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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ユーリ、ソレイユのパーティと出会う

 地上をかける人の足は遅く、すぐさまアウネイロスの姿を見失った。

 それでもアウネイロスが飛んで行った方向に向かって駆け続けた。町のはずれまで来たとき、捜索隊のパーティの姿を見つけた。

 どうして捜索隊のパーティか分かったというと、メンバーが神官が一人に司祭が一人、のいかにも旅慣れたいで立ちをしている人物が二人というパーティだったからだ。

 ユーリは彼らに近づいた。


「あの、すみません」

「なんだ?」


 先頭の大柄な体型の金髪の男がユーリに目線を向けた。歳の頃はエルダよりも少し上だろうか。神官の服装をしている。その後ろの彼の仲間たちもユーリに視線を向けてきた。


「僕はアクアディア学院の学生のユーリ・フローティアといいます。捜索隊の方々ですか?」


 先頭の神官の男が頷く。


「そうだ。俺がこのパーティのリーダーでソレイユという」

「こちらにほうに飛んで行った大きな魔物を見ません出たか?」

「アウネイロスのことか?」

「はい、そうです。アウネイロスを追ってください。あいつが水の宝珠を持っています」

「なんだって? 町中にアウネイロスがでたから、追っ払うために光の矢を放ったが。君はどうしてそれを知っているんだ?」

「僕は聖騎士エルダのパーティにいて……」

「エルダの……?」

「ソレイユさんは姉さんを知っているんですか?」

「姉さんって、君はエルダの弟なのか」

「そうです」

「俺はエルダと同期なんだ」

「そうなんですか」


 エルダより少し年上だと思ったが、同期ということは同い年ということか。ユーリは姉が歳のわりに若いのか、目の前の神官が歳のわりに老けているのか、判断に迷った。

 そんなユーリの心境を知らないソレイユは仲間たちを振り返った。


「さっきのアウネイロスを追うぞ」


 ソレイユの後ろでやりとりを見てい三人の男女が短く返事をする。


「はい」

「了解」

「分かりました」


 今すぐにも馬をかけようとするソレイユに、ユーリは言いつのった。


「僕も連れて行ってください。治癒魔法には自信があります。連れて行って損はありません」


 普段は自分からこんなことを言わないが、今はラナを助けたい思いで必死だ。

 ソレイユはそんなユーリににやりと笑うと、だまって騎上から手を差し出した。ユーリがその手を握ると、強い力でひっぱられ、ソレイユの後ろに座らされる。


「舌をかまないように口を引き結んでおけよ」


 ソレイユは言うと、愛馬に鞭をいれた。


「ここで俺にも運が向いてきたようだ。水の宝珠は俺たちが奪還する」


 ソレイユが嬉しそうに叫ぶ。

 馬車の振動もすごかったが、騎乗すると直接身体にやってくるので馬車に乗っているよりも振動は激しい。

 乗馬はユーリは学校の体育の時間に年に二、三回やるくらいで、乗馬慣れしているわけではないため、しばらくの間、ユールは振動に慣れるため、無言でソレイユの神官の制服にしがみついていた。

 そのうち、ソレイユがユーリに質問してきた。


「アウネイロスの行き先はわかるか?」

「わかりません……」


 馬の歩みを緩めてソレイユは仲間に声をかけた。


「このままやみくもに進んでいても、拉致があかない。対策を練るぞ。馬も疲れてきたようだしな」


 すぐ隣で馬を駆っていた、黒い色彩の服をした男が相槌を打った。


「そうですね」


 馬の速度を落とし、歩みを止めると、ソレイユたちは馬からおりて、道の脇に移動した。

 ソレイユが手ごろな場所にどかりと腰を落とす。

 ベルトに挟んだ袋から地図を取り出すと、直接地面に広げ、地図を覗き込んで、眉をしかめる。


「大分暗くなってきたな」


 腰にさした杖を腰から引き抜き、杖の先を空中でなぞる。


「聖なる神ホーリーの加護を


 闇を照らす

 清き光

 我らを導き給え


 光よ」


 握りこぶし体の小さな白い光の玉が空中に出現し、あたりを照らした。浄化の魔法は、白い光を発光するため、こうして光源として使用することがある。


「これで地図が見やすくなった」


 ソレイユの仲間たちが地図をを囲むようにして座る。


「俺たちは今どこにいるんだ?」


 ソレイユが誰ともなしに言うと、司祭の服装をした女性が地図を指で示しながら説明する。


「このあたりですよ。アウネイロスを見かけたのがここメルレの村。さっき通り過ぎたのがフルレの村です」


 必死にソレイユにしがみついていたユーリは、フルレの村を通り越したことに気づかなかった。


「ソレイユ、この少年はいったいどういう少年なんです?」


 控え目に聞いてきたのは、ソレイユより年上の三十前後の男だった。全身黒ずくめで動きやすい服装をしている。

 男の言葉に追随するように、他の人たちもユーリのことを興味ぶかそうに見つめた。


「俺らと同じ捜索隊のメンバーだ。ユーリは北西を目指したパーティの一員だ」

「こんな若い子まで駆り出されているの?」


 弓を脇においた女性が驚いたようにユーリを見る。


「そういえば、ソレイユさんのパーティはどの方角が担当なんですか?」

「西だ。捜索中、厄介ごとに首を突っ込んでしまってな。それは解決したが、捜索がおざなりになってしまった。そんなとき、エルダのパーティが盗人を捕まえたという情報が中央からあったため、戻るところだったんだ」

「そうなんですか」


 ユーリはソレイユのパーティが体験した厄介事というのが気になったが、ユーリがその質問するよりさきに、ソレイユのパーティの司祭の女性から、ユーリは別の質問を向けられた。


「あなたのパーティはどうしたのですか? どうしてあなただけ一人で行動しているの?」

「それには、込み入った事情があるんです……」


 ユーリは言葉を濁した。


「堅苦しいことはなしにしようぜ。俺が行き先を検討している間に自己紹介をやっといてくれ」

「はぁ」


 というわけでユーリはソレイユのパーティに自己紹介をすることになった。

 自分が聖騎士エルダのパーティの一人だということ。エルダは自分の姉だということ。さきほど通り越したフルレの村の廃墟でサンダーマンティコアと戦ったこと。そこでラナという少女が隠し持っていた水の宝珠の力を借りてサンダーマンティコアを倒したこと。 エルダがラナを捕らえ、水の宝珠を奪還したこと。

 中央に戻るため、ユモレイクの森を縦断している最中に、魔物の大群に襲われたこと。

 水の宝珠を魔物の手から守るため、エルダ達は戦い、水の宝珠を持っていて、ラナを捕縛していた自分の安全を優先し、自分とラナだけ戦いから逃されたこと。

 ユモレイクの森を抜け安心したところに、アウネイロスに襲われ、それは一度は撃退したが、メルレの町で再び襲われ、ラナと水の宝珠をアウネイロスに捕らえられたこと。

 そして、水の宝珠をアウネイロスに奪われたことを説明すると、彼らは息を飲んだ。


「それじゃあ、俺たちの紹介と行くか。俺のことはさっき馬の上でしたからいいよな。ここは年功序列といこうぜ。エイジ」

「分かりました」


 先ほどソレイユに質問してきたのは黒ずくめの男が頷いた。


「私はエイジといいます。ふらふらといろんな国を旅している自由人ですよ。

 砂漠の中のオアシスと呼ばれるアクアディア聖国を一目見たくて、この国にやってきました。アクアディア聖国はきれいなところですね。黄色い砂漠と水色の湖、青々とした樹々と、色のコントラストが美しい。ここが砂漠の真ん中にあるとは到底思えません。

 暗視や加速などの支援系魔法を得意としています」

「あたしはミスティよ。これでも探検家なの。弓の腕には自信があるわ」

「わたしはルリカです。今年、司祭になったばかりの新米です。記憶力には自信があるし、治癒魔法が得意です。そのせいでしょうか。新米なのに捜索隊のメンバーとして声がかかりました」


 先ほど地図を見ながら説明をしたのはこのルリカだった。

 ここには四人しかいない。パーティは五人体制だったはずだとユーリは思い質問する。


「もう一人はどうしたんですか?」


 ソレイユがきまり悪そうに頬をかいた。


「それがだなぁ。最初の顔あわせのときに、顔色を青くして『自分にはやっぱり無理です。辞退します』と言って去っていったんだ」

「去っていったって。その人も、水の宝珠が奪われたことは知っているんですよね。どこかで言いふらしたりしないでしょうか?」


 ユーリの質問に、エイジか答えた。


「それはないと思いますよ。私がしっかりとお灸をすえてやりましたから」

「エイジ、あいつと知り合いだったのか? どうもあいつはエイジの顔を見て、逃げ出したという感じだったが」

「さあ、世界は広いですからね。他人の空似でしょう」

「ふむ。まあ、いいか。そんなわけで俺たちのパーティは四人なんだ」

「分かりました」


 ユーリはひとまず納得した。ソレイユのパーティを攻撃タイプの剣士が多かったエルダのパーティと比べると、防御を優先したパーティだなとユーリは思う。


「姉さんたちがどうなったか知っていますか?」

「ああ。エルダのパーティは全員無事さ。一人腕を一本失ったが、生きてはいる」

「なっ! 誰ですか?」

「名前までは聞いていない。ただ若いやつだという話だ」


 ということはレイクかアルベルトのどちらかだ。腕を失うということは、剣を使う者にとっては致命傷だ。

 ユーリは沈痛な表情を浮かべる。


「魔物の大群を相手に仲間に死者を一人もださないで、生還したんだから大したものだ」「そうですね」


 ソレイユの感想にユーリは大きく頷いた。

 今思い返しても、すごいことだと思う。


 ルリカが話しかけてきた。


「ユーリってエルダ様の弟なんですねぇ。エルダ様って素敵ですよねぇ。わたし、同じ女としても憧れてるんですぅ」

「そう言われると、弟としてもうれしいです」


 今までも姉を褒める相手と何人も出ってきたが、そんな話を聞いても「へえ、そうなんだ」と思うだけにとどまっていた。しかし聖騎士としてのエルダと何日か一緒に行動を共にした今、ユーリはエルダを心から尊敬できる聖騎士だと思うようになっている。

 エルダの名前を聞いて、キランとソレイユの目が光った。


「エルダより俺のほうが優れているんだぞ」

「ソレイユ様、姉さんに何か思うものがあるんですか?」

「ある。それはライバル意識というものだ。エルダは肉体派で剣術が得意だが、俺は頭脳派で魔法が得意なんだ。剣が強いか魔法が強いかは、それはいつの時代でも対立してきた。そして今対立しているのは、俺が強いかエルダが強いかなのだ」


 自分で頭脳派と言いながら、やみくもにアウネイロスを追おうとしていたソレイユをつい先ほどみたばかりである。


「俺のパーティは役職はつけずにお互い呼び合っている。いろんな人種の集まりだからな。役職に意味はない。俺のこともここではソレイユと呼び捨てで呼んでくれ」

「は、はい」


 エルダと同じようなことを言うソレイユに、ユーリは好感をもった。


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