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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ラナ、ユーリと再会する

 ラナは素早くキングゴブリンの足元に転がっている剣を手に取ると、その剣をキングゴブリンの足に振り下ろす。


「ぐああ!」


 キングゴブリンが吠えた。

 ラナとスバルは集中的に足を狙った。小さくも、確実にキングゴブリンに足の切り傷が増えていく。


 キングゴブリンが片足をついたとき、


「はっ!」


 ラナの気合の入れた剣がキングゴブリンの首を打ち落とした。


「やるじゃん」

「でもちょっと体力の限界」


 ラナはその場で眠るように気絶した。


「おい、マジか」


 まあ、キングゴブリンを倒したから、もう魔物も襲ってこないだろうと、スバルは安易に考えながら、後ろを振り返る。

 そこにはまだ数えきれないほどの魔物がいた。


「マジか」


 再びスバルはつぶやいた。


 気絶したラナを守りながら、あれだけの魔物とやり合わなければならないのだ。しかもグレイの助けをあてにしてはいけない。

 これ以上グレイの力に頼ったら、魔力の使い過ぎで消滅してしまうかもしれないからだ。


 それからどれくらい戦ったか。何体の魔物を倒したか。スバルの意識は朦朧としていたが、それでも剣をふるい続けた。

 時々気絶したラナにも襲いかかる魔物がいて、そんなラナを守るように剣を振るう。

 自分が倒れるわけにはいなかった。倒れたらラナまでやれてしまう。

 ラナはまだ目覚める気配はない。息をしているのか? 不安になるが、ラナの状態を確認する暇もないまま、剣を振るう。

 気づけばあたしはしんとしていた。


「はあ、はあ、はあ」


 自分の激しい息つかいばかりがきこえる。


「やったか。俺も、もう限界」


 スバルはその場に崩れるように横になった。


 転移空間を抜けて、キャットに導かれるがままに、ユーリがやってきたのそれからしばらくしてからだった。


 倒れているその女性がラナであることにユーリはすぐに気づいた。


「ラナ!」


 近づいてラナを抱き起す。ラナはユーリが知っているラナよりも、頬がシャープになり、大人っぽくなっていた。

 短かった髪を長くして、ポニーテールにしている。その髪の色もユーリが知っている燃えんばかりの赤い色とは違い、黒っぽく見える。


 けれど、ラナはラナだ。

 ラナはだいぶ弱っているようだった。


「治癒せよ」


 ラナが瞼を開ける。その奥にある瞳の色は、青色ではなかった。ヒカリゴケの微弱な光でも、その色が馴染みのある金に近い琥珀色だと分かった。


「ユーリ、なの?」


 ラナは瞳を何度も瞬いた。

 これは夢だろうか。

 どうしてここにユーリがいるんだろう?

 この人、ほんとにユーリなの?

 だいぶ、大人っぽくなっている。それにたくましくなった?


 混乱するラナにユーリは優しく話しかける。


「うん、僕だよ」


 ラナはユーリに抱きついていた。


「ユーリなのね!」


 お互いに抱きあい、お互いの存在を確かめ合う。


「ああ、ユーリ」

「ラナ、会いたかった」

「あたしもよ。どこに行っていたの。だいぶ待ったわ」

「待たせてごめん」


 お互いの瞳を見つめ合い、キスをしようとした瞬間、「こほん」とわざらしい咳払いがした。

 意識を取り戻したスバルが起き上がって、二人を見ていた。


「なんか人の気配がして、意識をとりもどしたら、ラナが知らないやつと抱きあっていたから、邪魔しないようにおとなしくしてようかと思って様子をみていたんだけど、さすがにな……」


 ラナたちから目をそらして、「キスしようとしているからさ、黙ってみているほうが悪いのかなぁと思ったりして」と口の中でごにょごにょというスバル。


 そんな少年の様子に、二人はお互いに目線を交わし、微笑んだ。


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