう?」

 そう心理機能の厄介な点は心の再現である。人は人の心を探ることは出来ない。例え監視カメラなどで人の動きを見ても、そのときその人が何を考えていたかまでは推測する以外に断定の手段はない。

 ましてやそれが戦場なら故意と過失の判断すら難しくなる。結局のところ本人に口を割らせる以外ないのだ。

 (私の責任が重いなぁ)

 目の前の喧騒を見ながら少佐はそんなことを考えていた。



 「護衛任務はどうですか?」

 不意に話しかけた相手をシャーリーは見る。

 「確かあなたは…」

 「マリリン。コードネームはE20です。尤も皆さんマリリンやマリちゃんなんて呼びますけどね」

 話しかけてきた人物はシャーリーを少佐の元に移送させた将軍に付いていた護衛用アンドロイドだった。

 「E型ってことは…」

 「えぇ初期モデルです。秘書型を改造していますから戦闘のキャリアも技術もずっとあなたには劣りますけどね」

 マリリンは横に座って煙草を取り出した。アンドロイド用の嗜好品だ。通常では味覚、嗅覚などを感じられないアンドロイドに対して娯楽を与えるために作られたものだ。当然煙も匂いもない。味わうのは本人だけだ。

 「それでどうです?」

 最初の質問に戻った。

 「そうですね。正直困惑してます。前線は血みどろで毎日人やアンドロイドが死んでるのに…ここはこんなに平和で」

 ここ一週間。シャーリーは少佐の護衛をしてきたが少佐が他の人間、アンドロイドに襲われることは一度もなかった。それどころか襲撃予告などの悪戯もない。

 (それに賄賂もあって…)

 「反吐が出るでしょう?」

 「ほぇ!?」

 (心を読まれた?)

 マリリンは何が面白いのかケラケラと楽しそうに笑う。

 「別に読まなくても分かりますよ。私もそうですもの。」

 マリリンは煙草を深く吸い込んでゆっくりと息を吐く。そこだけ一枚の絵画のようだった。

 「私も元々は戦場上がりでね?今の将軍に拾われるまでずっと銃を握っていたもの。それがなくなった途端、今度は汚い物を見せられる。ここの恒例行事よね。でもね?」

 マリリンはシャーリーの肩に腕を回す。

 「ここでしか守れないものを見つけた途端心はずっと軽くなるわよ。いいシャーリー?私たちは戦場では人形よ?ただ命令通りに敵を殺して、壊す。それしか出来ることはない。でもね?ここでなら人になれる。人と同じように考えて、人と暮らせる。それは汚くて辛いことよ。でもそれでしか守れないものもあるの。」

 シャーリーにはマリリンの言っていることは分からなかった。人を殺して、アンドロイドを壊すために前線は血反吐を吐いてる。でもここは平和だ。銃声が聞こえることも昨日まで居た人が消えることもない。

 そんな人間達が守っている物があるなんてシャーリーには信じ難いことだった。

 勿論頭では理解している。自分たちが彼らによって生かされていることを。彼らが権謀術数を振るい国民を保護していることを。

でもそれでもその行為は前線の彼らに比べてずっと汚くて、前線の人間が命を懸けて守るべきものなのか。シャーリーにはそれが分からなかった。

 「戦場を思い出すことは大切よ。でも前線の人間が守っているもの、そして後方の人間が守っているもの両方がちゃんと理解出来たときこの場所の意味が分かるわよ。それまで苦しいけどね」

 そう言ってマリリンは去っていった。

 (意味が分からないよマリリン。)

 それはシャーリーにとって難関な宿題だった。



 「シャーリー付き合え」

 それは会議の翌日のことだった。少佐は機能一晩基地の個室に籠っていた。どうやら会議の議事録の作成に追われていたらしい。目の下に隈ができ、目も赤い。充血している。

 「付き合うも何も護衛なのですが…」

 「御託は良い。とにかく付き合え!」

 どこかテンション高い。今なら箸が転げただけで笑いそうである。

 「休暇だ!」

 それはシャーリーにとって面倒な一日になりそうだった。 


どうも箸が転げただけで笑いそうなカメレオンです。えぇ中途半端ですが体力が限界でして正直、誤字脱字も分かりません。とりあえず明日の更新前に多分修正が入ると思います。…あと3~4話で過去編が終わる予定ですお楽しみください。てなわけで…おやすみなさい!


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