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魔王少女と一から造る上級ダンジョン  作者: リンダリンダ
3/3

受難な始まり

うーん、世界観の説明って難しいなぁ

空気がおいしい。

こんなに澄んだ空気は始めてかもしれないです。

少し高い位置に移動してきた太陽の暖かさと、一面の草を凪ぜるそよ風が心地良く

さらに足取りを軽くしてくれます。

あの木から歩き始めて15分・・・、今のところ旅の開始は順調です。

新しく出来た相剣(あいけん)? 

(正確には柄の紅い宝石が本体、もとい聖霊としてこの世界に顕現するための触媒だとか・・・)

リンとの会話も弾みます。


今はリンにダンジョンとはの講義を受けています。

彼女いわく・・・


『・・・つまり、ダンジョンとは武力の捌け口なのさ。

 人族同士の大きな争いが起こらない様にするためのね。

 お宝や、魔物のドロップアイテム、希少な素材、それに魔物の驚異で焚き付けて

 国や組織に同族で争うよりも、ダンジョンに対応することに力を使わせる訳。

 だから、お宝や魔物の素材という希少価値の高いモノで冒険者達を惹き付ける様なダンジョンも

 驚異として、常に警戒、畏怖される様なダンジョンも必要な訳。』


「うーん、分かる様な、分かんない様な・・・

 それって、上手くいくものなの?」


いや、いまいちピンときてないからわかってないってことなんだけどね。


『上手くいくってよりも、上手くやる。

 そういうシステムとして機能させるのさ!

 それが神達の仕事であり、

 このシステムの核となるダンジョンを司るのが魔神な訳なんだけどね・・・』


「・・・上司が無能って、残酷だね。」


『・・・ははは、サイカって容赦ないなぁ!

 まぁでも、魔神(あいつ)がここまで失敗続きなせいでお手上状態な訳だから、自業自得かな。

 教えてあげる。今、この辺りがなんて呼ばれてるか、

 【初心者の穴場、グランパス草原】さ!』


「・・・初心者の穴場?

 ここには上級者向けのダンジョンを作るんじゃないの?」


『まずね、この【グランパス草原】。

 西の街【ビファーレン】と東のドワーフ達の街【サガント】を結ぶ街道でさー

 ドワーフといえば武器や、防具造りの達人な訳じゃん。

 つまり、装備を買いに行く冒険者達や買い付けに行く商人達の通行が頻繁な訳よ。

 今日はたまたま、まだ誰ともすれ違ってないけどね。』 


正確にはあの木の影に隠れて、馬車2台をやり過ごしてるんだけど・・・

ちょうど、ザック、ザックと穴を掘っていてしゃがんでいた為、気がつかれなかったみたいですね。

馬車の行者さんにも、この相剣あいけんにも。


それにしてもドワーフとはまた王道ファンタジー的な・・・

早く会ってみたいです!


『更にこの草原、もともと繁殖している野生の魔物は弱くて狩りやすいときている。

 そんな訳で街の南にある大型ダンジョン【バイエルの搭】に挑む為にやって来た初心者さんたちには

 良いチュートリアルステージだったんだよ。』


「・・・ん? 街の南にもダンジョンがあるの?」


『そうそう、主に誘惑で惹き付ける(・・・・・・・・)タイプの王道ダンジョンなんだけどねー。

 まぁもちろん、うちの会社じゃなくて、他の会社が建てたダンジョンだよ♪』


王道ダンジョンかー、これは後で冒険の必要がありますね!

というか、他にもダンジョンを作る魔神がいるなら、あのだめそうな魔神(ひと)いらないんじゃ・・?


『まぁ一旦【バイエルの搭】は置いといて、話を【グランパス草原】に戻すね!

 この草原、もとは弱い魔物しか住んでない狩場としては旨味の少ない場所だった訳なんだけど・・・

 ある時期から、ゴブリンや大型のアリの出現や、その魔物達の住む洞穴型の浅いダンジョンが

 一定周期で発生するようになったんだよ。

 【バイエルの搭】最低層くらいの難易度、まさに初心者向けのお誂えのダンジョンがね。』


「そのダンジョンって・・・」


『はい、お察しの通りです。

 うちの魔神(バカ)が造り始めた上級者向けダンジョン(笑)の取っ掛かりです。』


「・・・」


『うちの会社さぁ、隠れて大きなダンジョンを設置するノウハウとか、ないんだよねー。

 あのマニュアル魔神(バカ)はさぁ、まず始めに

 アリとかゴブリンとか穴を掘ってくれる魔物から配置するんだけどさぁ・・・

 その子たちがその巣穴から湧き出る訳よ!

 当然、こんな重要な街道が通ってる草原だからねー。ギルドからは討伐依頼が出るわけ。』


「・・・」


『草原で狩りを覚えた冒険者達向けの魔物の討伐や簡易式ダンジョンの攻略クエスト!

 しかも、攻略しても攻略してもどんどん新しいダンジョンや魔物が発見されるって寸法。

 まさに【初心者の穴場】の完成、作り始めては壊される、いたちごっこだね!』


「・・・別の場所にダンジョンを作れば?

 それこそ秘境なんかでゆっくり作ればいいんじゃないの?」


『そこは、契約だから!

 この草原にダンジョンを作るっていう、うちの会社と取引先のね。

 それに秘境に上級ダンジョンを作っても駄目なんだよ。

 気がつかない危険は驚異にはならないからね・・・』


「・・・ふーん、そういうものなのね。

 重要な街道だから強いモンスターを置いてダンジョンの穴堀りをさせる訳にもいかないと・・・

 人族を発展させるためのダンジョンを作るのに、

 人族の不利益になる街道の封鎖は出来ないとってことね。」


『そうそう、さすが学士様!

 理解が早くて助かるよ!!』


「・・・だから、私は普通の中学生だってば。」


『またまたー、普通の女の子じゃそこまで頭回んないよ!』


「つまり、私の・・・

 魔王の仕事って、どっかのダメリーマンが状況を悪化させたこの草原に、

 冒険者に壊されない(・・・・・)様に上手く隠すなりして、上級者向けのダンジョンを作ることなのね。」


『そだねー、あと完成したダンジョンからはなるだけモンスターが外に出て来ないと、尚いいね!

 まぁこの平原は広いから、街道に大きな被害がでないのなら関係ないけどねー』


「・・・私みたいな初心者には難易度高くないかな?」


魔神(あれ)に比べたら、誰でも一端のダンジョンマイスターさ!

 まぁそこは、期待してるよ!

 なんたって、あたいが選んだ【大魔王】様だからねー。』


「・・・うーん、それがわからないんだよね。

 なんで私みたいな中学生選ぶかなぁ? もっと良さそうな人居たでしょうに・・・」


『それはね・・・

 むっ、!  サイカ、左の草むら!注意して!!』


突然、リンが警告してきました。



カサカサッ


5mほど先の左手、草が割れてなにやら白い塊が飛び出して来ました。

大きさ50cmくらいでしょうか?


一角(ホーン)ウサギだよ! 歴とした魔物だから気をつけて!!!』


なるほど・・・

確かにウサギっぽくはあります。

白い毛に、発達した後ろ脚、短い丸い尻尾、

耳はウサギにしてはやや小さめで垂れてて代わりにおでこから立派な角が一本生えてました。

ただ、なんだろう・・・

どうも目が血走っており、歯もまるで犬の様に尖ってて可愛いげがありません。


グルルルル


なんか、唸ってるし・・・

これ、私の知ってるウサギと違う。


とりあえず【聖霊のダガー】=リンを腰から順手に抜いて構えます。

ふぉあーどぐりっぷ? えっじあうと?

で確か、右手を前に、少し腰を落として半身になり左腕は急所を庇う様に・・・

うーん、漫画で見たそれっぽい構えだけど、これって対人戦の構えだった気がします。

とりあえず目の前のウサギ?を睨みながら・・・


「ねぇ、なんか威嚇されてる気がするんだけど・・・

 この子、襲ってくるの?」

『まぁ、臆病だけど肉食の魔物だからね。』

「・・・ウサギって草食じゃないんだね。どっちかというと野犬?」

『だいたい合ってるよ。』


グルルルル


「・・・これがこの草原の魔物ってことでいいのかな?」

『そうだよ、特にこの一角ウサギは草原の中でも強い魔物だから!

 迂闊に近付くと高い俊敏性とその鋭い角と牙で襲ってくるから気をつけ・・・』

「了解!」


まどろっこしいのはやめました。

スッとダガーを持った右手を耳の高さまで持ち上げて、薪割りのイメージで腰の回転と手首のスナップを利かせて・・・


『ちょっ!?』

「えいっ!!」


刃を回転点せながら投げつけます。

聖霊のダガーもとい、リンは一直線に一角ウサギの首に向かって飛んでいきました!

そのままサクッと・・・


刺さることはなくズボッと一角ウサギの足下に突き立ちました。


あちゃー、田舎のおじいちゃんの家に行ったとき、

暇潰しに裏の林で結構、練習したんだけどなぁ。

そんなに上手くはいかないとっと・・・


一角ウサギから一瞬ニヤリとした雰囲気が伝わってきます。

あっ、これ不味い・・・

と思って身構えたのですが、


一角ウサギが動こうとした瞬間でした。

ズルリッと一角ウサギの首がズレてポトリと地面に落ちました。


どうやらダガーは命中していたらしく、切れ味が鋭すぎて首を通過して地面まで達した様です。

いや、どんだけの切れ味なんですか?


「エッグいな・・・

 びっくりしたー。」


まさか外した?、と思って焦ってしまいました。

一角ウサギの死体に近付いて地面に突き立ったダガーを抜き取ります。


『ホンとにね・・・

 ビックリダワ。』


リンが同調してくれました。


「ねー、どんだけ切れ味いいんだろうね?」

『イヤ、そこじゃないでしょ!

 いきなり投げられてビックリしたよ!!

 まさか、戦闘初戦から放り出されるとは、夢にも思わないよ!!!』


「あっ、そっちか!

 ごめんね。いまいち、ダガーって構え方が分からなくて・・・」


『そこでもないよ!!

 あーーー、あーーー、なんでダガーなのか納得いったけど・・・

 無事倒せたのでこの際投げられたのはいいとして・・・

 なんで自然に【投擲スキル】会得してるの!?』


「あっ、これって【スキル】なんだね!!!

 他にはどんなスキルが・・・」


『そこっ!!

 そこだよ!そういうところだよ!!

 ファンタジーに順応性があり、咄嗟に動ける人材・・・

 とか思って魔王候補として選んだつもりなのに、予想の斜め上くらいに適応してるよね!?

 もう、さすが【大魔王】様だよ!!!』


「・・・あんまり褒めないでよ、テレちゃうじゃん///」


『ごめん。全く、誉めてないんだけど・・・』


「むー、投げナイフくらい。

 か、か弱い女の子の嗜みだよ!」


『か弱い女の子はこんな化け物みたら、脚がすくんで動けないからね!?

 謝って、異世界の壁を越えて【地球】のか弱い女の子の皆に謝って!!

 ついでに、気がついたらウサギの生首が上から落ちてきて、本気でびっくりしたか弱い女の子のあたいに謝って!!』


「・・・」


『・・・』


「・・・なんで、わざわざダガーなんかになったの?」


『!

 ・・・チェンジで!!

 魔王、チェンジで!!!』


「チェ、チェンジって! そっちが勝手に選んだくせに!!!」


朝の澄んだ空気と鉄の匂いの中、姦しい喧騒が響いていました。

その脇をそっと凪いだ風が、白い毛を撫でて、首を落とされた哀れな獣を慰めていました。

※当作品のヒロインはクーデレです。

 あんまり多くは話さないけど、頭の中では一杯面白いこと考えてるユーモアのある娘。

 そんなヒロインです。


 早くもキャラがぶれてますねw

 クーデレとは一体・・・

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