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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ユーリ、新学期を迎える

 新学期になった。


 教室にはいると、さっそくフィリアがユーリに話しかけてきた。


「ユーリ、今までどうしていたの? 水の宝珠盗人の共謀の疑いで連れていかれた後、会えなくて心配していたのよ。ユーリの疑いが晴れたことは噂で聞いていたけれどね」

「心配かけてしまったね。ごめん」

「いいのよ。元気そうでよかったわ」

「フィリアもね」

 ユーリは静かに微笑んだ。

 フィリアはそんなユーリをまじまじと見つめる。


「何か雰囲気変わった?」

「変わったってどういうふうに? 僕は僕だよ」

「なんていうか、前はもっとふわふわしていた感じだっのに、今は足がきちんと足についている感じ」

「なにそれ?」


 おかしそうに笑うと、フィリアは頬をほんのりとあからめた。

 そこにラクロスがやってきた。


「フィリアちゃん、元気だったか?」

「あら、ラクロス。ずいぶん日に焼けたわね」

「フィリアちゃんはあいかわらずかわいいねえ。少し髪が伸びたか」


 ラクロスはフィリアが言う通り、休み前より日焼けをし、体格もますますがっしりしていた。特別合宿のたわものだろう。


「ユーリはあいかわらず、ぼんやりとして――あれ……?」


 ラクロスもしげしげとユーリを見つめる。


「なんかあったのか?」

「ラクロスまでフィリアと同じようなことを言うんだね」


 担任の教師が教室に入ってきた。席から離れていた生徒たちが慌てて自分の席に着く。


「諸君、久しぶりだ」


 教師は言うと、生徒たちを一人ずつ見つめていった。

 教師の姿を見て、ユーリははっとなった。春休みに唯一やりたいと思っていたことを思い出したのだ。教師に似た悪者が出てくるお気に入りのマンガを、一巻から最終巻の百四十九巻まで一気に読破することだ。


「こうして君たちの顔を見ると、一か月の休みの間、将来のために努力していた者と、のんべんだらりとその日その日を過ごした者とでは、一目瞭然だな」


 教師の目線が何人かの生徒を見つめ、その目線がユーリのところで一瞬とまり、すぐさま他の生徒に映る。


 ユーリはそのことに気づかず、過ぎた時間を心底惜しんでいた。あんなに楽しみにしていたマンガ読破を忘れていたなんて。

 いろんなことがありすぎて忘れてた。悔しすぎる!


「今学期から新しい仲間が加わる。入ってきなさい」


 教師に促され、「はい」と短い返事をし、ドアを開けて教室にはいっていた人物を見て教室中が騒ぎとなった。とくに男子の目が熱い。


「え?」


 ユーリも呆然とその人物を見る。


 癖のある赤い髪に、湖の水面のような色合いの瞳。アクアディア学院の制服を着たラナがそこにいた。


「ラナ・シューレルです。養父がこちらの校長先生と古くからの知り合いで縁があり、今回、皆さんと一緒に学ばせていただくとになりました。

 皆さんと一緒に勉強できることを嬉しく思います。そしてとてもわくわくしています。よろしくお願いいたします」


 、楚々としてラナが挨拶をすると、男子生徒たちが歓声をあげた。


「ひゃっほー、かわいこちゃん、キター!」

「美人がいてこその学園生活だ」


 女子たちも好奇心満々にラナのことを見つめた。


「どこから来たのかしら、このあたりじゃ見たことがない子ね」

「赤い髪ってめずらしいわね」


 ユーリは心底驚いていた。

 近いうちに会えるとは言っていたが、こういうかたちで再会するとは想定していなかった。

 確かにラナはもっと勉強したいと言っていた。

 でもまさか、同じ学校に通うだなんて!


 これから起こるであろう、様々な出来事を想像してため息をつく。

 そのため息は希望と楽しさと、そして少しばかりの不安が混じった明るいため息だった。

 教師が教壇から言う。


「時間は何人の上にも平等に過ぎていく。さあ、新学期を始めよう」


ここまで読んでくださってありがとうございます。


だいぶ前に物語はあと半分くらいだといったことがありますが、ここまでがその半分になります。当初の予想よりも半分を少しオーバーしてしまいました。

水の宝珠をめぐる物語はここでいったん終わりです。


けれど、数々の課題がでてしまいました。

ユーリはキュアレスと交わした契約条件を全うする努力をしなければならなくなりました。

ラナの強さの秘密はなんなのか。そしてキャットは結局はどんな生き物なのか。

教会の不正を裁くのは誰か、そしてどんな時期なのか。


最初、この物語に取り組んだときには、こんなに長くなると思いませんでした。


これからはもう少し駆け足で、物語をつづっていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。


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