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後輩ちゃんは後輩ちゃん

先輩の存在は以前から知っていた。龍城ヶ崎玉藻先輩や千城島薫先輩よりも以前から。


(そう、マキナは先輩と同じ中学の出身______)


彼が髪を伸ばす以前の彼を知っている。今は皮肉屋で臆病で、とても可愛らしい性格になりはしたが先輩の本質は変わっていない。昔からあの先輩は優しいのだ。そう、優しかった。


『あんたさぁ、うざいんだけど』『てか何で学校なんか来てるわけ?』『根暗の癖してさ』


中学の頃、マキナはイジメられていた。彼の様に前髪を伸ばしていたのだ。かつてのマキナは他人の視線が耐えられなかった。小学生の頃、子役などと言う親のエゴに付き合わされたせいでちやほやされた。マキナは可愛い。だけど、限界もある。あの腐り切った大人の視線が耐えられなかった。それ故に中学一年の半分は引き篭もっていた。


『そのうざったい髪切っちゃおうよー』『それ賛成ー』


やめて離してと言っても彼女達は離さなかった。そこは校舎裏、誰も来ない。助けは現れない...........と思ってた。


「あー、お取り込み中?」


お弁当箱を手に持つ彼は偶然、そこに居合わせたのだ。あぁ、なんて美しい人なんだ。外見的に評価すると、彼以上に綺麗な人を見た事がなかった。彼こそが噂の_______


『え、嘘!?先輩が何で』『ち、違うんです、これは!』『そう!ただ遊んでいただけなんです!!』


すると先輩は彼女達の元へと歩き、耳元で一言告げる。


「_________失せろ。」


すると彼女達は血の気が引いた様にその場から走って去って言った。


「君も災難だね___________せっかく可愛いのにどうして隠してるの?」


前髪を上げられにこりと微笑を受かべる。マキナは赤面した。何だこの少女漫画の様な展開。嬉しいけどもさ。


「あの、あまり、目立ち、たく、ない、です。だから、髪を、伸ばしたん、です。」

「そうか。そうだね。ケイトも言ってたなぁ。髪を伸ばせば俺の悩みもなくなるって。うん、踏ん切りがついた。」


先輩はそう言うとマキナから離れる。


「自信を持って。君なら彼女達を見返せる。」


その言葉を最後に先輩はその場を去っていった。正直に言うけれど、先輩と話したのはこれだけだった。これだけだったのだ。けれどマキナは先輩に一目惚れしてしまった。だからマキナは先輩の通う高校を調べ上げ、受験した。かなり離れた場所だったけれど、後悔はない。


「_______マキナちょー美少女なんだけど♪」


彼の言葉を受けたマキナは直ぐにイメチェンをし、ハイカーストに君臨した。そして高校でも一年生の間ではマキナは一番の美人であると周囲に認められている。


(だけど学園の一番じゃない。)


モデルの千城島薫先輩、名家の龍城ヶ崎玉藻先輩、現生徒会長である夜桜雅先輩。何だこの学園?何でアイドルやモデル級の美少女がわんさかいるんだ?マキナの存在が埋れちゃうじゃないか。


(なにより一番にいらつかせるのが、彼女達全員が先輩に纏わり付いていること。昔は夜桜先輩だけだったのに。何で先輩に群がるんだろう。)


先輩は顔を隠してるのに。それなのに、何で群がるの?もしかしてバレた?そうか、バレたんだ。先輩を一月ほど学校で観察をしていたが、先輩はどうも他の先輩方達と距離を置きたがっている様に見える。山田先輩としかつるみたがっていない。その山田先輩は先輩とはつるみたがってはいないが。


「_____マキナちゃん、今日は新しく入るバイトの子が来るからちゃんと面倒見て上げるのよ?」


先輩の事ばかりを考えていた為、パパのいきなりの発言に耳を疑った。


「え?パパ、バイト雇ったの?そもそもお客さん少ないじゃん!」

「え、やめた方がいい?」

「いや、そこまでは言ってないけど。大丈夫なの、その人?」


本当は嫌だった。パパと守り続けて来た喫茶店に他人を入れるなんて。だけどその考えは直ぐに変わった。


「パパーただいまー」


だってマキナの家にいたのは______先輩だったのだから。

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