幼馴染の様子が.......
「させないよ.......」
幼馴染(処女)は自室の部屋のドアを閉め、小さくそう呟く。ぷるぷると身体が震え静かに椅子へと腰を下ろす。
「誰にも渡さない.........」
共に写る幼馴染の写真立てへと視線を移し、幼馴染である男を指でなぞる。
「彼は私以外の女じゃ駄目なんだ............あげないよ、誰にも。」
席を立ち上がり、カーテンの隙間から幼馴染の家を覗き見る。
「だって私達は『幼馴染』なんだから。」
休日と言うのは快適だ。一人だらだらと過ごすせるのだから。
【もう〜お兄ちゃん!まだ寝てるのぉ?悪い子は早く起きないとイタズラしちゃうよぉ!】
パソコンの画面から聞こえる声。それをニマニマと気持ちの悪い表情を浮かべながら独り言を呟く。
「あぁ、そうだな。直ぐに起きるよ。お兄ちゃんは良い子だからな。」
妹はいない。ましてや姉もいない。一人っ子だ。親も都合で単身赴任や海外出張など行っていない。下で今頃はテレビでも見ているのだろう。
(現実なんてそんなもんだろう。ましてやアニメや漫画みたいに幼馴染がいるだけで奇跡と言ってもいい。)
「ん、そろそろあいつとの約束の時間だな。」
先日、合コンに行く約束をしたのだが、友人が既にセットアップしたと朝方にメールが来た。
「まぁ、あいつは女以外だと案外と友達が多いからな。」
横の繋がりがかなり強いのだろう。それ経由で何とか合コンにまで持ち込んだと予測出来る。
「あら、何処かに出掛けるの?」
「あ、うん。ちょっと友達と映画でも見てくるよ。」
「そう、気をつけて行ってらっしゃいね。」
玄関で靴を履いていると母が声をかけて来たので、返事を返す。行ってきますと玄関の扉を開けると晴天の空から光が指した。
「今日はいい天気だな。」
「そうだね。何処かにお出かけ?」
家を出て歩きだそうとするとコンビニ袋を持った幼馴染と鉢合わせしてしまう。まぁ家が隣同士なので良くある事だ。
「うん、そうだね。」
「何処に行くの?」
「合コンに「行かない方が良いよ。」
すべてを言い切る前にこの幼馴染は言葉を挟む。
「俺もそろそろ、彼女でもつく「らなくていい。」
幼馴染の様子が何処かおかしい。
「なんでだよ!」
苦笑をしながらそう呟く。
「...........知らない女の子とキスするの?」
「いきなりだな。まぁ、雰囲気が良くなったらするんじゃないのか?」
友人(童貞)の事を言えないが、彼女いない歴=童貞の俺にとっては正直分からない。
「駄目に決まってるじゃん.......」ぼそ
「今、何か言ったか?」
幼馴染は下を俯き、ボソボソと何やら呟いている。
「_______私が練習相手になってあげるよ。私の部屋に行こっか。」
手を強く握られる。
「待て待て!」
歩き出そうとする彼女を即座に止める。
「何かな?」
「何かなって........彼氏先輩がいるだろ。」
「其れが何?」
「だから彼氏持ち相手にキスは出来「るよ。今どきキスなんて誰とでもするでしょ?昔、私達だってしたし。」いや、してないだろ!」
今日の幼馴染は様子が可笑しい。
「あ~もう!君はさ、黙って私の部屋に来れば良いの!」
「あいつと合コンの約束があるから無理って言ってるだろ!」
「だから行かなくて良いってばぁ!」
幼馴染の言っている事は無茶苦茶であった。練習相手になると言った手前、行かなくていいとは矛盾している。