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変人部  作者: つらら
6/9

お泊まり

 何故心が昼飯について来たのか……それは多分昨日晩飯の後、俺が楓と付き合った理由を話すのが面倒になり適当にあしらったのが原因だろう。


 まぁ昼飯を一緒に食べる事そのものは別に構わないのだが、目立つのは御免被りたいものだ。


「で? どういうつもりだ?」


 中庭のベンチに俺を真ん中にして座り弁当を出したところで俺は楓に向けそう言った。


「どういうつもりっていうのは?」


 楓はツインテールが似合わない大人びた表情で質問を質問で返してくる……心は頭にクエッションが出ているがこれは仕方ないだろう。


「何でわざわざ教室に来たんだよ」


「え……? 恋人が一緒にご飯食べるのっておかしい事? 心さん、おかしいと思う?」


 なんて白々しい奴だ……てか何にも知らない心に振るんじゃない! 明らかに俺の分が悪いだろ。


「うーん……私はおかしいとは思わないけど、お兄ちゃんが言うって事は何か意味があるんだと思うよ?」


 天使……か? ウチの妹は天使なのかな? お兄ちゃん少しだけ信用が重いけど頑張れそうだよ!


「残念だったな楓ミリガン! 心は俺の味方だ!」


「仲……良いんだね。私という恋人がいるのに? もしかして禁断の愛がそこにあるの? 近親相姦なの?」


 あ、猫被るのやめたみたいだ。


「ええ⁉︎ 何それ? そんなの全く無いよ! やめてよ華香院さん‼︎」


 心よ……動揺などしなくていい。コイツはそういう女なんだ。





―――――――――――




 そしてそれから昼飯を食べながら楓と付き合うに至った細かい理由を心に話した。


「なるほど……お兄ちゃんに恋人が出来るなんておかしいと思ったんだよ」


 まぁ意味は分かるが、俺以外が聞いたらただただ失礼な感想だな。


「えー? そう? ノア顔は良いしそこそこモテるんでしょ?」


 完全に部室での喋り方になった楓。


「華香院さん? 喋り方そんなんだったっけ?」


「いーや? いつもは愚民が馴れ馴れしく接して来ないように話しかけずらい空気を出してんのよ!」


「愚民て……華香院家の令嬢が言うとリアルだよ」


 華香院家の令嬢?


「何? 華香院家の令嬢てコイツお嬢様なの?」


「何言ってんのお兄ちゃん? どんだけ人に興味ないのよ……私は初めお兄ちゃんが逆玉狙って付き合ったのかと思ってたくらいだよ」


 何言ってんだ心は? 俺ほど人に興味を持って生きてる奴はそうそういないと思うぞ?


「へー金持ちなのか。まぁ俺には関係無いからどうでも良いけどさ」


「関係無いって事はないでしょー私達付き合ってんだからさー」


 まぁ一応付き合ってはいるけど……時給でもくれるのだろうか?


「面倒を避ける為に付き合ってるだけなのに関係あんのか?」


「面倒を避ける為? あーそんな事も言ったねー! でも私は言ったよね? 本当に付き合おうよって」


「言ったね、だから?」


「だからって……たがら本当に付き合ってるんだよ私達は!」


「それは、ゆとりを騙す為に言った事だろう」


「私そんな事言ってないけど」


「え、いやあの流れはどう考えたって」


「私そんな事言ってないけど」


 何これ俺が悪いの?


「わかった……ちょっと待て、じゃあ本当に付き合っているんだとして、お前は俺が好きなのか?」


「外見は好き! 性格はー……まだよく知らないけど、変人部の皆って可愛いじゃん? まぁ私が1番可愛いんだけど……そんな可愛い私達を見て平然としてるノアには正直興味を持ってしまったね! つまり恋だね!」


 何言ってんだコイツ病気かよ?


「え? 華香院さん知らないの? お兄ちゃん視力めちゃくちゃ悪いのに何故かコンタクトとかしないから、皆の事おぼろげにしか見えて無いよ?」


「え? じゃあ……私の可愛い顔見えてないの?」


「いやいや視力が悪いって言っても多少は見えてるよ? この子は可愛いっぽいなーとか顔のバランスくらいはだいたいわかってる! それにクラスの皆が噂するくらいだから変人部の皆が可愛いのも理解してるよ」


「……変人部にようこそ」


 ふざけんな! 変人扱いするんじゃねーよ! 視力悪いからって眼鏡かけないだけで変人かよ! 

 心には何度も眼鏡作りなよって言われたけど……実際多少見えれば困らないしな。近づけば文字も読めるし、人の顔なんてなんとなく表情がわかれば困らないし。


「心さん……心ちゃん、いや呼び捨てで良い? 良いよね? 心……ノアって変な人だね」


「え? あ、うん別に良いけど。お兄ちゃんは変人だよ? 妹の私が言うんだから間違いないよ!」


 何か勝手に変人認定されてるし……まぁいいか。


「うん……でも尚更興味深いね! 高校卒業したら結婚かな? ママとパパに付き合った事言わないと」


「結婚かな? じゃねーよ! 言うな! あれ? でもお前と結婚して損はしないか……」


「そうだよー! 私見た目通りエロいし!」


 それは知らねーよ……見た目はエロくないしな。


「あ、じゃあ私知りたい事も知れたしそろそろ戻るね! またね華香院さん」


「うんまたねー」


 お兄ちゃんには何もないのか……心……大人になって……

 心はスカートを揺らしながら小走りで去って行った。


「良かったのか? お前の本性を口止めしなくて」


「え? あの子は余計な事言わないでしょー」


「まぁそうだけど……楓ってお嬢様だったんだな」


「そうだよ! おめでとう!」


「何を祝われてるのかは知らんけど」


「結婚をだよ」


「ああ……祝われたんじゃなくて呪われたのか」


「私と結婚したい人が何人いると思ってんの? 軽く100万人くらいはいるんだよ!」


「じゃあ俺は希少だな……結婚したくないし」


「希少だね……私と結婚出来るんだから」


 駄目だコイツ早く何とかしないと……


「でもなるほどねー目が悪いから私にくっつかれたりしても動揺しないのかー」


「いや、さすがに腕にくっつかれるくらいの距離になれば顔も結構見えるわ」


 そう、俺はさっき腕に纏わり付かれた時、初めてちゃんと楓の顔を認識したが、クラスの男子が騒ぐのも無理は無い。

 はっきり言って相当整った顔をしていた……変人部が全員このレベルだとするならば沢山ある部活の中でダントツの容姿レベルだろう。


「えー見えてるのに動揺しなかったの? 他の男子だったら下半身に血がいきすぎて貧血起こすところだよ?」


「まぁ、妹がいるからな。兄弟に女がいる男は耐性があるもんだよ」


「まぁ確かに心は可愛い……変態じゃん! 近親相姦じゃん!」


「そういう話しじゃねぇ! しかも万が一そうでも近親相姦じゃあねぇよ! 血繋がってないからな!」


「え? 血繋がってないの?」


「父親が再婚した人の連れ子だよ」


「なん……だと? それはマズイよー! 親がいるといっても血の繋がりが無くて可愛い女の子とひとつ屋根の下なんて間違いが起こっても――」


「2人暮らしだから」


「はぁ?」


「いやだから俺と心は入学と同時に引っ越して来てるから、2人で暮らしてるよ」


「不潔です! これはもう間違いが起こってると見て間違いが無いよ!」


 あるのか無いのかはっきりしろよ!


「あのねぇ……大体血繋がってる訳ないだろ? 兄妹が同じ学年にいるんだから」


「……確かに……じゃあ明日土曜日だし今日ノアの家泊まりに行くよ!」


「は? いやいや無理だわ」


「なんでよ? 初めては夜景の見えるホテルでとかそういうタイプ?」


「いやそんな訳ないだろ。そもそも心と住んでるんだから勝手に判断出来ないし」


「じゃあ心に了承を得れば良いのね?」


 言いながら立ち上がろうとする楓。


 行動力が金持ちのソレだ……おそらく心に言ったところで俺が良いならって言うだろうから意味は無い。


「待ちなさい、親になんて言うんだ? 嘘を吐いて面倒な事になるのはごめんだぞ」


「え? 親には彼氏の家に泊まるって言うよ? 私がパパとママに嘘を言うわけないじゃん!」


 勘弁してくれ……面倒事を避ける為に付き合って非常に面倒くさい事になってきた。


「何しに来る気なんだよ?」


「え? 泊まりにだよ」


「そうだよね! じゃなくて……もういいや抗う方が面倒だ」


「さすがノアー! 物分かりが良いね! 素敵だよ! 好きになりそうだよ!」


「それは困るけど、今度からは好きになってから付き合え」


「今度なんてないよ〜! このまま結婚するだろうしさ〜」


 はぁ……何のラブコメだよこれは。

 ラブコメの主人公って鈍感か馬鹿しかなれないんじゃないの? 


「まぁ、俺そろそろ教室戻るわ」


「あ、じゃあ私も〜」


 そしてまた腕にストラップを付けて教室に戻る事になった。

 


「人夢! お前華香院さんと付き合ってんのかよ〜てか人に興味あったのな!」


「確かに意外だな! 人夢が人と関わるなんて」


 教室の前で楓と別れて教室に入るとこれだ……


 何だこいつら名前も知らない、馴れ馴れしいし、意外ってお前ら俺の事顔と名前しか知らないだろう。


「そうか? 俺だって興味のある人とは関わるぞ?」


 そう言い俺は俺にとってのモブを通り過ぎた。

 うむ……実に感じ悪い! だが事実だ。

 これに懲りたら俺に話しかけないでくれ。


 そして平和な授業が終わり放課後になったので、無活動の部活動に向かった。

 ゆとりはいつも通り先に来ている。今日は絵麻ももう来ているな……楓がいないが、まぁいいか。


「希望君、華香院さんがお泊まりセット持ってくるから待っててって」


「え、あーそうか」

 

 くそ……やっぱりやめて帰ってくれたわけじゃないのか。


「どう希望? そろそろ己の行いを呪いはじめたんじゃない?」


 絵麻が机に頬杖をつきながら言った。


「いや、俺は基本後悔はしないんだ。面倒な事はあるけど俺の1番の才能は現状を楽しむ事だしね」


「そう、なら良かったわね。楓は頭は良いけど自己中だから苦労するわよ」


「苦労するくらいなら別れるけどね」


「あ、そう言えば先生が部活動の内容決まったから月曜日に発表するって」


 ゆとりが俺と絵麻に向かってそう言うと、絵麻が眉間にしわを寄せ溜息を吐いた。


「今度はどんな面倒事を持ってくるのかしら」


「そういえば絵麻は2年か、前年は部活動何やってたの?」


「イジメを無くしてたわ」


 うわぁ……めんどくさいわ。


「無くなったの?」


「戦争は無くなるの?」


「まぁ無理だろうな。少なくとも先生が持ってくる部活動がイジメを無くせだったら俺は部活を辞めるよ」


「どうして? 希望君はイジメがあってもいいと思っているの?」


「そんなわけないだろう。でも俺はやらない」


「どうして? 責めているわけではないけど理由を知りたいな」


「責められてもいいから理由は話さない……ミステリアス男子で行くわ!」


 イジメを無くそうって考えは素晴らしいが、失敗する事もあるんだ。


「話したくないかぁ……わかった。しつこく聞いちゃ悪いし諦めるね!」


 やはり良い子だなゆとりは!


「そう、ゆとりが諦めるなら私が聞くわ、話しなさい希望」


 さすが絵麻……空気を読まない。英雄になるのはこういうタイプだろう。


「そういえば絵麻、洗濯物は大丈夫だったか?」


「話しを誤魔化すの下手すぎないかしら?」


「いや誤魔化すつもりは無いよ? 話すつもりが無いだけで」


「私も諦めるつもりは無いわ」


「お前さぁ……ゆとりを見習えよ。誰にだって話したくない事の一個や百個くらいあるだろう」


「そうね、百個や二百個くらいはあるでしょうね」


 増やしただと? こいつの前でボケたら、ただのボケで終わってしまう!


「仕方ないわね……なら私の話したくない事を一つ話しましょう……私は中学一年の時に実の父親に犯されかけた事があるの」


「やめて? 本当にそういう重い話しは……でもされかけたで良かったよ本当に」


 ゆとりは愕然としている。無理もない、いきなりこんな事を言い出す奴はいないだろう。


「そうね、良かったわ本当に。じゃあ次は希望の番よ」


「いや俺は話さないけどね?」


「私の秘密を聞いておいてあなたは話さないの? いい度胸ね、嫌いじゃないわ……まぁこれ以上聞いても話さないのでしょうね、無駄な事はやめるわ」


「ああ……俺も今の話しは聞かなかった事にするわ」


「何言っているのよ? せっかく話したんだから聞いた事にしなさい」


「絵麻がその方がいいならそうするよ……今は解決してるんだろ?」


「あら優しいのね……心配してくれているのかしら?」


「まぁ……もう知らない仲ではないしな」


「安心なさい。母親が有能な人だから、父親が私に関わる事は二度と無いわ」


 そういう事じゃ無いんだけどな……


「そうか」


「おまたー」


 話しが一段落した所で楓が部室に入って来た。


「お前早すぎない? 何処の教室がお前の家なの?」


「やだなーあの後連絡して持ってきてもらったに決まってんじゃん」


「それで? なんでキャリーバッグなんだ? 安心しろ俺の家は日本だ」


「知らないよ! お泊まりするから荷物持って来てって言ったらこれ持って来たんだもん。それより校門所でパパがノア呼んで来いって待ってるからいこー」


 終わった……何で付き合って2日で父親に会わなきゃいけないんだよ……勘弁してくれ。

 

 あー……めんどくせぇ。








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