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アクアディア聖国物語  作者: 中嶋千博
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ユーリ、不思議な池の話を聞く

 食後の飲み物を飲んでいるところに、エルダに老婆が声をかけてきた。


「その格好は、おまえさん、聖職者じゃろう?」

「ええ」」


 エルダが答えると、うむうむと老婆は頷いた。


「聖職者さんは浄化ができるじゃろう?」

「聖職者が誰でも浄化の魔法が使えるわけではないわ」


 老婆はエルダの言葉に困惑げな表情を浮かべる。


「けれどここにいる二人は使えるわよ」

「それじゃあ、やっぱりあれはおまえさんたちがやったのかねぇ」

「あれというのは?」

「西にある毒池が、今朝行ったらきれいになっていたんじゃ。昨日までは確かに毒池だったんじゃがのう。あれはおまえさんたちがやってくれたのかね?」


 エルダは首を左右に振った。


「わたしたちは夕方、この町にたどり着いたばかりなのよ。西の池の話は今初めて聞いたわ」

「そうかい。それじゃあ、奇跡でも起きたのかのぅ。また魚が住み着くようななればいいんじゃがなぁ」

「奇跡……?」


 『奇跡』という言葉にエルダは反応した。立ち去ろうとする老婆をエルダは呼びとめる。

「ちょっと詳しくお話を伺っていいかしら?」

「なんじゃ?」

「その池はどれくらい毒されていたんですか?」

「そうさなぁ。かれこれ半年は経つかなぁ」


 近くを通りかかったおかみさんも口をはさんできた。


「周りの草木も枯れて、気持ちの悪い池になってしまってね。あたしたちは何度も教会に様子を見に行ってくれるように言ったんだけど、池が町から離れているところにあって実際の被害がでてないことを理由に、のらりくらりとかわされて、ほったらかしになっていたのよ」

「それが今じゃ、きれいすぎて魚も住めなそうになってるぞい」

「そうですか。ありがとうございます」


 エルダが礼を言うと、老婆は去って行き、おかみさんも自分の仕事に戻った。


「毒に侵された池が一日できれいな池になったなんて、不思議な話もあるものだね」


 ユーリの感想はそれぐらいのものだ。

 しかしエルダはしばらく何事か思案するような表情を浮かべていた。ユーリはそんなエルダの様子が不思議に思えた。


 ほどなくしてエルダはユーリ達を順番に見回しながら言った。


「明日はいったん池を調査してからさらに北に向かいたいのだけど、いいかしら」

「どうして池に行くの?」


 質問したのはユーリだ。


「一日できれいな池になったということは、そこになんらかの力が働いたということよ」

 レイクが質問する。


「たとえば浄化の魔法とかですか?」

「そうよ」


 エルダは短く肯定し、言葉を続ける。


「池の状況を確認したいのよ。場合によっては、毒の池をずっとほうっておいた教会を中央に報告することになるわ」


 ユーリは不思議そうな表情を浮かべた。


「水の宝珠を盗んだ人を探している途中なのに、そんな寄り道をしていいの?」

「少し脇道にそれるだけよ。池はちょうど通り道に近いところにあるから、支障はないと考えるわ」


 シグルスが即座に言った。


「隊長の決定だ。俺は従がうぜ」



 レイクが言い、アルベルトも頷いた。


「俺も俺も! エルダさん、どこまでもついて行きます」

「異論はありません」


 最後にユーリもこくりと頷いた。


「わかったよ」


 仲間の賛同を得て、エルダは頷いた。


「決まりね。わたしは中央に今日のことを中央に報告するから一足先に部屋に戻るわ。湯を浴びたいしね。明日は七時に出るわよ。それまでに支度を済ませてね。おやすみなさい」

「はーい、おやすみ」

「おやすみなさい」


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