第十二章:水
少しグロテスク・・・・・・でもないか。まぁそんな感じの表現が有ったり無かったりします。ほんとーーっに苦手な方は、読むのをお控え下さい。
お客さんは全員外に逃げたらしく、建物内は静かだった。
アナウンスや曲も聞こえないところから、放送室も被害を受けたんだろう。
とりあえずジャンクを探さなきゃ。でもどこにいるんだろう?闇雲に動いても危ないし・・・・・・。
チョンチョン
服の裾が引っ張られた。目を下にやると、そこには小さい女の子の霊がいた。
『あのね、ここをね、こーんなにしちゃったおねえちゃんのことさがしてるの?』
ジャンクは女の子だったのか・・・・・・。
『だったらね、のぞみね、しってるよ?』
「へ?知ってる・・・・・の?」
『こっちー』
服の裾を強めに引っ張りながら、女の子は僕を導いた。
着いた所は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・電気コーナー?
隣にはゲームセンターがある。
『ここにね、お姉ちゃんね、いるよ』
「あ・・・・・ありがとう・・・・・」
女の子はにこっと僕に笑って見せた。
一歩足を出した途端、バリバリという音と、何かに引っ張られる衝撃がした。
「いてて・・・・・・・」
引っ張られた方向を見ると、さっきの女の子の霊が僕の腕を掴んでいた。
そして音の方向を見ると・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・貴方、だぁれ?」
水に包まれた女の子がいた。その水は、電気を帯びていた。
僕がさっきまで立っていた場所は、電気がパチパチと光り、床がボロボロになっていた。
女の子の霊が僕を引っ張ったのは、この攻撃に気付いたからか。
「ありがとう・・・・助かったよ」
僕は涙目で立っている女の子の霊に笑いかけ、スクっと立ち上がった。
「貴方誰なの?私を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・狩りに来たの?」
このジャンク、安西さんの時よりも意識がはっきりしてるというか・・・・意思をちゃんともっているというか・・・・。
これが×に取り込まれたジャンク・・・・・なのかな。
「僕は・・・・・・・・・・ハンターだけど、君を狩りに来たんじゃないよ」
僕は、君を助けに来た。
「・・・・・今まで来たハンターは、皆私に勝てなかった。逃げていった。または・・・逆に私が狩った」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「貴方も私に勝てない」
このジャンク・・・・・・いや、この女の子の目、とっても悲しい。痛い。
僕と同じなんだ。僕と同じように傷ついて、でも能力は消せなくて。×に操られ続けた・・・・・。
・・・・て、僕何思ってんだろう?僕が傷ついた?確かに普通じゃ無かったのは嫌だったけど・・・・・・・・。
やっぱり自分が分からなくなる。自分の思っている事なのに。
ドガ・・・・・ガシュ、バリバリ・・・・・・・・・・
僕の目の前で電気が散った。
あの子の傷を見つけなきゃ。早くしないとますます×に・・・・・・・・・・・
じゅう・・・・・・・じゅううメリメリううううううう・・・・・
「な、何だ、この音・・・・・」
「う・・・・・・・ぐぐ・・・・・・がっ・・・・・・・」
変な音と共に、唸り声が響いた。
「ま・・・・・・・・さか・・・!!!!」
近寄ろうとすると、水の壁が現われた。
『あのおねえちゃん、くるしがってる』
女の子の霊が僕の指を掴んだ。
『こころのなかでね、くるしいよぉ・・・いやだよぉ・・・・って』
「そう・・・・・・・・か。そうなのか・・・・・・・・・」
嫌だよな。そりゃ嫌だよな。分かるよ。君は悪くない。
「君は・・・・・・・・・・・・・・・・・・悪くない」
僕はキャンディーを口に含んだ。キャンディーはすぅ・・・と溶ける様に無くなり、体が熱くなった。
確かキャンディー一個につき、一回の能力しか使えないってジュエル達が言っていた。
最低、瓶の中に一個はキャンディーを残しておかなきゃならないとも言っていた。今中に入っているのは・・・・十二個。
あれ?前見た時より増えてる・・・・・?って、今はそんな事気にしてる場合じゃない。
「わた・・・・わたしは・・・・・神・・・に・・・・いた・・・・頂いた・・・・・・・しる・・・し・・・・・で・・・・・・・人・・・・を・・・・・・・滅・・・・ぼす」
ボコ・・・・・ボコボコ・・・・ボコボコボコ・・・・
ジャンクの右腕から黒い靄が次々と出て、辺りは闇に包まれた。
「ば・・・・×に取り込まれ・・・・!?」
僕が呟いた途端、僕の足に水が絡んできた。
「何これ・・・・・?動けな・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前ヲ・・・・・倒しテ・・・・・・・・・ほろ・・・・ほろ・・・・・・・滅ボ・・・・・・・」
次々と水が体に絡み、僕は身動きがとれなくなった。
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
僕は呪文を唱えた。やっぱり勝手に口が動く。まるで口が意思を持ってるかのように・・・・・・。
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・出てこい、地獄の番人・「火玉」』
その瞬間、ポンッと赤い服に燃えるような真っ赤な髪・瞳をした男の人が現われた。
『ここ地上か?・・・・・・・・・・って勇気じゃねーか!!!!何年ぶりだ!?やー、懐かしい懐かしい〜♪』
「えーっと・・・・・火玉・・・・だよね?小さい頃だったから記憶がおぼろげなんだけど」
小さい頃、よく色んな話しをしてくれた火玉。赤い瞳と赤い髪は今でも変わんない・・・・・・。
『なになに〜?地獄でも噂は聞いてるよー。なんかジャンク?だっけかが暴れてるんだって?大変だねー』
・・・・・・・・・うん、こんな感じだった。めちゃくちゃ能天気だったよ、この人。今まさにその現場なんですが。
『んで?俺に何のようさ〜』
「そのジャンクが今ここにいるのよ」
『へー・・・・・・ってえぇ!?』
「とりあえずこの水をどうにかして・・・・」
『お、水は得意であり苦手な分野だな〜。ま、降りかかって来ない水程弱いものは無いが』
火玉は自分の手の平に炎を宿して、それを水に近付けた。すると、みるみるうちに水は蒸発していった。
『それにしても地上にしては暗いな・・・・ここ』
そう言うと、火玉は手の平の炎を分裂させ、辺りを赤く光らせた。
これで辺りが見える様になったけど・・・・・・ジャンクはどこに?
辺りを見回すと、何かが近づいてくる気配を感じた。そして、火玉が灯した炎が「じゅ」という音と共に消えた。
『うわっ!水モロに喰らった〜・・・・だから水は嫌なんだよー』
「水・・・・って事は近くに・・・・・・・・」
「私・・・・私ハ・・・・・・憎・・・・イ・・・・・・・・・・・」
『憎い』・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それは、何に対しての気持ち?人?神?それとも・・・・・・・・・普通じゃ無い自分?」
僕の口はまた、勝手に動いていた。
「う・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・・・・・うあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
闇が濃くなっていく。多分、×が暴走してるんだ。能力者の意思が爆発してしまったから。
・・・・・・・・・・・て、なんで僕こんなに理解してるんだ?
「・・・・・・・・・・・君は辛かったんだね」
僕は瓶を取り出し、キャンディーを口に入れた。
『霊達よ・・・・・・この場を光で照らして・・・・・・・・・・・・・・・・』
僕の下に霊が集まった。そして、一斉に光を放った。
「・・・・・・・・・ありがとう、これで見やすいや」
僕は、崩れているジャンクの下に駆け寄った。
あの時黒い靄は腕から出ていた。多分傷はそこにあるだろう。
「う・・・・・あ・・・・・・嫌だ・・・・・・・イヤ・・・・・ダ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「大丈夫。君は化け物なんかじゃない。人間だよ」
化け物?人間?意味は分かるけど、何がどうなってるのか理解出来ない。
自分の言葉に理解出来なくなったのはこれで何回目だろう?
僕は、ジャンクの腕に手をかざした。
大丈夫、君は怖くなんかない・・・・・・・・・・。
パァァァァァァァァ・・・・・・・・・・・
この前と同じ光が飛び散った。
そして、彼女の腕からは×がスゥ・・・と浮かんできた。そして・・・・・・・・
パリン・・・・・
壊れた。
今回もシリアスめですね。
ちょっと明るくさせようと、急遽『火玉』を登場させたんですが・・・・・・・・・・・・。うーむ・・・・・;;効果はあんまり無い様子。次回はおもしろおかしくしよーっと(笑