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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ラナ、スバルと共に洞窟に向かう

 人間たちの勝利の雄たけびに、おじけづいたように、魔物たちは逃げ出した。魔族はすでにその場にいない。やられたものもいたが、生きている者は、このまま人間たちと戦う必要性を感じくなり、立ち去ったのだった。


 その場でしばらく休んでから、野営地に戻ることになった。

 ラナは、岩に背中を預けて座った。キャットがお腹の前にすっぽりとおさまった。ラナは右手でキャットを撫でた。


「キャットが消えなくてよかった。これからもあたしの側にいてくれる?」

「キュウ!」

「ありがとう」


 左肩から垂れたポニーテルの赤茶色の髪を左手ですいてみる。


「これが本来のあたしの髪の色かぁ」


 この髪の色をラナは知っている。


 ルリカがやってきた。


「もう、魔力の使い過ぎで今にも倒れそうです」

「あたしも体力の使い過ぎで気を失いそう」

「その髪の色、素敵ですよ」

「ありがとう。この髪の色、お母さんと同じ色なの」


 ルリカは複雑そうな表情をした。そんなルリカに探求者と名乗ったブリジットが自分に過去の映像を見せてくれたことを話す。


「それはよかったですね。ラナはすでにブリジット様と会っていたんですか?」

「そうみたい。その時は知らなかったけれど」

「ブリジット様ってどんな人でした? やっぱり美人なんですか? さっきの戦いではわたしからはクッションしか見えなかったんです」

「うん。美人だよ。きれいな男の人の姿をした精霊と一緒だった」

「うまっ! うらやましいです。何歳くらいに見えました?」

「ルリカと同じくらい」

「うまっ! それはひどいですよ。わたしはまだ二十代ですよ。それを百歳以上の人と同じに見えるだなんて、いくらなんでもわたしに失礼です」

「そういえば、ブリジットってそんな歳だって聞いたわね。そんな歳には見えなかったよ」

「その美の秘訣を教えてもらいたいんですぅ。このあたりのどこかにいるはずですよね。ちょっと探してきます」


 今にも倒れそう、と言っていたルリカは、気持ちがせいているのかしっかりとした足取りでブリジットを探しに行った。


 しばらく休んでいるとスバルか鉱山の奥に向かうのが見えた。


「スバル、どこに行くつもりなの?」


 様子が気になったラナは立ち上がり、スバルの後を追いかけた。


「スバル」


 呼びかえるとスバルは振り返ってラナを見つめた。スバルは何度も瞬きをしてラナを見つめる。


「どうしたの? 目にゴミでも入った?」

「いやあ、なんかその姿のラナって見慣れてないから、別人みたいに見えちゃって」

「これが本来のあたしなのよね。アクアミスティアの加護もなくなって、ジャスティスの加護もなくなっちゃった。自覚ないけど」

「勇者だったときですら、しばらくその自覚なかったくらいだもんな。その加護が消えても自覚ないのは当然じゃね?」

「そういうもの?」

「たぶんな」

「どこかに行こうとしていた?」

「このあたり見覚えがあるだよな。この先のほう、俺が転移した場所に続いていると思うんだよな」

「ほんとに? ユモレイクの森に繋がっているっていう」

「だと思う」

「イカロスに伝えないと」

「まだ確信があるわけじゃねぇんだ。鉱山って似たような景色が広がっているだろ」

「そうね」


 スバルは再び歩みをすすめた。ラナもそれに続く。


「あったあった。あの洞窟だ」


 スバルは嬉しそうに声をあげた。


「三年前と変わってない」

「あまり中に入らないでよ。魔物の残党が残っているかもしれないのだから」

「分かっているって。ラナこそ、足元に気をつけろよ。崩れやすくなっているから。それで俺たち家族、崖の底に落ちっ。

 うわー!」

「どうしたのスバル」


 ラナも洞窟の中に入って、足元を支えるものがなくなっていて、急こう配の崖をすべるように落ちて行った。


「スバル、生きてる?」

「生きてるよ。まさか洞窟のすぐ直前まで地盤が弱っていたとはな」

「ヒカリゴケがあるから暗くなくてすんだね。どうやって戻ろうか」


 そんな会話をしている二人に、魔物達がやってきた。


「さっき戦ったばかりなのに、また戦うの?」

「しょうがねぇんじゃね?」


 二人は剣を構えた。

 洞窟の中はゴブリンが多かったが巨大ムカデや、アメーバのような魔物もいた。


「なんか、変」

「変って何?」


 ジャスティスの加護を無くしたラナだが、体に刻まれた剣術の腕は無くなることはない。

 しかし、加護を受けていたときと違う感覚はある。今まで無意識に近い状態で剣は動いてたが、今は自分の感覚で動かしているという感覚だ。


「スバル、その剣、グレイじゃないの?」

「ああ、グレイは魔力使いすぎて今は休憩中」


 奥からひときわ大きなゴブリンが現れた。キングゴブリンだ。


「まだこんなやつがいたか」


 一人で四体を倒したラナは、一体のキングゴブリンの攻撃を避け切れず、地面に殴り倒された。


「くぅ!」


 スバルがキングゴブリンに剣を振るう。そんなキングゴブリンは腕を振り上げた。スバルは飛び跳ねてそれを交わし、腕に乗り上げ、キングゴブリンの顔面を狙う。

 キングゴブリンは腕を振り回して、スバルを払いのけた。スバルは猫のように身をひるがえし、両足で着地する。


 その時には、地面から起き上がったラナもキングゴブリンに剣を振り上げていた。

 キングゴブリンは左手に持った斧でそれを受けた。衝撃がラナを襲い、手がしびれて、剣を落としてしまった。


「うそっ」


 自分自身に驚くが、キングゴブリンの斧が襲いかかって来て、驚く間もなく、後ろに飛び下がる。ラナが今の今まで場所を斧が横切っていった。


 スバルが言った。


「ナイス動きだ。ラナ」

「いやみに聞こえる」

「そんなことないさ。あの攻撃を避けられたのはラナだからだぜ」


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