旅人たちの道標
7話目です。ラッキーセブンです。...言ってみただけです。
「ともかく、これにてキャラクターメイキングは終了です。お疲れ様でした。ここからチュートリアルを受けることができますが、いかがいたしましょうか」「お願いします」
こういう時に基礎をしっかり納めていないと後々致命的だ。受けて損はないだろう。
「承知いたしました。それでは専用フィールドに転送します。転送先で、チュートリアル担当のAIに指導を受けてください」
そう言って、僕の周りが燐光に包まれ始まる。
「本当に今までありがとうございました。えっと…なんて呼べばいいですかね」
僕がそう言うと、どうやら『彼女』は驚いたのか、僕を包んでいた燐光がたちどころに弱まった。
「そう、です、ね…私は、固有の名称を持たずに生まれましたからね…」
そんな風に言った『彼女』の口調は、どこか寂しそうだった。
「あの、ベディ様、お願いがあるのですが」
そして唐突に、『彼女』は問いかけてきた。なんだろう。
「『わたし』に、名前をつけてはいただけないでしょうか」
成程…でもなぜ今?というか、そもそも僕なんかでいいのだろうか。
「はい。お願いします。何故だか自分でもよく分からないのですが、どうしても、貴方から名前を付けてほしいのです」
なんだか、切羽詰まっているような気がする。気のせいかもしれないけど…
「分かりました。そう言うことなら。では…そうですね…フーム…」
熟考3秒。
「『ポラリス』はどうでしょうか。旅人を導く、ということで、北極星」
そう僕が告げた直後、どこかから声が聞こえてきた。
「ポラリス…ポラリス。私の名前は、ポラリス」
なんだか自分に言い聞かせているような声音だ。こんなんで良かったのだろうか。
「そんなこと言わないでください!わたし、今とっても『幸せ』なんです!ああ、名前があるだけで、こんなに変わるなんて!」
そう告げる『ポラリス』の言葉は、まるで飛び跳ねるように軽やかで、美しかった。
「そうですか。喜んでもらえたなら、それでいいです。それじゃあ…」
そう、いつまでもここにはいられない。実際、僕の体を包む燐光の勢いは徐々に強くなってきた。
「ええ。ここでお別れです。でも、もしかしたら、またどこかで会えるかもしれませんよ?」
…ゑ?
「基本的に、わたしたちAIはゲーム世界…あちらでは舞台の大陸を『へディス』と呼称していますが、割と自由にポンポン訪れていますよ、レジャー感覚で」
さ、さいですか。じゃあ、このしんみりした空気はどうすればいいのか。
「諦めてください」
oh。
「それから、お礼といっては何ですが…」
ポラリスがそう言った瞬間、目の前にウィンドウが現れた。そこには…
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「ポラリス」からフレンドコードが送られてきました。
受諾しますか? yes/no
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「これは…?」「フレンドに登録すれば、フレンドがログインしているかわかる上に、フレンドと通信を行うことができます。その他にも色々メリットがありますが…受け取っていただけませんか…?」
断る理由など、ある筈がない。当然、yesを押す。
「あ、ありがとうございます!」
物凄く嬉しそうな声が返ってきた。彼女に表情があるかわからないが、多分、満面の笑みを浮かべていることだろう。
「それでは、これでしばしのお別れです」
その言葉と共に、燐光の輝きが一層強くなる。
「ポラリスさん、今回は本当にお世話になりました。あっちで会うことがあれば、その時はよろしくお願いします」「ええ、こちらこそ。ベディ様、ほんとうに、本当にありがとうございました」
いや、そこまで感謝されるほどじゃありませんよ。でも、そこまで言ってくれるなら、結構頑張って考えた甲斐があるなあ。
「ええ、本当に、ありがとうございました。それでは、転送開始します」
そうポラリスが告げた直後、僕の視界は輝きに塗りつぶされた。その向こうで微かに声が聞こえてきた。
「旅人よ、どうか、その旅路が良きものでありますように…」
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