表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
路地裏喫茶  作者: こじひろ
4/28

Episode4

翌日、早朝。


高級マンションの屋上で、細身の男と幼い少女がそれぞれ腹ばいになって床に伏せている。


男の方が泰造、少女の方はアリスという。


「嫌な気分だわ。朝から殺しの仕事をするなんて」


「仕方ないだろ。今回の依頼が一番簡単だったんだ。おまけに、報酬も高い」


泰造は三脚で固定した狙撃銃を構えていた。アリスが隣で双眼鏡を覗き、標的の監視と風向きの観測を行っている。二人は殺し屋で、射撃の腕前は超一流だ。配役はローテンションで変わる。


「あ、出てきた。全員揃ってる」


「妻子だけ狙うんだったか。夫に対する見せしめだとかなんとか」


依頼主から、いつも詳細な情報が送られてくるとは限らない。深く詮索してはいけない事柄というのが、この業界にはごまんとある。殺し屋は標的を狙って、ただ引き金さえ引いていればいい。


「……ちょっと気が引けるな。食事中の家族を狙うなんて」


「何言ってるの。あなたが勝手に引き受けた依頼でしょ。早く終わらせちゃって」


「はいはい」


泰造がスコープに意識を集中させる。アリスが風向きと弾道の修正量を伝える。


「……いいわ、撃って」


「了解」


泰造が引き金を絞り、食事中の子供の頭を吹き飛ばした。続けて母親の胸部に二発弾丸を命中させる。悲鳴が上がる間もなく、妻子はすぐに倒れて動かなくなる。


リビングにぽつんと残された夫の呆然とした姿を見て、アリスは気分を損ない、双眼鏡から目を離した。


「終わったな」


泰造が言った。


「そうね」


ぶっきらぼうにアリスは頷く。


後味が悪い。


仕事の報告が済んだら、喫茶店でも行って、口直しにお茶がしたい気分だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ