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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ユーリ、セドリックとの会議の話を聞く

 エルダの言う通り、ここには女性に見える人がエルダ、ルリカ、ミスティ、レイクとユーリの五人。男性はソレイユ、シグルス、エイジにアルベルトの四人いる。

 ダブルデートだとしたら、女子が一人余るのだ。


「周りからは、誰が余っているとみられているのかしらね?」

「がはははは。これだけきれいどころの女子がそろっているグループなんだぜ。余る女子なんているわけないだろうが」


 ソレイユが明るい声で言った。


「たとえば一見寡黙そうなこの騎士が一人で二人の女子を相手にしているのかもしれない、と思われているかもしれないぞ」

「俺ですか?」


 突然、指を差されたアルベルトは、とんでもないとばかりに半ば椅子から腰をあげた。

 シグルスが顎に手を当てにやにやと笑った。


「確かに二股、三股はさらりとやりそうな顔をしているぜ」


「二股、三股はさらりとやりそうな顔をしている」

「ひどい言われようですね」

「否定はできないだろう?」

「否定はできません」

「アルベルト、そこは否定するところだよ」


 レイクが言えば、嫌悪感を浮かべたまなざしでミスティが聞いた。


「二股、三股をしたことがあるの?」


 アルベルトはミスティの言葉には答えず、額を抑えてまいったなぁという表情を浮かべた。


 ぷっとエイジが噴出した。


「皆さん方、おもしろい人たちですね」

「今更の話だろう」


 ソレイユが答え、自分のブラックコーヒーをストローを使わずに、直接グラスに口をつけて飲み、顔をしかめた。


「にがっ。思ったより苦いな。エルダ、よくこんな飲み物を平然と飲めるな」

「あら、わたしが飲んでいるのは、ビターチョコドリンクよ。ほんのり甘さが効いたチョコレートの味なの」

「そうだったのか」


 ソレイユは驚いた。


「色は似てるのに味が違うのか」

「味見してみる?」

「ああ、いいのか」

「味見くらい別にいいわよ。かわりにその苦いっていう、ブラックコーヒーをわたしにも味見させてちょうだい」

「ああ、いいぜ」


 二人は自分の飲み物を交換した。


「苦いわね」

「これはうまい」


 二人は感想を言い合った。

 そんな二人の様子を探るような目つきで見るのはシグルスだ。


「二人は好き合っているのか?」

「はっ?」

「へっ?」


 エルダとソレイユは同じ反応を示した。


「どうしてそういう思考になるんだ?」

「わたしたちは同期で気さくな関係だけど、付き合っているわけじゃないわ」

「そうなのか。今の感じはかなかないい感じにみえたもんでな」

「誰がこんな男女と付き合おうなんて思うか。エルダはライバルだが、礼愛対象ではないぞ」

「言ってくれるわね。わたしもあなたみたいな雑な男はごめんだわ」


 二人はぷいと顔をそらした。


「余計な質問だったな。俺は安心したが」


 シグルスはエルダが気になる言葉をしれっと言って、言葉を続けた。


「ソレイユ、雑談は終わりにしよう。会議の話をつたえようぜ」

「ああ。そうだな」


 一気に今までの茶番のような雰囲気から打って変わって、真剣な雰囲気があたりに漂った。

 会議はアルデイル教会の建物の中にある会議室で開かれた。参加者はアルデイル教会側はセドリック一人のみだった。司祭は腰を痛めており、ヨルドの温泉地で養生中。騎士たちは、周辺の魔物討伐で遠征しているため、会議に臨めないとのセドリックの回答だった。


「管轄する町に聖職者が一人しかいないってどういうことだよって俺は思ったぞ」


 ソレイユはそうぼやいて説明を続けた。

 ソレイユはセドリックに昨夜、南に位置する農家をセドリックが訪れたかどうかを質問した。

 セドリックの回答は「訪れていない」ということだった。

 そんなはずはない。農家の家族はセドリックを確認している。そしてセドリックがアウネイロスを倒し、アウネイロスが連れていたラナを拉致した確証を得ているという話をしてもセドリックは動じなかった。

 自分を陥れようとする人物の仕業、他人の空似、そういったことを上げて認めなかった。


「なんならティテスの審判を受けてもかまいせんよ」


 余裕ありげにセドリックは言った。


「とはいえ、ここにはティテスと魔法契約している聖職者はいません。その人物を連れてきたら、わたしはいつでも審判に臨みましょう」


 ソレイユが把握しているその人物は、近いところではヨルドの町にいる。しかし、今からヨルドの町からその人物に来てもらうにしても一日はかかる。


「分かりました。明日、ティテスの審判を受けてもらう。それまでセドリック、逃げるなよ」

「わたしは逃げも隠れもしません」


 余裕気にセドリックは頷いた。

 そして、セドリックは農家の庭先にあるアウネイロスの死体は、アルデイル教会が業者を雇って、撤去することになっていることをセドリックはソレイユたちに話した。

 ソレイユがセドリックに使用できる魔法のことを質問したが、セドリックは「そんなことを聞いてどうするんです? わたしと戦うのですか?」とはぐらかして答えなかった。

 会議が終わった後、ソレイユは会議の結果を中央に報告した。そしてすぐにでもヨルドからティテスの審判ができる聖職者を呼ぶように申請した。

 さらに、エルダたちが美少女コンテストに参加することも報告した。中央からは、明日午後には、ヨルドからティテスの審判ができる人物を遣わすこと、美少女コンテストの健闘を祈ること、セドリックの動向をつねに監視すること、という三つの指示が出された。


「ティテスの審判は絶対だからね」


 ユーリは今からさほど遠くない過去に、そのジャッチを受けたことを思い出した。あのジャッチがあったからこそ、自分が水の宝珠を盗んだ盗人と共謀しているという濡れ衣が晴れたのだった。さばさばとした性格のミティシアと白と黒にはっきりと別れた色彩を持つ精霊ティアのことを思い出して、ふと懐かしい気持ちになる。

 彼女たちと会話した時間はほんの短い間だったが、自分の濡れ衣を晴らしてくれた二人に対しては、良い印象を持っている。

 人間の力ではどうしようできない事態を、一刀両断し、解決することができるのは、彼女たちが神の力を借りることができるからだ。

 そのあと星読みの占でも同じようにユーリが無罪であると出て、さらに盗人と縁ができたからということで、いやがおうにも捜索隊の一員になる羽目になったのだ。

 思えばそれほど日にちは経っていないのに、遠くに来たものだとユーリはしみじみ思う。

 あのときは、まさか女装することになるとは予想だにしていなかった。


「これはもう、美少女コンテストにかけるしかないわね」

「やっぱりそうなりますよねぇ」


 嫌そうに顔をしかめるレイク。そんなレイクにエルダは言った。


「レイク、あなた、裏声はだせるわね?」

「あ、はい」

「出してみて」

「あ、あー、こんにちは。本日は晴天なり」

「それでいいわ。ユーリはそのままでも大丈夫でしょう。女の子としては、声が低めだけど、許容範囲よ」

「……うん」


 エルダは胸元から懐中時計を取り出した。


「十一時二十八分ね。美少女コンテストは十二時からだけど、早めに動くことにこしたことはないわ。さあ、美少女コンテストの会場に向かいましょう」


 エルダの言葉に、それぞれグラスに残っていた飲み物を飲み干して、椅子から立ち上がった。


「あのときは、まさか女装することになるとは予想だにしていなかった。」


はい、中嶋も予想だにしていませんでした。

ユーリ、ごめんね!

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