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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ユーリ、キラット村の医療院で治癒魔法を施す

 医療院に向かう途中、六歳くらいの少年が大声で泣いていて、ユーリは少年に目を覚めた。


「うえーん、痛いよぅ」


 見ると膝から血がでている。それくらいなら簡単に治せるとユーリは思い、ユーリは兵士に声をかけた。


「ちょっと止まってもらえるかな」

「どうしたんですか?」

「あの子の怪我をみたいんだ」

「この方の兵士に声をかけ少年のところに向かった。


「痛そうだね。

 もし治癒の神キュアレスに祈りを捧げたらキュアレス様がすぐに治してくれるかもしれないな」

「ほんとう?」

「うん。目をつぶって祈ってごらん」

「うん!」


 少年が目をつぶっている間に、ユーリは少年の傷ついた膝にさっと杖を掲げて、治癒魔法を施した。


「目を開けていいよ」

「うわあ」


 少年は治っている膝を見て、驚きの声をあげた。


「君の祈りがキュアレス様に通じたんだね。これからもいい子にしているんだよ。神様はきっと見守っているからね」

「うん」


 少年は大きく頷くと、元気よくかけていった。兵士がユーリに質問した。


「あなたははキュアレス様の伝道者なのですか?」

「そういうわけじゃありません。ただ治すより、何か理由があったほうがいいかと思ったんです」

「まるで賢者みたいでした」


 ユーリは大きく否定した。自分のような若造が賢者なんて言われるのがめっとうもないと思ったからだ。


「賢者なんてそんなとんでもない!」


 その後も行き会って怪我に苦しんでいる人を二、三人治癒して、ようやく医療院にたどり着いた。


 血と消毒液とそして薬草のにおい。それはユーリにとってなじみのあるにおいだ。

 ノースグランドの医療部隊にいたときに毎日のようにかいでいたにおい。

 面倒見がいい治癒魔法使いのラーラがいて、契約精霊であるアンがいて、普段はぐうたらしているが、必要な時にはしっかり仕事をする外科医のヤナックがいて。

 みんなと別れてからそう日は経っていないはずなのに、ずっと昔のように感じる。


 医療院の前には多くの怪我人が集まっていた。怪我人と治癒する人が入り乱れ、誰が誰だか分からない状態になっている。

 そんな中、誘導係の男が声を張り上げている。


「横入りはいけません。順番ですよ。皆さん、並んでいるのですから」


 列の最末端だと思われる場所に並ぶとユーリは兵士に言った。


「ここまで運んでくださってありがとうございました。あなたは兵士としての仕事があるのでしょう。ここはもう大丈夫ですから、戻っていただいて大丈夫です」

「分かりました。お大事に」


 兵士はお辞儀をすると、去って行った。

 医療師の助手らしき人達が、並んでいる人たちの怪我の様子を見て、傷口を消毒したり、止血のために包帯をまいたりしてくれている。しかし明らかに医療院の人間ではない人たちも、その作業に加わっていた。

 疑問に思っている間にも、手伝う人たちが増えていく。


「家からあまってるタオルを持ってきたよ。一度も使っていないから清潔なはずだ」

「家の薬箱をもってきた。使えるものがあったら使ってくれ」

「ここぞというときにと思ってとっておいたブランディーだ。消毒液替わりに使うといい

 服装から彼らはキラット村の住人達のようだった。他にはいかにも探検家風の人達も手伝っていた。


「仲間の治療は済んだ。何か手伝えることがあったら言ってくれ」

「俺は簡単な治癒魔法が使える。助太刀してやる」

「あたしは薬草の勉強をしているので、何かお役に立ててれば」


 ユーリは彼らの行為に感心していた。

 戦場で活動していた医療部隊ではなかった光景だった。医療部隊では、仲間は決まっていた。物資は軍から送られてくる。限られた物資、限られた人数、それらで賄うのが通常だった。

 人々が住まう村が襲われたからこその彼らの行為だ。


 ひときわ高い切羽詰まった声が聞こえた。


「早くこいつを助けてくれ。さっきまでしゃべっていたのに、ぐったりとなって……」


 一人の兵士が背中に別の兵士を背負って列に割り込もうとしていた。

 誘導係の男がすっ飛んできて、怪我人の様子を確認し、沈痛な表情を浮かべた。


「これほどの怪我だと医療師に見ていただくしかありません。けれど順番です。みんな、順番に並んでいるのです。だから待っていただくしかありません」


「待っていたら、死んでしまう」


 ユーリは考えるより先に身が動いていた。担架に乗せられたジェノサイドを列に残したまま、騒ぎが起きているところに駆けつけた。


「診せてください」

「あんたは……?」

「僕は治癒の魔法が使えます。傷の状況を見せてください」

「お、おう」


 刃物が胸のあたりに刺さっていた。それでもさきほどまで話すことができたということは、心臓からそれていたのだろう。彼はまだ生きることができる。

 そう感じたときにはすでにユーリは地面に横たえられた男の傷口に杖をあてて、治癒魔法を施していた。


「癒しの神キュアレスの加護を


 傷ついた者を

 汝の慈悲なる力をもって

 癒したまえ


 治癒せよ」


 傷口が治るのに従い、錆びた短剣がじょじょに引き抜かれていき、胸の上で倒れた。


「傷口は塞ぎました。本人の生きたい気持ちにもよりますが、おそらくこれで大丈夫です」

「ありがとう、ほんとうにありがとう」

「しばらくは安静にしてください」

「すぐにそうするよ」


 ユーリは仲間を背負って去って行く男の後ろ姿を見送った。


「あなたは治癒魔法使いなんですね」


 列を誘導していた白衣の男が厳しい表情で話しかけてきた。


「ええ、まあ。あの、勝手に治してすみませんでした」


 ユーリは恐縮した。並んでいる人達がいるのに、そんな彼らを無視して、勝手に治癒の魔法を施したのだ。怒られるのだと思った。


「とんでもありません。私たちに力を貸してくださいませんか?」

「そのつもりでここに来ました」


 答えてからユーリは、隊長のゼシムから医療院を手伝って欲しいと請われ、それを請け負ってここに来たことを説明した。


「それは心強いですね」

「連れの男性が魔法の使い過ぎで気を失っているんです。彼に休める寝床はあるでしょうか?」

「もちろん、用意させていただきます」


 医療院の出入り口近くに、診察室が設けられ、その向こうがすぐに病室だった。病室といってもは部屋が別れているわけではなく、体育館のような広い部屋に、ベッドが三十ほど並べられて、半分が使用されていた。


 診察室は三席あり、それぞれ怪我人の診察をしていた。個室となっているわけではなく、机と椅子が三組あるだけの簡素なものだ。診察室というよりも、診察する場所、医療場といったほうがしっくりするし、実際、そう呼ばれていた。


 ノースグランドの医療部隊では、すぐに治癒できる症状のもの、時間がかかる症状のもの、治癒魔法では治せない症状のもの、などと怪我人の振り分けをしていた。それによって効率よく治癒ができた。


 しかしここキラット村の医療院ではそういう振り分けがなかった。その理由として、大量の怪我人を対応することに慣れていないということがあるのだろうとユーリは推測した。


 治癒の回転率が速いのは一番手前の医療場に座るコウという名の五十歳ほどの医療師だった。銀色の短髪で、肌は日に焼けて浅黒く、白衣の上からもその体つきががっしりしているのが分かる。

 彼は治癒魔法を使い、薬草の知識もあり、外科医の技術ももっている、まさに治癒に関わることならなんでもできるという凄腕の人物だった。


 二番目に座っているのは女性の治癒魔法使いで、高位の治癒魔法を使えるが、呪文の詠唱と治癒に時間がかかりすぎていた。


 三番目の診察場にいる男は外科医で、裂傷ならば縫い、骨折ならば添え木といった簡単な治療だけをする。そして、擦り傷ならば布薬を指示した診察書に記入し、あとは後方の病室の医療師たちに任せるやり方だ。仕事は早いが、雑すぎる。


 三人の医療師には支援する医療師が三人ついている。彼らは包帯を巻いたり、傷口を消毒したり、病室に案内していたりしていた。


 ユーリにはこれこそ時間のロスだと思うことがあった。なんでもできるコウは、時々、治癒魔法使いと外科医の男にたびたび呼び出されるのだ。

 こんなやり方で治癒していては、深夜になっても、外の行列はなくならないだろう。戦場の医療現場で働いていたユーリにはそのことが目に見えていた。


 ユーリは意を決して、院長のラディックに進言した。


「院長、忙しいときに申し訳ありません」

「なんでしょうか?」

「外にはまだまだ治癒を求めて多くの兵士や村人が並んでいますよね。このままでは、待ち疲れて体力を消耗していきますし、早めに治癒を施せば治る傷だった怪我人の怪我が待っている間に死んでしまうこともあると思います。少しでも治癒時間をはめるための提案をしてもいいですか?」

「何か案があるならぜひ話して欲しいです」


 ユーリは述べた。


「それは良い考えですね」


 ユーリの提案を聞いたラディックはすぐさま実行に移した。


 効率よく怪我人たちを治癒するか、ユーリは自分が治癒している怪我人を診ながら、それらに気を配った。このやり方はヤナックのやり方から学んだものだ。


 ヤナックはどんなに忙しい時でも、的確に自分たちを必要な場所に配置した。そのことをユーリは見て、体感し、そして知らずのうちに習得していたのだ。


 ユーリの案が取り入れられ、診察場がさらに三つ増えた。病室で怪我人を看ていた医療師の中にも、治癒魔法を使える者や、薬師がいたのだ。


 彼らにも診察場に入ってもらい、すぐに治せる怪我人の治癒にあたってもらった。そしてユーリも診察場に入ることになった。


 ユーリは時間が経つのも忘れて治癒魔法を怪我人たちにかけ続けた。


 何人目かの治癒を終えてふと顔をあげると、タオルを追加しにきた治療師の女性と目があった。彼女はしばらくそこに立ってこちらを見ていたのだ。


「どうしたの?」


 彼女はほんのりと頬をそめた。


「ユーリさんの治癒魔法、早いし、確実だし、たくさんの回数使用できるし、すごいですね。どうしたらそうなれるんですか?」

「もともと治癒魔法は得意だったんだよ。あとは、日々の努力と鍛錬かな」

「治癒魔法の鍛錬ってどうするんですか?」


 ユーリは加速と減速の魔法を同時にかけ、時には浮遊の魔法も使って、強制的に魔力を枯渇状態にし、魔力保持量を増やしていた頃のことを思い出す。


 我ながらよくあんなことができたと思う。目的を達成するために魔力保持量を増やすことは必須だった。だから必死だった。魔力が枯渇しすぎて死にかけたこともある。


 あんなことを人には勧められない。


 治癒魔法を施すのに手際がいいのは、戦場の医療部隊で経験したことが大きい。何人もの怪我人に治癒魔法を使いすぎて、気を失った数は数え知れない。


 これも自ら進んで人には勧められない。


 ユーリは静かに言った。


「死ぬような鍛錬だよ。あまりお勧めできない。本当に死ぬかもしれないからね」

「そ、そうですか」


 彼女はそれ以上つっこんだ質問はしてこなかった。ユーリの何かを悟ったかのような瞳に気おされたのだ。


 治療院を訪れた怪我人全員を助けられるわけではなかった。

 治癒の施しを待っている間に命が尽きた人もいた。魔物の武器に塗られていた毒を受け、体に巡りすぎて治癒の施しようもない人もいた。

 喜びと感謝、悲しみと暴言が飛び交う。それがここ医療院だった。


 途中で治療師の誰かが席を替わろうと声をかけてきたが、ユーリはまだ魔力に余力が残っていたため、それを断って、治癒を続けた。

 どれくらいの人に治癒魔法を施したか分からないほど治癒魔法を行使しつづけ、さすがに疲れを感じたのは深夜を過ぎたときだった。怪我人を治癒魔法で治し、顔をあげたときに、くらりとめまいを感じたのだ。

 目頭を押さえると、どこでみていたのか、すかさずラディックがやってきて話しかけた。


「ユーリさん、そろそろ休んでください。ここは他の治療師が担当しますから。簡単な夜食も用意しているので召し上がってください」

「まだ、行けますよ」

「それでも休憩して欲しいのです。ユーリさんに倒られてしまったら、戦力減になってしまいますから」

「分かりました。少し休ませてもらいます」

「仮眠もしてください。寝れば少しは体力も魔力も回復するでしょう」

「はい」


 休憩室でラディックの差し入れだというおにぎりという食べ物を食べた。テーブルの真ん中に、山のように積み重なっていたのだ。

 おにぎりは米を丸く握って外側を塩漬けした柔らかい葉で包み、中にはそれぞれ鹿の肉や、甘辛く味付けされた木の実などがはいっている食べ物だった。

 持ち運びもしやすいし、食べやすいので、便利な食べ物だとユーリは思った。

 そこにコウが休憩にやってきた。コウの顔色にも疲労感がにじんでいる。


「ユーリ殿、休憩ですかな」

「はい。コウ先生も?」

「ああ、ようやく一息つける」


 ほうとコウはため息をついた。


「ユーリ殿、あなたのおかげで最初に考えるよりも早く怪我人を治癒することができた。礼を言う。ありがとう」

「こちらこそ、おこがましくも、皆さんにいろいろ指示を出してしまって申しわけありませんでした」

「ユーリ殿の的確な指示のおかげでこの医療室は滞りなくその力を振るうことができたんだ。

 俺は目の前の怪我人を治癒することに精いっぱいでな。他の仲間に指示する余裕はなかった。まだまだ勉強不足だということを実感したよ」


 コウは自分の未熟さを悔しがるように顔をしかめた。


「僕は以前、戦が常に展開された医療部隊にいたことがあったんです。そのときに得た経験がここで、はからずとも役に立ちました。コウさんも休憩ですか?」

「そうです。解毒魔法も、解毒の薬も不足しておりましてな。それでもようやく一息つきました」


 コウは安堵するように笑みを浮かべた。


「それはなによりです。おにぎりですか。時間がないときにはうってつけの食べ物ですな」

「僕ははじめて食べましたけど、手軽に食べれてサンドイッチよりも食べやすくていいですね」

「作るほうも簡単に作れるのですぞ」

「そうなんですか」

「うむ。うまい。腹が減っているから余計にうまいな」


 コウはおにぎりにむしゃぶりついた。

 ユーリは長椅子に横になった。すぐに眠りはやってきた。


 目を覚ますと、すでに外は明るかった。コウの姿はいない。すでに医療院に向かったのだろう。その代わり、数人の医療師が休んでいた。

 懐中時計で時刻を確認すると、朝の八時を過ぎていた。

 ユーリは起き上がり、補充されたおにぎりの山からおにぎりを食べて腹を満たすと、再び治癒を再開した。


 この頃には、生きる者と死ぬ者とのジャッチがほぼ下されていた。今回は魔物との戦いによる裂傷を治してもらいたい怪我人が主だった。

 早く治癒魔法を施せれば助かった命でも、遅くに治癒魔法をかけてもその命の灯が削られ、治癒魔法が効かない怪我人も、当然いた。

 そういう者たちは、昨夜の時点で他界していた。


 つまり魔物の軍勢との戦いから一夜明けた今、医療院にいる怪我人は、生きる方向に進んでいる者たちばかりだったのだ。


 自然治癒力よりも、薬草よりも、効果が速い治癒魔法は重宝される。治癒魔法を使える者は医療院の中にもいるがユーリほど、早く多くの怪我人を治癒できる者はいなかったからだ。


 ただ解毒魔法は使えないので、それらはすべて解毒魔法が使えるコウに回っていた。コウはコウで、疲れがたまっているようにユーリには見えた。


 外科医の男がちゃかすようにユーリに言った。


「くそ。おまえみたいな治癒魔法使いがいたら、俺ら外科医は失業しちまうよ」


 その言葉が言葉通りではないことを物語るように男の目は笑っていた。だからユーリもおどけたように言い返す。


「せいぜい失業しないように、知識と腕をあげてください」

「言うじゃないか。若造が」

「歳はあまり変わらないように思いますけど」

「けど、俺よりは若造のにおいがする」

「そういう見解なら、僕から見たらあなたが年寄りのにおいがするということになりますけど?」

「え? ほんとか? 俺、歳よりくさいか?」

「嘘ですよ」


 外科医の慌てぶりがおかしくてユーリは笑った。


 そんな会話ができるほどに医療院は余裕がでてきた。

 込み合っていた時には、六つもあった医療場は今では三つになり、その分、医療場にいた治療師は病室の怪我人の様子を伺ったり、交代で休憩をしたりしている。

 ユーリはラディックに少し休むように言われ、ようやく気持ちが落ち着いた。ジェノサイドの様子を見に行くと、顔色はだいぶ良くなっていた。昼過ぎ、遅くても夕方までには目を覚ますだろう。

 次にミスティの様子を見に行った。ミスティはだいぶ顔色がよくなり、規則的な息をしていた。

 体力が衰弱度合いは、ジェノサイドよりもミスティのほうが高かった。しかし、ミスティのほうが回復がはやい。さまざまな苦難を味わって来た探検家の気質だろうとユーリは思った。


 ばたばたと医療院に赤毛の兵士がやってきて、ミスティが寝ているベッドに向かってきた。


「この子の様子はどうだい? だいぶ顔色はいいようだけれど」

「君は昨日、ミスティを背負っていった人だよね?」

「そうだ。そういうあんたはこの子を魔法で助けてくれたやつだな。なんでここにいるんだ?」

「ミスティの様子を診ていたんだよ」

「ふーん」

「怪我は治したから、あとは充分に休んで、目覚めるのを待つだけだよ。君はミスティの同僚なの?」

「この子はミスティという名前なんだな」

「え? 君はミスティと知り合いじゃないの?」

「昨日初めて一緒に戦った。それでこの子の、いやミスティの弓の腕に一目ぼれした。一時の迷いもなく弓矢を放つその姿はとてもきれいだったよ」

「ミスティの弓の腕は確かだからね」

「そういう君は誰だい? もしかしてミスティの彼氏か?」

「彼氏じゃないよ。昔、一緒に働いたことがあった仲なんだ。こことはだいぶ遠い国でね。だから、この村で再会して驚いたよ」

「そうだったんだ。安心した」


 心底、安心する表情を浮かべる赤毛の男。


「僕はユーリと言うんだ。君は?」

「俺はアベル。弓兵部隊の一員だ。普段は猟師をしている。それこそ弓で鹿を射止めたりね。まあ、ここしばらくの間は、魔物の再襲撃に備えて、見回ったり、魔物の死体の始末したり、瓦礫を片づけたりっていう作業に追われると思う。そろそろ仕事に戻らないと。」


「え? 今来たばかりじゃないか?」

「休憩の時間を利用して駆けつけたんだ。話ができてよかった、ユーリ」

「僕もだよ、アベル」


 アベルは来た時と同じく、ばたばたとせわしない様子で医療院を出て行った。


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