ユーリ、フルレの村のおかみさんの差し入れに舌鼓を打つ
その後、各々、静かに休んだ。
いつの間か月は沈み、太陽が地平線から登ってきた。
強さを増す日の光に、影が濃くなってきたとき、遠くから人の声が聞こえてきた。村の自衛団の人たちだった。
彼らは、聖騎士達が廃墟に向かったきり、一晩あけても帰ってこないため、様子を見に来たのだった。
「聖騎士の方々、大丈夫ですか?」
エルダが立ち上がった。少しの間休んだおかげで、すぐさま立ち上がるくらいには、体力が回復している。
「わたしたちは大丈夫です。わざわざ来てくださったんですね。ここには複数のファングレオの亡骸が六体と、サンダーティルマンティコアの亡骸か二体あります。
適当に処分をお願いしたいのだけどいいから?」
「倒してくださったんですね。ありがとうございます。遺体の処分はお任せください!」
マンティコアの亜種だと判断した魔物の正式名称はサンダーマンティコアなのだとユーリは理解する。場数を踏んでいる姉は、亜種とだけではなく正式名称も知っていたのだ。
シグルスがやってきた村の人たちに聞いた。
「食料と飲み物はないか? 身体を動かしすぎて腹が減っているんだ」
自衛団体長のグレンが対応した。
「そうでよね、お察しします。すぐに持ってこさせますよ」
グレンは仲間の男に指示を出すと、男はすぐさま村に向かって駆けていった。
ほどなくして、その男は複数の人を引き連れて戻ってきた。食事を用意してきた女たちと、そしてキャラバンのケントたちだった。
「いやはや、これ全部、みなさんが倒したのですか?」
ケントが言えば、ケントに続いてやってきたキャラバンの連中が口々に言う。
「マンティコアを二体も退治するだなんて、すごいな」
「さすが聖騎士のパーティだ」
皆はサンダーマンティコアとファングレオの死骸をしげしげと見つめた。
「ほらほら、食べ物をもってきたわよ。一部昨日の夜ごはんの残り物もあるけどね。腹は膨れるでしょう」
エルダはパーティを代表して礼を言う。
「助かります」
「魔物を退治してくれたのだからこれくらいお安い御用ですよ」
食べ物と飲み物を配られ、ユーリたちはそれを平らげた。食事をすると、疲労感もみるみる回復していくのを感じる。
食事とはいかに大切になものだということをユーリは実感した。
しばし休み、食事もとって体力を回復させたユーリたちは村人たちと一緒にいったん村に戻るために移動した。
移動している最中も、キャットは空を飛びながら追い越したり追い越されたりしながら、ラナの後を追ってきた。
ラナに必要以上に近づかないのは、ラナ以外の人間を警戒しているからだ。
村に着くと、宿屋のおかみさんがエルダに話しかけてきた。
「まずはひとっ風呂どうだい?」
「ご厚意ありがとうございます。お風呂は使わせていただきます。それから今日一晩の宿を借りられますか?」
「もちろんだよ。魔物を倒してくれたお礼に無料で提供するよ」
「それはいけません。わいろの一環になってしまいますから。正規の宿代は支払わせてください」
「そうかね」
「三人部屋を二部屋借りられますか?」
「三人部屋という中途半端な数の部屋はないから、四人部屋二部屋でいいかい? もろちん料金は六人分で構わないから」
「それでお願いします」
部屋の割り振りは、エルダ、シグルス、ラナが同じ部屋。他の男三人が同じ部屋となった。
それぞれが部屋に入る前に、エルダは言った。
「お風呂に入った後、わたしたちの部屋に一度集まってちょうだいね。中央からの指示を伝えます」
「はい。分かりました」
男三人組を代表してレイクが返事をする。
「それから、お風呂に入る前に、今着ている服を洗濯しておいてね」
レイクが途端にげんなりした表情を浮かべた。
「ええ? 今回も自分で洗濯するんですか? 宿屋にお願いしちゃってもいいじゃないですか?」
「そんな元気のいい言葉が言えるくらいだから、洗濯くらい大丈夫でしょう? わたしも自分の物は自分で洗濯するつもりよ」
「はーい」
「シグルスもレイクたちと一緒にお願いね」
「はいはい、分ってるぜ」
シグルスは自分にあてがわれた部屋に入ると、剣と腰に巻いたベルトを適当に置き、着替え用の服を手にとると、すぐさま廊下に出てきた。
「ほらほら、ヤロー共、洗濯しに行くぞ」
まだ自分たちにあてがわれた部屋の中に入ってすらもいない、ユーリとレイク、アルベルトはシグルスの身替えの早さに目を丸くする。
レイクが驚いた声をあげる。
「シグルスさん、早いでね」
「こんなの普通だろ。ほら、ぼやっとするな」
「はい」
シグルスにせかされ、ユーリたちは急いで洗濯場に向かう準備を始めた。




