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変身ヒーローin異世界  作者: 鯨尚人
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第41話 思案

 今後の展開を鑑みて、R15の設定をさせて頂きました。必要ないかも知れませんが……。後付けで申し訳ありませんが、どうぞご了承くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

(2016.9.9記)

「そうだ、ゲームはどうだ? この世界ではダイスを振って勝敗を決めたりするだろ? 俺の世界には色んなゲームがあったんだよ。ダイスを使うスゴロクとか、チェスとか将棋とか囲碁とか……」


 皆に話して聞かせると、スゴロクはあるそうだが、あまり複雑なものはないらしい。それならもっとおもしろいものが作れそうだ。

 武器や防具や魔法を入手して強くなっていくスゴロクで、ステージ毎にボスがいて、最後は囚われのお姫様を救うなんてのなら受けるんじゃないか?

 ◯生ゲームや、桃◯みたいなのをアレンジするのもよさそうだ。


 だが、ネックがある。識字率が国民の半分程度なのだ。まぁ読める人がひとりでもいれば出来るので、イラストがあれば……。絵は魅力的なものがいいよな。どういうのがウケるんだろう。描いてくれる人も必要だなぁ。


 チェスはあるらしい。流石、地球人類の願望も反映してある世界だ。将棋や囲碁は無いようだが、それで査定に合格するには、一ヶ月で遊ぶ為の道具をたくさん用意して売ってブームを起こさなければいけない。難しそうだ。


 あ、もしかしたらTRPGはいいかも知れない。俺はこの世界はダイスが普及しているとディアスに膝枕されながら聞いたことを思い出した。

 実際には危険を冒したくなくても、剣士や魔法使いになって冒険して活躍したい願望がある人もいるだろうし。

 TRPGのリプレイ本を作るって手もあるな。


 そうだ、人狼もいいかも。やり方が広まったらルールを書いた紙は売れなくなっちゃうんだろうけど、あれは外から見ていてもおもしろい。どこかの会館などで有名な人たちがやっているのを見世物にすればいい収入が得られるかも。そんな人脈はないから難しそうだけど。


 儲けが少なくても、あれこれやっていればアンバレイ家の商才の評価も上がるだろう。そうすれば査定にも受かりやすくなるんじゃないだろうか。

 しかし、リヴィオの答えはあまり芳しくないものだった。


「やはり一ヶ月というのがネックだな……。その間にそこまでの評価が得られるだろうか……。そこそこではダメなのだ。のちに充分、納税できる見込みがあると判断されなくてはならない。製作し、量産して宣伝し、結果を出す……。一ヶ月では難しいだろうな……」

「やっぱそうかあ……」


 落とした俺の肩先に、リヴィオが優しく手を乗せる。


「だが、ロゴーの発想には驚かされたぞ。やはり、異世界から来た人間なのだな。わかっていたことではあったのだが、改めて凄いと思わされた」

「私もです!」

「私も驚きました。そのスマホという機械にも大いに驚かされましたし」


 そうそう、スマホをこっそり机の下で使っていたのがバレて、その説明に会議が大幅に中断してしまったのだ。


「な、なんか照れるな……。でも、使えるアイディアがないんじゃあなあ……」

「いや、やってみなければわからないだけだ。他にアイディアが出なければ、ロゴーが出したアイディアの中から採用したいと思ってるぞ」

「だけど、それだと受かるの難しいんだろう?」

「そうだが、それでもやるしかない。横暴な貴族が魔石の利権を手に入れたらどうなるか……。領民や民の暮らしを守る貴族としては、やはり捨て置ける事態ではないからな」


 その後はアイディアも出なくなり、各自で考えようということで、一旦会議はお開きとなった。

 夜になり、俺は窓から差し込む月明かりに照らされたベッドに横になって、天井を眺めながら思案を巡らせる。


 う~ん、あ、俺が本を書くってのはどうだろう。前にいた世界のおもしろい物語を。あーでも、大ヒットさせなきゃいけないだろうから一ヶ月じゃ厳しいか……。そもそも本を大量に刷れるのかな?


 貴族に受けそうな洋服をデザインするってのはどうかな。1着でも見本を作ってリヴィオにでも着て貰えば、これは売れるってことになって査定通らないだろうか。いや、俺じゃあそんなデザインを考え出すのは無理か……。奇抜なデザインじゃあ、結局、査定のときに大ヒットしてなきゃダメだろうしなぁ……。


 そういえばリズオール姫、氷食べてたなぁ。この世界に氷菓はあるんだろうか。アイスクリームを作れればウケそうだ。氷は魔法で作ったんだと思うけど、使い手が貴重じゃなければいいな……。


 ………………。


 …………。


 ……。



 んあ……。

 いつのまにか眠りに落ちていたようだ。

 玄関から、箒で掃き掃除をしているような音が聞こえてくる。2階の自室から眩しい朝日に目をしょぼませながら窓の下を覗くと、案の定、箒を操るフリアデリケの姿が見えた。俺は、寝ぼけ眼で玄関へと向かう。


「あ、ゴロー様っ。おはようございます!」

「おはよう、フリアデリケ。早起きだね」

「はい。私、早寝早起きなんです」


 大きく伸びをした俺は、そのままその辺を散歩でもしようと門へと歩いて行く。すると、フリアデリケが駆け足で追いかけてきた。


「お散歩ですか? えへへ、ご一緒してもいいですか?」

「うん。どうぞどうぞ」


 ふたり、とりとめのない会話をしながら、貴族の家の立ち並ぶ道を歩む。


「そうだ、私、昨日アイディア思いついたんです。聞いて貰えますか?」

「うん」

「名付けて、『ルーシアお姉ちゃん玉の輿大作戦』です!」

「…………」

「ルーシアお姉ちゃん、31歳ですけど美人ですっごくスタイルもいいですし、イケると思うんです」

「成程……」

「怒るとバイオレンスなところもありますけれど、護衛としても役に立ちます!」

「ばいおれんす……」

「それで、納税金を出してくれる人のところに嫁げれば……。どうでしょう? ゴロー様」

「う、う~ん……。ルーシアさんに聞いてみないとなんとも……」


 なんとなく、ぷくっと片頬を膨らませるルーシアの姿が目に浮かんだ。


「お姉ちゃんに言っても、嫌がると思うんですよね……。リヴィオ様のお傍にいれればそれでいいって人なので……。でも、リヴィオ様のお役にも立てて、自分も幸せになれるんだったら、いいと思ったんです!」

「そっか……」


 その後は、自分が昨晩考えたアイディアについて話した。氷を生成する魔法を使える者は、やはりかなり数が少ないようだ。使えれば一生仕事に困らないということから、例え使い手を見つけたとしても、雇うのは難しそうだな……。


 他にも、上級治癒魔術師はこの国に2名しかいないということも聞いた。上級浄化魔術師も二桁はいないようだ。


「俺も魔法が使えたらなー。魔力はほんのちょっとしかないらしいんだよね、俺」


 トリア村から帰る途中、ディアスに調べて貰ったらそういう結果だった。やはり、変身ヒーローの力は魔法とは別のもののようだ。

 ほんのちょっとだけ使えるのは、カルボのやつが気を利かせて、魔法が篭められた道具を使えるようにしてくれたんじゃないかと思う。全く魔力がないと、道具の魔法を発動させることが出来ないらしいので。


「私もです。少しだけなら魔力あるらしいんですけど、学ぶにはお金がかかっちゃうので」

「そうなんだ」


 そうして話をしているうちに、2台の馬車が俺たちの横を通り過ぎていった。1台は高価そうな箱型の馬車で、中に貴族が何人か乗っており、執事っぽい服を着た白髭の男性が御者台にのって操縦している。そして、そのすぐ後ろにもう1台、白い幌の付いた荷馬車がやはり執事っぽい格好をした御者に運転されていた。御者台には武装した男女もふたり乗っており、荷台の中にも何人か見受けられる。

 2台は一緒に行動しているのだろう。荷台にはワインなどが見て取れた。これから、貴族たちは自分たちの領地へと向かうのだろうか。


「この辺は石で道が舗装されてるからまだいいけど、トリア村から帰ってくるときは酔っちゃって大変だったよ」

「あはは、そうなのですか。そういえば、貴族のかたの中には馬車酔いするからあまり自分の領地に赴かない人もいるそうですよ」


 自分と似たような人がいることに嬉しく思いつつ、俺はあることに気が付いた。


「…………」

「どうしました? ゴロー様」

「ああ、うん……。…………」

「具合でも悪くされましたか? お屋敷に戻りましょう」

「あ、いや、ごめん、違うんだ。考え事してて」

「そうでしたか……」


 ……貴族相手なら、イケるんじゃないか、これ。それだけじゃない、上手くすれば……。

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