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シャーリー  作者: カメレオン
第一章
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少年との出会い

 お久しぶりです。新作投稿しました。(過去作完成させろって?悪いとは思ってるんです。プロットはあるんです。近いうちに頑張りますから許してください。)

 

 深い森のなかで子供が歩いている。背は小さく、腕も細い。気温は低く足元には雪が積もっている。

 子供の恰好はそんな雪景色に似つかない格好だ。肉食動物の毛皮だろうか。毛皮の毛は太く草食動物に見られるきめ細かさよりも雄々しさを感じさせる。子供はそれを肩から被って寒さに震えている。足元に毛皮が届いてなく膝から下が丸見えだからであろう。

 靴も履いてない。足はとっくの昔に凍傷を起こしており皮膚は切れ鮮血が雪に化粧を施していた。

 風邪をひいているのか呼吸は大きく息も上がっている。

 そんな過酷な環境下にあっても子供は足を止めることなく歩いていた。だが行き先は未定なのか足取りはフラフラとしたものである。

 「アオォォーーン」

 動物の鳴き声。恐らくは狼の物だろう。冬の食料を探しに出歩いているのだ。獲物を見つけたことを仲間に知らせているのかもしれない。

 子供は走り出した。自分が食べられる獲物だと子供は直ぐに理解したのだ。病で重い体を動かす。

 だがそんな子供より彼らは早い。雪道を軽々と走り群れを先導する狼を筆頭に続々と仲間が集まってくる。

 子供は必死に体を動かす。木の隙間を縫い体の小ささを利用しながら走る。狼たちは生まれついてのハンターだが、子供には彼らに負けない経験があった。

 だが運が悪かった。もし今が夏でいつものように自由に動ける大地があったのなら子供は逃げ切れただろう。もし今、子供が足を切っていなかったら。もし今子供が病にその身を侵されていなければこの冬を乗り切れていただろう。

 だけども現実は非常で平等に人に死を与える。子供はそれが早かっただけの話なのだ。

 狼たちは瞬く間に子供を取り囲み狩りの体勢に入る。円になりゆっくりと子供との距離を詰める。小さくうなり捕食者の眼光をもって子供を見据える。彼らもまた平等に死の恐怖に追い詰められているのだ。

 狼たちの体はあばらが浮き痩せていることがわかる。空腹は動物を等しく狂わせる。体は理性を超え生きるための行動をとらせる。本来なら見向きもしない獲物すら餌となるのだ。

 餌が潤沢にある夏なら子供は無視をされていたかもしれない。だが狼たちも必死だ。

 今子供は手ごろな餌となったのだ。

 狼が飛び掛かった。子供の肩に牙がめり込む。狼はそのまま子供を押し倒す。続いて群れの仲間が腕と足を噛む。逃げられないように頭を振り子供に的確な損傷を与える。

 「あぁぁ!」

 短く叫ぶ。だが深い山の中助けは来ない。子供の血は雪を赤く染め上げる。あたりに血の匂いが充満し始める。だがそれは狼たちを喜ばせるだけのものにしかならなかった。

 最後の狼が子供の首めがけて飛ぶ。首を折りとどめを刺すのだ。

 子供が人から肉に変わる瞬間だった。本来ならば子供は肉になるはずだった。だが狼の牙が子供の首に届くことはなかった。

 雪が赤く染まる。だがそれは子供の物ではなかった。狼だ。絶対の王者だった狼から流れ出た血液が雪を赤く染め上げているのだ。

 「パンッ!」

 弾けた音と共にまた一つ肉が増える。子供の手が自由になる。

 「パンッ!」

 今度は足が。

 「パンッ!」

 そしてついには肩までもが自由になった。

 残った狼は一匹もいなかった。

 「気を失ってるか…そりゃそうか。」

 子供に影が下りる。影の持ち主は声が高く女だと思われる。赤いダウンと黒い男物のズボンを履いているその姿は帽子も相まって遠目からでは女だと気づけないものだった。

 「しかし現代人は毛皮で出歩くのかねぇ」

 そういうと女は子供を担ぎ雪の中を進む。重さなど感じさせることのない歩みで雪の中を進む。

 「君は何か知っていると嬉しいなぁ」

 そういいながら女は鼻歌を歌いながら雪の中を進むのだった。



 子供が目を覚ました。目覚めたばかりで現状を把握しきれていなかった。最初に目に飛び込んできたのはコンクリートで出来た天井とオレンジ色の照明だった。

 「つぅ!」

 子供の体に痛みが走る。だがその痛みのおかげで意識が完全に覚醒した。子供がゆっくりとあたりを見渡す。そこは今まで子供が暮らしてきた環境とは大きく異なった空間だった。

 いつもの地面とは異質な硬さを持つ床。体にかかる大きな白い布。なにより違ったのはいつも着ていた毛皮が見たこともない軽い服に変わっていたことだ。

 「おっ気が付いたぁ?」

 おどけた空気を纏って部屋に入ってきたのはやはり子供を助けた女だった。先ほどまで来ていたダウンを脱ぎグレーのシャツを着てフラフラと歩いてくる。

 「しばらく痛むと思うけど必要な処置はしてあ」

 女が喋るのを遮ったのは子供だった。彼は飛び掛かり女の足を引っかけ転がす。肘を使い女の顔に体重を乗せた。

 それは人間はおろか体格が同等程度の動物でも十分に損傷を与えるものだった。

 「くぅ!」

 悲鳴を漏らしたのは女ではなかった。

 「ダメじゃないか。仮にも命の恩人に暴力をふるっちゃ。ロボットでも傷つくんだよぉ」

 子供の肘を襲ったのは石を殴ったような歪な痛みだった。決して自然界では負うことのない痛みだった。好き好んで石を殴る者はいないからだ。 

 「自己紹介をしようか。僕はF―3020型アンドロイド。愛称はシャーリーだ。君の名前は?」

 それは子供にとって未知の出会いだった。


 

 「少年…私そろそろお返事が欲しいなぁ、少年の名前は?」

 少年と呼ばれた子供は白い布を体に纏わせ小さく体をまとめている。だが目はシャーリーからそらすことなくじっと様子を見ている。その目はさっき少年を襲った狼と同様の物だった。

 シャーリーもこの態度には手を焼いている。シャーリーは会話がしたいのに彼は一向にコミュニケーションに応じてくれないのだ。

 (どこでまずったかなぁ。会話が出来ないと何もできないよ。)

 シャーリーは部屋に置いてある椅子に座り机に入れてあるプロテインゼリーを取り出した。

 ガタッと言う音がした。

 (うん?)

 少年は不思議な物を見るような目でそれを見る。シャーリーがプロテインゼリーを右に動かせば右に。左に動かせば左に少年の体が動く。

 シャーリーがプロテインゼリーの蓋を空け中身を出すとこれまた驚いたような顔をする。

 (試してみるか。)

 シャーリーはプロテインゼリーをチュウーという音共に一気に吸い込んだ。

 少年の目がキラキラと光る。

 (やっぱりおなかが空いているのか)

 「お食べ」

 シャーリーは机からもう一個プロテインゼリーを取り出し少年の前に差し出した。少年は恐る恐るそれをとりシャーリーと同じように吸い付いた。だが少年の口にゼリーは入らなかった。瞬間少年の顔が憤怒にそまった。

 「待て待て!蓋を取りなさい!」

 シャーリーは少年からプロテインゼリーを取り上げさっきと同じように蓋をとりもう一度少年に差し出した。

 だが少年は食いつかない。騙されたと思っているのだろう。

 「今度は大丈夫だからねっ?だから食べてくれる?」

 シャーリーが子供をあやすような声で語ると少年は警戒を緩めてゆっくりとゼリーをすすりだした。

 それは少年にとって未知の出会いだった。今まで食べてきた食事では出会うことのない味だった。気に入ったのか一気にすする。

 (こうしてると普通の子供なんだけどなぁ)

 さっきの動きはシャーリーの認識している子供の動きではなかった。従来の子供の動きを超えたものだった。

 (私が目を覚まして早二か月。ようやく見つけた人間がこれかぁ。きっついなぁ。)

 シャーリーは自分の知識とは違う現実に振り回されていた。

 少年はゼリーを吸い終わったのか容器を小さく持ちまた小さくまとまっている。

 「ねぇもう一回聞くね?君の名前は?」

 シャーリーは懲りずに再アタックを仕掛けた。例え自分の認識が現実と違っても諦めるわけにはいかないのだ。

 「あーまぇ?」

 返事が返ってきた。その事実にシャーリーは思わず笑顔になる。

 「そう!名前!」

 「あまぇ…あまぇ」

 だが期待していた答えは返ってこない。それどころか名前を舌足らずな言葉でひたすら繰り返す。

 (噓でしょ…こんなことってある?)

 「あまえ!あまぇ!」

 シャーリーは理解した目の前の推定9歳にもなる少年は言葉が喋れないのだ。

 (くそったれがぁぁ!)

 シャーリーは心の中で叫んだ。


 この物語はF―3020型アンドロイドシャーリーが少年と共に未だ見ぬ人と記憶に残っている文明を探しに行く子育て冒険譚である。


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