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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ユーリ、情報操作をする

 男の言葉に、収まりかけていた村人たちの興味が再び、むくむくと膨れ上がった。


「水の宝珠だって? 中央にあるやつかい?」

「本当に水の宝珠だったなら、大変じゃないか。あんなものが魔族の手に渡ったら、王国どこかこの世界を全部魔族のものにされてしまうのでは!」

「うわー。災いの到来じゃあ」


 勝手に想像して勝手にパニックになる村人たち。


「ちょっ待ってください。それはデマですよ。水の宝珠がアルデイル町にあるわけないじゃないですか」

「青く光る球を見たという人がいるんだけなぁ」

「それは偽物です。俺だって造れますよ」


 レイクはテーブルの上に両手を掲げると、呪文を唱えた。


「氷の神アイスレイナに願う


 それは国の宝

 青く輝く宝石

 我は創造する


 水の宝珠」


 テーブルの上に、青く輝くように見える丸い氷の塊が現れた。


「うわぁ、本物みたいだ」

「きらきらしていてきれいね」

「でも、氷なんですよ。触ってみてください」


 レイクが言い、村人たちの何人かがおそるおそる氷でできた水の宝珠に触ってみた。


「きゃあ、冷たい」

「これで酒を割ったらおいしいそうだ」


 誰かの言葉に、うんうんと多くの大人が頷いた。


「こんなふうに偽物なんてすぐに作れるんです。それにもし魔族が水の宝珠を手にしていたら、いくら聖騎士でも、倒せないですよ。はははは」


 レイクは笑ってみせた。みょうにから笑いになっていることに、数日間レイクとともにいるユーリは気づいた。しかし、村人たちはそこまで気づかない。


「言われてみればそうねぇ」

「俺がアルデイル町で聞いた話は嘘だったのかぁ。いや、嘘でよかったんだけどよお」


 村人たちは水の宝珠のことは偽物だということで納得してくれた。

 内心、ユーリたちは内心ほっとした。


 食事を終え、湯にもつかり、ユーリとレイク、ラナとルリカとで部屋を別れた。

 そしてユーリはミラーフォンを使ってエルダに、巷でアルデイル町で起きた事件が噂になっている話を伝えた。

 エルダの回答は、アルデイル町で魔族が持っていたとされる水の宝珠は当然偽物。魔族については、インキュバスであることは公表しているが、そのインキュバスが神官に成り代わっていたことは内密だという説明を受ける。

 いままで中央からユーリたちに情報操作については具体的な説明はなかったが、ほぼユーリたちが想像していた通りだったので、自分たちの行いは正しかったのだと安堵する。


「本物の水の宝珠はあいからずだんまりなの?」

「うん。この通りだよ」


 ユーリはハンカチから取り出した水の宝珠を鏡ごしにエルダに見せた。


「アクアミスティア様がおっしゃったとおり、定められた場所までもっていかないと、封印は解かれないと思うよ」

「そうね。とはいえ、それが水の宝珠であることに変わりはないわ。壊したり無くしたりしないようにね」

「分かっているよ」

「それじゃあ、おやすみ」

「うん、おやすみ」


 ユーリはミラーフォンの通話を切った。


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