ユーリ、ラナとルリカがナンパされている現場に駆けつける
「ちょっと君たち、俺たちの連れに何やってるのさ」
二人の男は声が発されたところを振り返った。そこに自分たちと歳の違わなそうな二人の男を目にして、にやりと笑ってみせた。
一人の男が見下したような口調で言った。
「あんたらの連れ? 乗合馬車でデートでもしているのか? 乗合馬車に乗せるくらいしか金がない男なんてかっこわるぅ」
「なんだと?」
目の色を変えるレイクの前で、一人の男が髪をふさりとかきあげ、ラナたちに流し目を送った。
「俺、こうみえても親父が荘園持っていてさ、金はあるんだ。君たちが望むなら、俺の自家用馬車で行きたいところに連れて行ってあげるよ」
言って指をさす方向には、乗合馬車ではなく、個人用馬車が停車していた。個人で馬車を所有するのは金持ちのステータスだ。
毅然とルリカは言った。
「せっかくですが、お断りします」
そう、本人は毅然と言ったと思っている。尊敬するエルダの真似をして、胸を張って、男たちを見据えた。
「なんだって?」
「わたしたち、あなたたちに付き合っているひまはありません」
「くそ。ちょっとかわいくて、胸があるからって、つけあがってるんじゃないぞ」
「胸は関係じゃないじゃないですかぁ」
レイクが低い声で言った。
「ルリカのことを悪く言わないでくれないか?」
「なんだ、おまえ、俺とやろうっていうのか? 俺に怪我でもさせてみろ? パパがゆるさないぞ。ただいな賠償金を請求してやる」
ラナがつぶやいた。
「さいてーな男ね」
小さな声だったが、相手には聞こえたらしい。目を三角にしてラナをにらんだ。
「なんだ、女、金がほしくないのか? 俺と一緒にこいよ。いままで食べたことのないうまい料理をおごってやるぜ。そんでいままでおまえが泊まったことのない宿屋にもとめてやる」
ルリカがさげずむように言った。
「パパの金で、でしょ?」
「うるさい。こんなに侮辱されたのは初めてだ。少し痛い目にあったほうがいいようだな」
レイクが両手にもったアイスクリームをルリカに差し出した。
「少しの間、持ってて。両手がふさがっていたら喧嘩もろくにできない」
あわわてレイクの耳元でルリカはささやいた。
「レイク、かりにも聖職者なんですよ。ここで喧嘩をしてその身元がばれたら、説教だけではすみませんよ」
「そういわれてみれば……」
レイクは悔し気に顔をしかめた。それでも、ルリカを守るようにルリカの前に立って、男たちを見据える。
ユーリは両手にアイスクリームをもっておろおろするだけだ。アイスクリームをもっていなかったとしても、この場合、自分には何もできない。
「レイクは手を出さなくていいわ」
ラナが挑戦的に笑みを浮かべた。
「あたしが相手になってあげる」