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路地裏喫茶  作者: こじひろ
15/28

Episode15

まもなく喫茶店は閉店した。


強面な二人組は少しだけ休憩して、話をし、またすぐ店を出て行った。


店長は衝撃的な話を聞かされた。


ユズキのことが心配だったが、今は冷静になって、事の詳細を詳しく洗って見る必要がある。


しんと静まり返った店内。バックミュージックはすでに止まっている。


不意に、店の扉が開いた。


誰が入ってきたかと思えば、イチコだった。


「……どうも」


イチコは力無げに頭を下げた。顔色が、ひどく悪い。


「あの、鈴木さんたちを見ませんでしたか」


鈴木さん――よくここで屯している、若い青年の三人組のうちの一人だ。今日は昼ぐらいに三人でやってきて、珍しくすぐに退散していった。


「いや、もう帰ったよ」


「そうですか」


イチコはあっさり踵を返そうとする。


「カオリを祭りへ誘いに来たんじゃないのかい?」


「……私がここへ来たことは、カオリには言わないでおいてください」


おや、と訝る。何かあったのだろうか。


「喧嘩でもしたの?」


「いや、なんというか、私から一方的に……」


言いづらそうに、しばらく押し黙られたので、店主はなんとか彼女へ掛ける言葉を選ぶ。


「仲直りをするなら、なるべく早いほうがいいよ」


「そうですね……それじゃあ」


弱々しく微笑んで、イチコはすたすたと店を出て行った。


再び辺りが静まりかえる。


喧嘩というより、もっと別の理由が、彼女にはありそうだった。


店長は溜息をつく――なんだか、いつの間に、あちこちで厄介なことが起き始めているみたいだ。










アリスと別れて、ユズキが浮かれた気分で通路を歩いていると、突然、向かい側にいた少女とぶつかった。


ユズキは尻餅をついた。完全によそ見だった。


慌てて、相手に謝る。


「す、すみません……」


「いいよ、次から気をつけなよ」


よく見ると、ぶつかった相手はユズキの見知った顔の少女だった。店の外の階段で、一度だけ姿を見かけた覚えがある。


彼女が、カオリの話していた友人のイチコだろうか。


しかし、それにしては随分以前と気色が違っているような……。


「じゃあね、ユズキくん」


少女――イチコはそう言って片手を振り、ヘラヘラ笑うと、よろけながら反対方向の暗がりへ消えていった。


声をかける暇もない。


自分の名前を知っているということは、やっぱり、カオリの友人であるということに間違いはなさそうだった。


カオリを祭りに誘いに来たわけではなさそうだ。こんな時間に、一体、何をしに来たのだろう?



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